近年、従業員の健康増進や疾患予防を目的とした職場のウェルネスプログラムが人気を集めている。米ハーバード大学医学大学院のZirui Song氏らは、ある米大手企業の従業員を対象に、プログラムの有効性を検討するためランダム化比較試験を実施。その結果、プログラムの導入後に、一部の従業員では生活習慣の改善がみられたものの、短期的には、全般的な健康状態の改善や会社の収益に大きなベネフィットをもたらさなかったことが報告された。研究の詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」4月16日オンライン版に掲載された。企業が従業員の健康を管理するという概念が広がる米国では、2018年には、大企業の82%、中小企業の半数以上がウェルネスプログラムを従業員に提供しており、その市場は80億ドル(約8900億円)に達するとされている。しかし、ウェルネスプログラムによる従業員の健康や企業の業績への影響については明らかになっていない。.そこで、Song氏らは今回、米国の大手スーパー、ビージェイズ・ホールセール・クラブ(BJ's Wholesale Club)の従業員向けのウェルネスプログラムを開発し、2015~2016年に、計3万2,974人の従業員(平均年齢38.6歳、女性が約50%)を対象にランダム化比較試験を実施した。試験では、計160カ所の職場のうち20カ所(従業員は計4,037人)をプログラム実施群、残る140カ所(同2万8,937人)を対照群にランダムに割り付けて18カ月間追跡した。.ウェルネスプログラムは、栄養や運動、ストレス軽減などの8つの要素で構成し、それぞれの実施期間は4~8週間とし、管理栄養士が支援した。また、プログラム実施群の従業員は、プログラムの一部または全てに自由に参加でき、最終的に35%が1つ以上のプログラムに参加した。.その結果、18カ月後の時点で、プログラム実施群の69.8%が「定期的に運動している」と回答したのに対し、対照群ではその割合は61.9%と両群間に差がみられた。また、プログラム実施群では69.2%が体重管理に積極的に取り組んでいたのに対し、対照群では54.7%にとどまっていた。.さらに、プログラムに参加しても体重や血圧、コレステロール、血糖値などの検査項目に影響はみられなかったほか、医療費の削減、欠勤率や在職期間、業績などの向上にはつながらないことも明らかになった。.しかし、特定の企業を対象とした研究結果が、別の企業にも当てはまるかどうかを判断するのは難しいようだ。論文の付随論評を執筆した米ミネソタ大学医療経営管理学教授のJean Marie Abraham氏は、今回検討したプログラムは代表的なものだが、「企業によってプログラムの内容は幅広く、企業とその従業員もさまざまだ」と指摘している。.従業員の健康を重視する企業では、生活習慣に関する教育以外にも、職場でジムやエクササイズ教室を開いたり、カフェテリアで健康的なメニューを提供したり、精神的な健康や金銭的な保証にまで対応するケースもある。しかし、「どの職場にも効果的なたった一つのプログラムというものはなく、同じ企業内であっても、プログラムを大いに活用する人もいれば、まったく参加しない人もいる」と、Abraham氏は説明している。.ただ、Abraham氏によれば、今回のプログラムは単に、従業員の健康状態や医療費が変化するほど集中的なものではなかった可能性もあるという。また、Song氏は、今後の研究で、どのような内容のプログラムが有用であるのかを検討する必要があるとしている。(HealthDay News 2019年4月16日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/psychology-and-mental-health-news-566/are-workplace-wellness-programs-worth-it-745136.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
近年、従業員の健康増進や疾患予防を目的とした職場のウェルネスプログラムが人気を集めている。米ハーバード大学医学大学院のZirui Song氏らは、ある米大手企業の従業員を対象に、プログラムの有効性を検討するためランダム化比較試験を実施。その結果、プログラムの導入後に、一部の従業員では生活習慣の改善がみられたものの、短期的には、全般的な健康状態の改善や会社の収益に大きなベネフィットをもたらさなかったことが報告された。研究の詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」4月16日オンライン版に掲載された。企業が従業員の健康を管理するという概念が広がる米国では、2018年には、大企業の82%、中小企業の半数以上がウェルネスプログラムを従業員に提供しており、その市場は80億ドル(約8900億円)に達するとされている。しかし、ウェルネスプログラムによる従業員の健康や企業の業績への影響については明らかになっていない。.そこで、Song氏らは今回、米国の大手スーパー、ビージェイズ・ホールセール・クラブ(BJ's Wholesale Club)の従業員向けのウェルネスプログラムを開発し、2015~2016年に、計3万2,974人の従業員(平均年齢38.6歳、女性が約50%)を対象にランダム化比較試験を実施した。試験では、計160カ所の職場のうち20カ所(従業員は計4,037人)をプログラム実施群、残る140カ所(同2万8,937人)を対照群にランダムに割り付けて18カ月間追跡した。.ウェルネスプログラムは、栄養や運動、ストレス軽減などの8つの要素で構成し、それぞれの実施期間は4~8週間とし、管理栄養士が支援した。また、プログラム実施群の従業員は、プログラムの一部または全てに自由に参加でき、最終的に35%が1つ以上のプログラムに参加した。.その結果、18カ月後の時点で、プログラム実施群の69.8%が「定期的に運動している」と回答したのに対し、対照群ではその割合は61.9%と両群間に差がみられた。また、プログラム実施群では69.2%が体重管理に積極的に取り組んでいたのに対し、対照群では54.7%にとどまっていた。.さらに、プログラムに参加しても体重や血圧、コレステロール、血糖値などの検査項目に影響はみられなかったほか、医療費の削減、欠勤率や在職期間、業績などの向上にはつながらないことも明らかになった。.しかし、特定の企業を対象とした研究結果が、別の企業にも当てはまるかどうかを判断するのは難しいようだ。論文の付随論評を執筆した米ミネソタ大学医療経営管理学教授のJean Marie Abraham氏は、今回検討したプログラムは代表的なものだが、「企業によってプログラムの内容は幅広く、企業とその従業員もさまざまだ」と指摘している。.従業員の健康を重視する企業では、生活習慣に関する教育以外にも、職場でジムやエクササイズ教室を開いたり、カフェテリアで健康的なメニューを提供したり、精神的な健康や金銭的な保証にまで対応するケースもある。しかし、「どの職場にも効果的なたった一つのプログラムというものはなく、同じ企業内であっても、プログラムを大いに活用する人もいれば、まったく参加しない人もいる」と、Abraham氏は説明している。.ただ、Abraham氏によれば、今回のプログラムは単に、従業員の健康状態や医療費が変化するほど集中的なものではなかった可能性もあるという。また、Song氏は、今後の研究で、どのような内容のプログラムが有用であるのかを検討する必要があるとしている。(HealthDay News 2019年4月16日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/psychology-and-mental-health-news-566/are-workplace-wellness-programs-worth-it-745136.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.