小さなデバイスを1日1時間、耳に装着するだけで、不整脈の一種である心房細動をコントロールできる―。そんな治療法が現実となる日は近いかもしれない。米オクラホマ大学健康科学センター准教授のStavros Stavrakis氏らが実施した小規模な早期臨床試験で、耳に装着するクリップ型の弱い電流を放出するデバイスを用いた治療の有効性と忍容性が確認された。この試験結果は、米国不整脈学会(HRS 2019、5月8~11日、米サンフランシスコ)で発表された。心房細動の患者数は世界で3350万人を超えるとされる。心房細動があると血液が凝固して血栓ができやすくなり、血栓が血流に乗って脳に運ばれると脳卒中を引き起こす可能性がある。心房細動の治療は生活習慣の是正や薬物療法が中心だが、機能に異常のある組織を焼灼するアブレーション治療やペースメーカー植込み術を必要とする場合もある。Stavrakis氏らは、より侵襲性が低く、副作用が少ない治療法を見つけるため、研究を重ねてきたという。.今回の試験で検証された治療法は、耳から迷走神経に弱い電気刺激を与える「経皮的低電位迷走神経電気刺激(low-level transcutaneous electrical vagus nerve stimulation;LLTS)」と呼ばれるもの。また、このデバイスは、経皮的電気神経刺激(TENS)ユニットと耳に装着するクリップで構成される。TENSはバッテリーで動き、電極を通じて神経に電気刺激を加えるもので、これまで疼痛の軽減に使用されてきた。なお、耳のクリップを使用するTENSユニットは当初、耳鳴りの治療を目的としたデバイスとして設計されたという。.Stavrakis氏がこれまで実施した動物実験では、耳から迷走神経に刺激を与えたイヌの心臓の電気信号が変化した可能性が示された。ただ、ヒトでも同様の効果があるのは不明だった。.心房細動患者を対象とした今回の臨床試験では、26人をデバイス治療群(平均年齢65歳)に、27人を偽治療群(同68歳)にランダムに割り付け、二重盲検下で観察した。デバイス治療群では耳珠に、偽治療群では耳たぶに、耳クリップを6カ月間にわたり毎日1時間装着してもらった。なお、デバイスを装着中も、参加者には自宅でテレビを観るなど普段通りの生活を送ってもらった。.その結果、治療開始から6カ月後には、デバイス治療群では偽治療群と比べて心房細動負荷(AF burden)が85%軽減したことが分かった。また、3カ月後と6カ月後の評価データを合わせて解析した結果、デバイス治療群では偽治療群と比べて心房細動負荷が75%軽減したことも示された。さらに、治療の遵守率は両群間で差はみられず、デバイス治療の忍容性は良好であった。なお、試験開始前から服用していた治療薬は試験中も継続して使用し、約半数がリズムコントロールを目的とした薬物治療を受けていたという。.Stavrakis氏は「今回の試験はヒトを対象にこのデバイスを使用した初めての臨床試験で、まだ早期の段階にある。しかし、試験結果は有望で、引き続き研究を行う必要性が示された」と述べている。.この報告を受け、米国心臓協会(AHA)のスポークスパーソンであるJohn Osborne氏は、このデバイスは簡便でシンプル、そして忍容性も高く、費用もそれほどかからないとみられるとして、「極めて有望な治療法だ」と述べている。また、「今回の試験は単施設で実施された小規模な研究であるが、素晴らしい結果であり、さらなる研究結果が待たれる」と同氏は話している。.なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2019年5月9日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/atrial-fibrillation-959/zap-ear-clip-may-ease-a-fib-746113.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
小さなデバイスを1日1時間、耳に装着するだけで、不整脈の一種である心房細動をコントロールできる―。そんな治療法が現実となる日は近いかもしれない。米オクラホマ大学健康科学センター准教授のStavros Stavrakis氏らが実施した小規模な早期臨床試験で、耳に装着するクリップ型の弱い電流を放出するデバイスを用いた治療の有効性と忍容性が確認された。この試験結果は、米国不整脈学会(HRS 2019、5月8~11日、米サンフランシスコ)で発表された。心房細動の患者数は世界で3350万人を超えるとされる。心房細動があると血液が凝固して血栓ができやすくなり、血栓が血流に乗って脳に運ばれると脳卒中を引き起こす可能性がある。心房細動の治療は生活習慣の是正や薬物療法が中心だが、機能に異常のある組織を焼灼するアブレーション治療やペースメーカー植込み術を必要とする場合もある。Stavrakis氏らは、より侵襲性が低く、副作用が少ない治療法を見つけるため、研究を重ねてきたという。.今回の試験で検証された治療法は、耳から迷走神経に弱い電気刺激を与える「経皮的低電位迷走神経電気刺激(low-level transcutaneous electrical vagus nerve stimulation;LLTS)」と呼ばれるもの。また、このデバイスは、経皮的電気神経刺激(TENS)ユニットと耳に装着するクリップで構成される。TENSはバッテリーで動き、電極を通じて神経に電気刺激を加えるもので、これまで疼痛の軽減に使用されてきた。なお、耳のクリップを使用するTENSユニットは当初、耳鳴りの治療を目的としたデバイスとして設計されたという。.Stavrakis氏がこれまで実施した動物実験では、耳から迷走神経に刺激を与えたイヌの心臓の電気信号が変化した可能性が示された。ただ、ヒトでも同様の効果があるのは不明だった。.心房細動患者を対象とした今回の臨床試験では、26人をデバイス治療群(平均年齢65歳)に、27人を偽治療群(同68歳)にランダムに割り付け、二重盲検下で観察した。デバイス治療群では耳珠に、偽治療群では耳たぶに、耳クリップを6カ月間にわたり毎日1時間装着してもらった。なお、デバイスを装着中も、参加者には自宅でテレビを観るなど普段通りの生活を送ってもらった。.その結果、治療開始から6カ月後には、デバイス治療群では偽治療群と比べて心房細動負荷(AF burden)が85%軽減したことが分かった。また、3カ月後と6カ月後の評価データを合わせて解析した結果、デバイス治療群では偽治療群と比べて心房細動負荷が75%軽減したことも示された。さらに、治療の遵守率は両群間で差はみられず、デバイス治療の忍容性は良好であった。なお、試験開始前から服用していた治療薬は試験中も継続して使用し、約半数がリズムコントロールを目的とした薬物治療を受けていたという。.Stavrakis氏は「今回の試験はヒトを対象にこのデバイスを使用した初めての臨床試験で、まだ早期の段階にある。しかし、試験結果は有望で、引き続き研究を行う必要性が示された」と述べている。.この報告を受け、米国心臓協会(AHA)のスポークスパーソンであるJohn Osborne氏は、このデバイスは簡便でシンプル、そして忍容性も高く、費用もそれほどかからないとみられるとして、「極めて有望な治療法だ」と述べている。また、「今回の試験は単施設で実施された小規模な研究であるが、素晴らしい結果であり、さらなる研究結果が待たれる」と同氏は話している。.なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2019年5月9日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/atrial-fibrillation-959/zap-ear-clip-may-ease-a-fib-746113.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.