米国では、A型肝炎患者の報告数が2013~2015年に比べて、2016~2018年には294%急増したことが、米疾病対策センター(CDC)肝炎ウイルス部門のMonique Foster氏らの調査で明らかになった。A型肝炎ウイルスへの感染はワクチン接種により予防できるが、薬物乱用者とホームレスを中心に感染例の増加がみられているという。調査の詳細は、CDCが発行する「Morbidity and Mortality Weekly Report」5月10日号に発表された。A型肝炎ウイルスは糞便中に排泄され、ウイルスが付着した手で口に触れたり、汚染された食品を食べたりすることで感染する。Foster氏によれば、過去10年間、米国ではA型肝炎の大規模な流行はほとんどみられていないが、汚染された食品による小規模な集団発生が報告されていたという。.2016年には、汚染された食品によるA型肝炎の集団発生が2件報告された。感染例の多くは、劣悪な生活環境にある薬物乱用者やホームレスであったという。また、今回の報告によれば、2016~2018年のA型肝炎患者のほとんどはヒトからヒトへの感染によるものであった。なお、2016年にA型感染の最初の流行が確認されて以降、1万5,000人以上が感染し、8,500人が入院したほか、140例の死亡が報告されている。.この調査には関与していない米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン医療センター内科教授のMarc Siegel氏は「A型肝炎ウイルスに感染しても、感染から6カ月後にはウイルス抗原は消失し、強い免疫が残される」と説明する。また、A型肝炎ウイルス感染後に重篤な肝臓疾患を来す患者は、がんや免疫システムに異常がみられる場合がほとんどだと、同氏は付け加えている。.Foster氏によれば、A型肝炎の感染予防と流行防止にはワクチン接種が最も有効な手段になるという。「米国内では、A型肝炎ワクチンの普及と小児への予防接種が推奨されたことで、A型肝炎は劇的に減少した」と同氏は説明している。ただし、抗体を持たず、小児期にワクチン接種を受けなかった成人集団では依然として感染リスクが高く、そうした層には薬物使用者やホームレス、同性愛者なども多く含まれる。そのため、CDCはA型肝炎ウイルスへの感染リスクが高い層に対してワクチンを接種するよう呼び掛けている。.一方、Siegel氏は、A型肝炎の流行を食い止め、集団発生を防ぐには、社会問題の解決も重要だと指摘する。同氏は「A型肝炎に限った問題ではないが、国民全員がワクチンを接種すれば解決するというものではない」とし、「高リスク集団の感染を予防するには、衛生状態の改善が不可欠だ。これは国民意識の問題というよりも、公衆衛生や公衆安全、文化的な意味合いが強い問題といえる」と述べている。(HealthDay News 2019年5月9日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/hepatitis-news-373/hepatitis-a-infections-soaring-cdc-746150.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.