皮膚や呼吸器、消化器、血流、泌尿器など広範囲にわたる部位の感染症にかかると、脳卒中の発症リスクが高まる可能性があることが、米マウントサイナイ・アイカーン医科大学神経内科准教授のMandip Dhamoon氏らの研究で明らかになった。特に尿路感染症の罹患は脳卒中リスクの上昇と強く関連することが分かったという。研究の詳細は「Stroke」6月27日オンライン版に掲載された。この研究は、米ニューヨーク州の入院患者と救急受診患者のデータベースから、2006~2013年の脳卒中患者19万人以上を対象としたもの。皮膚や呼吸器、消化器、血流、泌尿器など幅広い部位の感染症で救急外来を受診あるいは入院後1週間から4カ月以内の脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の発症を調べ、感染症にかかる1年前のリスクと比較検討した。なお、対象患者のほとんどは脳梗塞だったが、出血性脳卒中の患者も約4万人含まれていた。.その結果、重度の感染症で救急外来を受診または入院した患者では、その後数カ月以内に脳梗塞を発症するリスクが高まることが分かった。特に重度の尿路感染症の罹患が強く関連し、罹患する1年前と比べて、罹患すると1週間以内に脳梗塞を発症する確率は5倍以上に上っていた。.重度の感染症の罹患と脳卒中リスク上昇との関連は、時間の経過とともに低下したが、医療機関を受診後4カ月の時点でもそのリスクは2倍に上っていることも示された。.一方、今回の研究結果では、医療機関の受診を必要としない程度の軽症の感染症には、脳卒中リスクの上昇との関連はみられなかった。このことを受け、Dhamoon氏は「今回の研究から、重篤な感染症が脳卒中リスクと関連することが確認された」と説明している。.しかし、今回の研究結果は、感染症が実際に脳卒中を引き起こしたことを証明するものではない。ただ、Dhamoon氏は「過去の研究に基づけば、感染症は全身の炎症を増大させ、血栓形成の原因となり得ることが示されており、これらの関連には生物学的な根拠がある」と指摘する。一方、感染症を治療するだけでなく、その後の脳卒中リスクも低減する治療法があるのかなどを含めて、不明な点が多いのが実情だ。同氏は「これらの課題は今後の研究で明らかにする必要がある」と述べている。.この研究には関与していない、米サウスカロライナ医科大学神経内科教授のDaniel Lackland氏は「脳卒中のリスク因子がある人は、コントロールできるものであれば、それらをしっかりと管理することが重要だ」と強調する。米国脳卒中協会のスポークスパーソンを務める同氏は、「医療機関を受診するほどの感染症にかかった人は、高血圧や糖尿病といった脳卒中のリスク因子の自己管理を心掛けてほしい」と助言している。.また、Dhamoon氏によれば、尿路感染症が脳梗塞の発症と最も強く関連した理由は明らかになっていない。さらに、今回の研究では、呼吸器感染と敗血症、尿路感染症はいずれも脳出血やくも膜下出血と関連することが示された。感染症が脳出血リスクを高める理由について、同氏は、感染症が血管機能に影響を与えた可能性を指摘しているが、今回の研究ではそこまで解明できていないとしている。.一方、Lackland氏は「これまでの研究で、帯状疱疹など一部の感染症は脳卒中発症の引き金となる可能性が報告されている」と指摘。その上で、「今回の研究結果から、重篤な感染症が脳卒中の発症と関連する可能性が示唆されたことは、今後の研究を後押しする根拠になるだろう」と述べている。(HealthDay News 2019年6月27日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/urinary-tract-infection-news-686/infections-especially-utis-may-be-triggers-for-strokes-747845.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
皮膚や呼吸器、消化器、血流、泌尿器など広範囲にわたる部位の感染症にかかると、脳卒中の発症リスクが高まる可能性があることが、米マウントサイナイ・アイカーン医科大学神経内科准教授のMandip Dhamoon氏らの研究で明らかになった。特に尿路感染症の罹患は脳卒中リスクの上昇と強く関連することが分かったという。研究の詳細は「Stroke」6月27日オンライン版に掲載された。この研究は、米ニューヨーク州の入院患者と救急受診患者のデータベースから、2006~2013年の脳卒中患者19万人以上を対象としたもの。皮膚や呼吸器、消化器、血流、泌尿器など幅広い部位の感染症で救急外来を受診あるいは入院後1週間から4カ月以内の脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の発症を調べ、感染症にかかる1年前のリスクと比較検討した。なお、対象患者のほとんどは脳梗塞だったが、出血性脳卒中の患者も約4万人含まれていた。.その結果、重度の感染症で救急外来を受診または入院した患者では、その後数カ月以内に脳梗塞を発症するリスクが高まることが分かった。特に重度の尿路感染症の罹患が強く関連し、罹患する1年前と比べて、罹患すると1週間以内に脳梗塞を発症する確率は5倍以上に上っていた。.重度の感染症の罹患と脳卒中リスク上昇との関連は、時間の経過とともに低下したが、医療機関を受診後4カ月の時点でもそのリスクは2倍に上っていることも示された。.一方、今回の研究結果では、医療機関の受診を必要としない程度の軽症の感染症には、脳卒中リスクの上昇との関連はみられなかった。このことを受け、Dhamoon氏は「今回の研究から、重篤な感染症が脳卒中リスクと関連することが確認された」と説明している。.しかし、今回の研究結果は、感染症が実際に脳卒中を引き起こしたことを証明するものではない。ただ、Dhamoon氏は「過去の研究に基づけば、感染症は全身の炎症を増大させ、血栓形成の原因となり得ることが示されており、これらの関連には生物学的な根拠がある」と指摘する。一方、感染症を治療するだけでなく、その後の脳卒中リスクも低減する治療法があるのかなどを含めて、不明な点が多いのが実情だ。同氏は「これらの課題は今後の研究で明らかにする必要がある」と述べている。.この研究には関与していない、米サウスカロライナ医科大学神経内科教授のDaniel Lackland氏は「脳卒中のリスク因子がある人は、コントロールできるものであれば、それらをしっかりと管理することが重要だ」と強調する。米国脳卒中協会のスポークスパーソンを務める同氏は、「医療機関を受診するほどの感染症にかかった人は、高血圧や糖尿病といった脳卒中のリスク因子の自己管理を心掛けてほしい」と助言している。.また、Dhamoon氏によれば、尿路感染症が脳梗塞の発症と最も強く関連した理由は明らかになっていない。さらに、今回の研究では、呼吸器感染と敗血症、尿路感染症はいずれも脳出血やくも膜下出血と関連することが示された。感染症が脳出血リスクを高める理由について、同氏は、感染症が血管機能に影響を与えた可能性を指摘しているが、今回の研究ではそこまで解明できていないとしている。.一方、Lackland氏は「これまでの研究で、帯状疱疹など一部の感染症は脳卒中発症の引き金となる可能性が報告されている」と指摘。その上で、「今回の研究結果から、重篤な感染症が脳卒中の発症と関連する可能性が示唆されたことは、今後の研究を後押しする根拠になるだろう」と述べている。(HealthDay News 2019年6月27日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/urinary-tract-infection-news-686/infections-especially-utis-may-be-triggers-for-strokes-747845.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.