乳房MRI検査による乳がんスクリーニングは、小さな腫瘍を検出するのに優れた方法だが、乳がんの既往歴がある女性における有益性は明らかではないことが、米大手保険会社カイザー・パーマネンテ・ワシントン・ヘルス・リサーチ研究所のKaren Wernli氏らが実施した研究で示された。この研究結果は「Radiology」6月4日オンライン版に発表された。現在、乳がんサバイバーは再発を早期発見するために、年1回のマンモグラフィ検査を受けることが推奨されている。一方で、乳がんサバイバーに対する乳房MRI検査の有益性については不明だった。.Wernli氏らは今回、米国の複数の施設で乳がんスクリーニングを受けた1万3,266人の乳がんサバイバー(平均年齢60歳)のデータを収集。マンモグラフィ検査のみを受けた群(1万1,745人)または乳房MRI検査を併用した群(1,521人)に分けて比較検討した。対象者が2005~2012年に受けていたマンモグラフィ検査は計3万3,938回、MRI検査は計2,506回だった。.その結果、検査1,000回当たりの腫瘍の検出率は、マンモグラフィ検査単独群の8.2件に対し、MRI検査併用群では10.8件であった。一方、生検を実施した女性の割合は、マンモグラフィ検査単独群では4.0%だったのに対し、MRI検査併用群では10.1%と大幅に高いことが分かった。しかし、スクリーニングを受けた後、次のスクリーニングまでに診断される「中間期がん(interval cancer)」の発見率は両群間で差がみられなかったことから、MRI検査の最終的な有益性は明確には示されなかったと結論づけられた。なお、生検を要した腫瘍の多くは良性であることが判明したという。.この報告を受け、専門家らは、「乳房MRI検査を受けるかどうかは、乳がんサバイバーの女性たち自身が判断する必要がある」と口を揃える。論文の付随論評を執筆した米エモリー大学ウィンシップがん研究所のMary Newell氏は「われわれは、女性に対して検査のリスクとベネフィットを明確に提示し、女性自身に何を最も重視するのかを考えて判断してもらう必要がある」と話す。.米国がん協会(ACS)は現在、乳がんの生涯リスクが約20%以上の高リスク女性に対して、年1回のマンモグラフィ検査に加えてMRI検査を受けることを推奨している(米国人女性の乳がんの平均リスクは約12%とされる)。.なお、高リスク女性には特定の遺伝子変異がある女性や、乳がんリスクに特に強い影響を与える家族歴がある女性が含まれるが、自身に乳がんの既往歴がある女性は含まれていない。その理由について、ACSがんスクリーニング部門のRobert Smith氏は「ACSのガイドラインが作成された2007年当時は、乳がん既往歴のある女性に対するMRI検査の追加の是非について、結論を導き出すのに十分な研究が行われていなかったからだ」と説明している。なお、現在も研究に基づくエビデンスはほとんどないのだという。.Wernli氏の試算では、2018年に米国で早期乳がんと診断された全ての女性がMRI検査を受けると、1万4,000回以上もの生検が追加で行われることになるいい、その影響力の大きさを指摘している。しかし、前出のNewell氏は「患者にとってはこうした試算は重要ではない。再発への大きな不安を抱えている女性であれば、生検が必要となる可能性が高くてもMRI検査を望むかもしれない」と話す。一方、Smith氏はマンモグラフィ検査では腫瘍が見つかりにくい高濃度乳房など一部の女性では、MRI検査を追加することで多くのベネフィットが得られる可能性があるとの見方を示している。(HealthDay News 2019年6月4日).https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/mri-scan-news-455/is-mri-screening-worth-it-for-breast-cancer-survivors-747104.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
乳房MRI検査による乳がんスクリーニングは、小さな腫瘍を検出するのに優れた方法だが、乳がんの既往歴がある女性における有益性は明らかではないことが、米大手保険会社カイザー・パーマネンテ・ワシントン・ヘルス・リサーチ研究所のKaren Wernli氏らが実施した研究で示された。この研究結果は「Radiology」6月4日オンライン版に発表された。現在、乳がんサバイバーは再発を早期発見するために、年1回のマンモグラフィ検査を受けることが推奨されている。一方で、乳がんサバイバーに対する乳房MRI検査の有益性については不明だった。.Wernli氏らは今回、米国の複数の施設で乳がんスクリーニングを受けた1万3,266人の乳がんサバイバー(平均年齢60歳)のデータを収集。マンモグラフィ検査のみを受けた群(1万1,745人)または乳房MRI検査を併用した群(1,521人)に分けて比較検討した。対象者が2005~2012年に受けていたマンモグラフィ検査は計3万3,938回、MRI検査は計2,506回だった。.その結果、検査1,000回当たりの腫瘍の検出率は、マンモグラフィ検査単独群の8.2件に対し、MRI検査併用群では10.8件であった。一方、生検を実施した女性の割合は、マンモグラフィ検査単独群では4.0%だったのに対し、MRI検査併用群では10.1%と大幅に高いことが分かった。しかし、スクリーニングを受けた後、次のスクリーニングまでに診断される「中間期がん(interval cancer)」の発見率は両群間で差がみられなかったことから、MRI検査の最終的な有益性は明確には示されなかったと結論づけられた。なお、生検を要した腫瘍の多くは良性であることが判明したという。.この報告を受け、専門家らは、「乳房MRI検査を受けるかどうかは、乳がんサバイバーの女性たち自身が判断する必要がある」と口を揃える。論文の付随論評を執筆した米エモリー大学ウィンシップがん研究所のMary Newell氏は「われわれは、女性に対して検査のリスクとベネフィットを明確に提示し、女性自身に何を最も重視するのかを考えて判断してもらう必要がある」と話す。.米国がん協会(ACS)は現在、乳がんの生涯リスクが約20%以上の高リスク女性に対して、年1回のマンモグラフィ検査に加えてMRI検査を受けることを推奨している(米国人女性の乳がんの平均リスクは約12%とされる)。.なお、高リスク女性には特定の遺伝子変異がある女性や、乳がんリスクに特に強い影響を与える家族歴がある女性が含まれるが、自身に乳がんの既往歴がある女性は含まれていない。その理由について、ACSがんスクリーニング部門のRobert Smith氏は「ACSのガイドラインが作成された2007年当時は、乳がん既往歴のある女性に対するMRI検査の追加の是非について、結論を導き出すのに十分な研究が行われていなかったからだ」と説明している。なお、現在も研究に基づくエビデンスはほとんどないのだという。.Wernli氏の試算では、2018年に米国で早期乳がんと診断された全ての女性がMRI検査を受けると、1万4,000回以上もの生検が追加で行われることになるいい、その影響力の大きさを指摘している。しかし、前出のNewell氏は「患者にとってはこうした試算は重要ではない。再発への大きな不安を抱えている女性であれば、生検が必要となる可能性が高くてもMRI検査を望むかもしれない」と話す。一方、Smith氏はマンモグラフィ検査では腫瘍が見つかりにくい高濃度乳房など一部の女性では、MRI検査を追加することで多くのベネフィットが得られる可能性があるとの見方を示している。(HealthDay News 2019年6月4日).https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/mri-scan-news-455/is-mri-screening-worth-it-for-breast-cancer-survivors-747104.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.