米国では、高齢化が進むに伴い虐待を受ける高齢者が増加していることが、米疾病対策センター(CDC)傘下の国立傷害予防管理センターに所属するJoseph Logan氏らによる調査で明らかになった。虐待率の増加は特に男性で著しく、女性では2007~2016年にかけて35.4%の増加だったのに対し、男性では2002~2016年の間に75.4%も増加したことが分かった。調査の詳細はCDCが発行する「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」4月5日号に発表された。今回の調査では、全米電子傷害サーベイランスシステム-全傷害プログラム(NEISS-AIP)および米国人口動態統計のデータを用いて、60歳以上の高齢者への暴行や殺害の発生頻度の推移を調べた。その結果、15年間の調査期間中に高齢者の虐待率に増加が見られたほか、男性では殺人率も2010~2016年の間に7.1%増加したことが明らかになった。.Logan氏らは、高齢者の間で虐待や殺人などの暴力被害が増えている背景については、現在も調査中としているが、「加害者の多くは被害者が信頼を寄せている人物であることが確認されている」と話している。.専門家の一人で、米国老年医学会のRonan Factora氏は、実際は報告書のデータよりも問題は深刻なのではとの見方を示している。同氏は「今回の研究は、救急部の記録だけをもとにしているため、虐待の件数は過小評価されている可能性が高い」と指摘する。同氏によれば、最大の問題は、最も年齢が高い層の高齢者で虐待が確認されていないことで、「これは虐待の標準的なスクリーニング法が確立されていないためだ」と説明している。.一方、近年では、高齢者の虐待はより注目されるようになり、以前よりも発見されるようになってきている。しかし、「この虐待率の増加は、単に人口統計上の問題ではない」とFactora氏は指摘している。.また、Factora氏によると、身体や精神に障害がある人に対する虐待の多くは、介護ストレスを抱えた家族によるものが多いという。移動や金銭管理、服薬などの手助けをすることは、介護者にとって大きな負担となる。CDCの別の報告でも、暴力を振るうのはほとんどが家族だとされており、その理由は、「介護に関わる要求が家族に重くのしかかっているためだ」と、同氏は説明している。.さらに、虐待を受ける高齢者は、身体的にも精神的にも自分自身を守れない状態にあることも多い。しかし、「介護者を支援するプログラムを利用することで、虐待を未然に防ぐことは可能だ」とFactora氏はいう。同氏は「介護者を支援する資源はあるが、疲弊した介護者とそうした支援を実際にどのように結びつけるかが問題だ」と述べている。.虐待には身体的な暴力や殺人だけでなく、ネグレクトや金銭的な搾取なども含まれる。さらに、一人が複数の人から虐待を受けているケースも多いという。「もし虐待に気付いたり、疑わしいと感じたりしたら、しかるべき機関に通報してほしい」とFactora氏は話している。(HealthDay News 2019年4月4日).https://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/caregiving-news-728/elder-abuse-on-the-rise-in-america-744704.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
米国では、高齢化が進むに伴い虐待を受ける高齢者が増加していることが、米疾病対策センター(CDC)傘下の国立傷害予防管理センターに所属するJoseph Logan氏らによる調査で明らかになった。虐待率の増加は特に男性で著しく、女性では2007~2016年にかけて35.4%の増加だったのに対し、男性では2002~2016年の間に75.4%も増加したことが分かった。調査の詳細はCDCが発行する「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」4月5日号に発表された。今回の調査では、全米電子傷害サーベイランスシステム-全傷害プログラム(NEISS-AIP)および米国人口動態統計のデータを用いて、60歳以上の高齢者への暴行や殺害の発生頻度の推移を調べた。その結果、15年間の調査期間中に高齢者の虐待率に増加が見られたほか、男性では殺人率も2010~2016年の間に7.1%増加したことが明らかになった。.Logan氏らは、高齢者の間で虐待や殺人などの暴力被害が増えている背景については、現在も調査中としているが、「加害者の多くは被害者が信頼を寄せている人物であることが確認されている」と話している。.専門家の一人で、米国老年医学会のRonan Factora氏は、実際は報告書のデータよりも問題は深刻なのではとの見方を示している。同氏は「今回の研究は、救急部の記録だけをもとにしているため、虐待の件数は過小評価されている可能性が高い」と指摘する。同氏によれば、最大の問題は、最も年齢が高い層の高齢者で虐待が確認されていないことで、「これは虐待の標準的なスクリーニング法が確立されていないためだ」と説明している。.一方、近年では、高齢者の虐待はより注目されるようになり、以前よりも発見されるようになってきている。しかし、「この虐待率の増加は、単に人口統計上の問題ではない」とFactora氏は指摘している。.また、Factora氏によると、身体や精神に障害がある人に対する虐待の多くは、介護ストレスを抱えた家族によるものが多いという。移動や金銭管理、服薬などの手助けをすることは、介護者にとって大きな負担となる。CDCの別の報告でも、暴力を振るうのはほとんどが家族だとされており、その理由は、「介護に関わる要求が家族に重くのしかかっているためだ」と、同氏は説明している。.さらに、虐待を受ける高齢者は、身体的にも精神的にも自分自身を守れない状態にあることも多い。しかし、「介護者を支援するプログラムを利用することで、虐待を未然に防ぐことは可能だ」とFactora氏はいう。同氏は「介護者を支援する資源はあるが、疲弊した介護者とそうした支援を実際にどのように結びつけるかが問題だ」と述べている。.虐待には身体的な暴力や殺人だけでなく、ネグレクトや金銭的な搾取なども含まれる。さらに、一人が複数の人から虐待を受けているケースも多いという。「もし虐待に気付いたり、疑わしいと感じたりしたら、しかるべき機関に通報してほしい」とFactora氏は話している。(HealthDay News 2019年4月4日).https://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/caregiving-news-728/elder-abuse-on-the-rise-in-america-744704.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.