アルコールは飲酒をする本人だけでなく、家族や友人といった身近な人も危険にさらすようだ。米国では成人の5人に1人にあたる5300万人が、過去1年間に他人の飲酒による二次的な被害を受けたと報告していることが、米公衆衛生研究所(PHI)アルコール研究グループのKatherine Karriker-Jaffe氏らの研究から明らかになった。これらの被害は、脅迫や嫌がらせ、物的損害、暴力、金銭問題、人間関係、自動車事故など多岐にわたっていたという。研究の詳細は「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」5月号に掲載された。今回の研究は、2015年に、全米で計8,750人の18歳以上の成人を対象に実施された2件の調査データを用いたもの。いずれの調査も電話インタビューで飲酒による被害について尋ねた。.その結果、女性の21%、男性の23%が、過去1年間に他人の飲酒による被害を受けたと報告していた。被害を受けた人の割合に男女差はみられなかったが、被害の内容には性差がみられた。女性の場合には、配偶者やその他の家族の飲酒による被害が多かったのに対し、男性の場合には見知らぬ他人からの被害に遭うケースが多かった。また、女性は他人の飲酒にまつわる金銭問題や家族関係の問題が多かったのに対し、男性は物的損害や暴力などを受けることが多かった。.特に大量飲酒をする人は、他人の飲酒による被害を受ける確率が高かった。1回の飲酒で男性では5杯、女性では4杯以上飲む大量飲酒者のほぼ半数が、このような被害を経験していた。さらに、若い人ほど他人の飲酒による二次被害を受けやすいことも明らかになった。.研究を率いたKarriker-Jaffe氏は「飲酒がもたらす二次被害の現状について多くの人々が認識するようになれば、許容範囲の基準が変わり、バーの営業時間の延長やアルコール飲料の減税といった公共政策に影響を与える可能性がある」と述べている。また、同氏は、このような他人による飲酒の被害を防ぐには、「プライマリケア医によるリスク因子のスクリーニングが一助となる可能性がある」と指摘。プライマリケアの現場で、このような被害にきちんと対処できているかどうかを確認する必要があるとしている。.付随論評を執筆したカロリンスカ研究所(スウェーデン)のSven Andreasson氏によれば、世界中の死亡の5%以上はアルコールによるもので、飲酒が影響を及ぼす問題の規模は計り知れないという。同氏は「飲酒による悪影響は身体だけでなく、健康や教育、農業、貿易など社会のあらゆる分野に及んでおり、それら全てに対処していかなければならない」と述べている。.一方、この研究には関与していない米START治療回復センターのLawrence Brown Jr.氏は、「大量飲酒など不適切な飲酒による悪影響を一般に知らせることは重要だが、この研究だけを根拠に介入を推し進めることには賛成できない」と話す。その上で、「被害の程度や頻度をまず明らかにすることで、どこに資金を投入すべきかを知ることができるはずだ」と同氏は述べている。また、別の付随論評を執筆した米ボストン医療センターのTimothy Naimi氏は、「減税などでアルコールが手に入りやすくなるほど、飲酒を原因とする殺人や性的暴行、自動車事故などの被害が増えるとみられている」とし、喫煙対策の成果を考えればアルコール飲料の増税が効果的ではないかとの見方を示している。(HealthDay News 2019年7月2日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/alcohol-abuse-news-12/alcoholism-harms-53-million-americans-who-don-t-have-a-drinking-problem-748013.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
アルコールは飲酒をする本人だけでなく、家族や友人といった身近な人も危険にさらすようだ。米国では成人の5人に1人にあたる5300万人が、過去1年間に他人の飲酒による二次的な被害を受けたと報告していることが、米公衆衛生研究所(PHI)アルコール研究グループのKatherine Karriker-Jaffe氏らの研究から明らかになった。これらの被害は、脅迫や嫌がらせ、物的損害、暴力、金銭問題、人間関係、自動車事故など多岐にわたっていたという。研究の詳細は「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」5月号に掲載された。今回の研究は、2015年に、全米で計8,750人の18歳以上の成人を対象に実施された2件の調査データを用いたもの。いずれの調査も電話インタビューで飲酒による被害について尋ねた。.その結果、女性の21%、男性の23%が、過去1年間に他人の飲酒による被害を受けたと報告していた。被害を受けた人の割合に男女差はみられなかったが、被害の内容には性差がみられた。女性の場合には、配偶者やその他の家族の飲酒による被害が多かったのに対し、男性の場合には見知らぬ他人からの被害に遭うケースが多かった。また、女性は他人の飲酒にまつわる金銭問題や家族関係の問題が多かったのに対し、男性は物的損害や暴力などを受けることが多かった。.特に大量飲酒をする人は、他人の飲酒による被害を受ける確率が高かった。1回の飲酒で男性では5杯、女性では4杯以上飲む大量飲酒者のほぼ半数が、このような被害を経験していた。さらに、若い人ほど他人の飲酒による二次被害を受けやすいことも明らかになった。.研究を率いたKarriker-Jaffe氏は「飲酒がもたらす二次被害の現状について多くの人々が認識するようになれば、許容範囲の基準が変わり、バーの営業時間の延長やアルコール飲料の減税といった公共政策に影響を与える可能性がある」と述べている。また、同氏は、このような他人による飲酒の被害を防ぐには、「プライマリケア医によるリスク因子のスクリーニングが一助となる可能性がある」と指摘。プライマリケアの現場で、このような被害にきちんと対処できているかどうかを確認する必要があるとしている。.付随論評を執筆したカロリンスカ研究所(スウェーデン)のSven Andreasson氏によれば、世界中の死亡の5%以上はアルコールによるもので、飲酒が影響を及ぼす問題の規模は計り知れないという。同氏は「飲酒による悪影響は身体だけでなく、健康や教育、農業、貿易など社会のあらゆる分野に及んでおり、それら全てに対処していかなければならない」と述べている。.一方、この研究には関与していない米START治療回復センターのLawrence Brown Jr.氏は、「大量飲酒など不適切な飲酒による悪影響を一般に知らせることは重要だが、この研究だけを根拠に介入を推し進めることには賛成できない」と話す。その上で、「被害の程度や頻度をまず明らかにすることで、どこに資金を投入すべきかを知ることができるはずだ」と同氏は述べている。また、別の付随論評を執筆した米ボストン医療センターのTimothy Naimi氏は、「減税などでアルコールが手に入りやすくなるほど、飲酒を原因とする殺人や性的暴行、自動車事故などの被害が増えるとみられている」とし、喫煙対策の成果を考えればアルコール飲料の増税が効果的ではないかとの見方を示している。(HealthDay News 2019年7月2日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/alcohol-abuse-news-12/alcoholism-harms-53-million-americans-who-don-t-have-a-drinking-problem-748013.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.