肥満があると聴力が低下するリスクが高まる可能性があることが、国内12企業に勤める約5万人の会社員を最長8年間追跡した観察研究から明らかになった。研究の詳細は、国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の胡歓歓氏らの研究グループが「Clinical Nutrition」3月27日オンライン版に発表した。肥満は聴力低下と関連する可能性が示唆されているが、これらの関連を聴力測定データに基づいて分析した大規模なコホート研究はほとんど行われていなかった。また、代謝異常を伴う「不健康な肥満」と代謝異常を伴わない「健康的な肥満」による聴力低下への影響の差についても明らかになっていなかった。そこで、研究グループは今回、12の企業で働く約10万人の会社員を対象に行われている職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study;J-ECOHスタディ)のデータを用いて、肥満と聴力低下との関連を調べる観察研究を実施した。.対象は、ベースライン(2008~2011年度)の職域定期健診で聴力が正常であった20~64歳の会社員4万8,549人。肥満の程度によって対象者を3つのグループに分けた上で、追跡期間中に受けた純音聴覚検査によって判明した聴力低下との関連を調べた。その結果、肥満がある人では聴力低下のリスクが高まることが分かった。肥満のない人(BMI 25kg/m2未満)と比べた低音域(1,000Hz)の聴力低下リスクは、BMIが25 kg/m2以上30 kg/m2未満の肥満者では1.21倍、BMIが30kg/m2以上の肥満者では1.66倍であった。低音域ほど強い関連ではなかったものの、高音域(4,000Hz)でも同様の傾向がみられた。.さらに、対象者を肥満(BMI 25 kg/m2以上)と代謝異常の有無で4つのグループに分けて分析した。なお、(1)収縮期血圧130mmHg以上あるいは拡張期血圧85mmHg以上または高血圧治療中、(2)空腹時血糖値100mg/dL以上または糖尿病治療中、(3)トリグリセライド(中性脂肪)150mg/dL以上または脂質異常症治療中、(4)HDL-コレステロール(HDL-C)値が男性では40mg/dL未満、女性では50mg/dL未満-これらのうち2つ以上に該当する場合を「代謝異常あり」と判定した。.その結果、代謝的に健康で肥満のない人と比べると、低音域聴力が低下するリスクは、代謝異常を伴う不健康な肥満者で1.48倍と最も高く、代謝異常を伴わない肥満者(1.27倍)、代謝異常を伴う肥満のない人(1.19倍)が続いた。.これらの結果を踏まえ、胡氏らは「肥満は聴力低下のリスク上昇と関連し、また、肥満に加えて代謝異常があると聴力低下リスクはさらに高まることが分かった」と結論。同氏らは、肥満が聴力低下につながるメカニズムとして、「動脈硬化が進むと内耳動脈が狭窄や閉塞を起こし、内耳の聴覚器官である蝸牛の血流量が減少することのほか、肥満に伴う炎症や酸化ストレスにより聴覚細胞が損傷を受ける可能性が考えられる」とした上で、「聴覚の健康を保つためにも、肥満やメタボリックシンドロームを予防するための生活習慣が推奨される」と述べている。(HealthDay News 2019年7月22日).Abstract/Full Texthttps://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0261561419301335?via%3Dihub.Press Releasehttp://ccs.ncgm.go.jp/news/2019/20190702.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
肥満があると聴力が低下するリスクが高まる可能性があることが、国内12企業に勤める約5万人の会社員を最長8年間追跡した観察研究から明らかになった。研究の詳細は、国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の胡歓歓氏らの研究グループが「Clinical Nutrition」3月27日オンライン版に発表した。肥満は聴力低下と関連する可能性が示唆されているが、これらの関連を聴力測定データに基づいて分析した大規模なコホート研究はほとんど行われていなかった。また、代謝異常を伴う「不健康な肥満」と代謝異常を伴わない「健康的な肥満」による聴力低下への影響の差についても明らかになっていなかった。そこで、研究グループは今回、12の企業で働く約10万人の会社員を対象に行われている職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study;J-ECOHスタディ)のデータを用いて、肥満と聴力低下との関連を調べる観察研究を実施した。.対象は、ベースライン(2008~2011年度)の職域定期健診で聴力が正常であった20~64歳の会社員4万8,549人。肥満の程度によって対象者を3つのグループに分けた上で、追跡期間中に受けた純音聴覚検査によって判明した聴力低下との関連を調べた。その結果、肥満がある人では聴力低下のリスクが高まることが分かった。肥満のない人(BMI 25kg/m2未満)と比べた低音域(1,000Hz)の聴力低下リスクは、BMIが25 kg/m2以上30 kg/m2未満の肥満者では1.21倍、BMIが30kg/m2以上の肥満者では1.66倍であった。低音域ほど強い関連ではなかったものの、高音域(4,000Hz)でも同様の傾向がみられた。.さらに、対象者を肥満(BMI 25 kg/m2以上)と代謝異常の有無で4つのグループに分けて分析した。なお、(1)収縮期血圧130mmHg以上あるいは拡張期血圧85mmHg以上または高血圧治療中、(2)空腹時血糖値100mg/dL以上または糖尿病治療中、(3)トリグリセライド(中性脂肪)150mg/dL以上または脂質異常症治療中、(4)HDL-コレステロール(HDL-C)値が男性では40mg/dL未満、女性では50mg/dL未満-これらのうち2つ以上に該当する場合を「代謝異常あり」と判定した。.その結果、代謝的に健康で肥満のない人と比べると、低音域聴力が低下するリスクは、代謝異常を伴う不健康な肥満者で1.48倍と最も高く、代謝異常を伴わない肥満者(1.27倍)、代謝異常を伴う肥満のない人(1.19倍)が続いた。.これらの結果を踏まえ、胡氏らは「肥満は聴力低下のリスク上昇と関連し、また、肥満に加えて代謝異常があると聴力低下リスクはさらに高まることが分かった」と結論。同氏らは、肥満が聴力低下につながるメカニズムとして、「動脈硬化が進むと内耳動脈が狭窄や閉塞を起こし、内耳の聴覚器官である蝸牛の血流量が減少することのほか、肥満に伴う炎症や酸化ストレスにより聴覚細胞が損傷を受ける可能性が考えられる」とした上で、「聴覚の健康を保つためにも、肥満やメタボリックシンドロームを予防するための生活習慣が推奨される」と述べている。(HealthDay News 2019年7月22日).Abstract/Full Texthttps://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0261561419301335?via%3Dihub.Press Releasehttp://ccs.ncgm.go.jp/news/2019/20190702.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.