脳卒中を経験したことがある人は、再び脳卒中を発症するリスクが高いことが分かっている。しかし、血圧を適切に管理すれば脳卒中の再発リスクが約20%低下することが、東京女子医科大学脳神経内科主任教授の北川一夫氏らによる新たな研究で示された。研究の詳細は「JAMA Neurology」7月29日オンライン版に発表された。今回の研究は、研究に参加した日本の病院140施設から募集され2010~2016年に登録された脳卒中の既往患者1,263人を対象に実施された。研究参加者は、140/90mmHg未満を目標値とした通常の血圧管理を行う群と、120/80mmHg未満を目標値とした厳格な血圧管理を行う群のいずれかにランダムに割り付けられた。なお、この研究は患者の登録に時間がかかったことや研究資金が不十分であったことなどの理由で予定よりも早期に中止された。.ベースライン時の血圧値は、いずれの群も145/84mmHgだった。追跡期間中に平均血圧は、通常血圧管理群では133/78mmHgまで低下し、厳格血圧管理群では127/77 mmHgまで低下した。.対象者のうち、脳卒中を再発したのは91人だった。解析の結果、厳格血圧管理群では再発リスクが低下する傾向が認められたが、統計学的に有意ではなかった。しかし、脳卒中既往患者を対象に降圧による脳卒中の再発予防効果を検証した過去の3件の研究データを今回の研究データと統合して解析した結果、厳格な血圧管理によって脳卒中の再発リスクが22%低下することが分かった。.この結果を受けて北川氏らは、「脳卒中の再発を予防するには、血圧管理を強化して130/80mmHg未満に抑えることが推奨される」と結論づけている。目標値を120/80mmHgとより低く設定した方が良い可能性もあるが、今回の研究では平均で約3種類もの降圧薬を使用していたにもかかわらず、そこまで低下させることができた患者は約3割にとどまっていたという。また、血圧が低くなり過ぎることを恐れる患者も少なくない上に、降圧療法の強化に伴い副作用が生じることもあると同氏は説明している。.ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)脳神経内科学教授のCraig Anderson氏は、北川氏らの論文に関する付随論評で「降圧療法は比較的分かりやすい治療だ。しかし、効率的に血圧を管理するには複数の薬剤の処方が必要になる場合が多いが、そうしない医師もいる」と説明。その背景について、医師の間には、めまいによる転倒リスクなど降圧薬による副作用を避けるため、特に高齢でフレイル(虚弱)の患者に対する降圧薬の使用に消極的になる傾向があるとの見方を示している。降圧薬の副作用としては、めまいのほか、足首のむくみ、疲労感、転倒や失神、腎機能障害などがある。ただ、こうした副作用は使用量を調整することで回避できると同氏は話す。.一方、今回の研究では、降圧薬の利点も明確に示された。Anderson氏は「血圧を下げることで脳卒中リスクがなぜ低減するのか、はっきりと分かってはいないが、血圧が低下することで血管壁にかかる圧力が軽減され、血管壁が厚くなったり、血管が詰まったり破裂したりする確率が低下すると考えられる」と説明している。.また、北川氏とAnderson氏はともに、適正体重の維持や健康的な食生活、定期的な運動、減塩、ストレスをため込まない生活といった生活習慣の是正も、脳卒中の再発リスクの低減には重要だと強調している。(HealthDay News 2019年7月29日).https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/blood-pressure-news-70/trying-to-avoid-a-second-stroke-blood-pressure-control-is-key-748766.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
脳卒中を経験したことがある人は、再び脳卒中を発症するリスクが高いことが分かっている。しかし、血圧を適切に管理すれば脳卒中の再発リスクが約20%低下することが、東京女子医科大学脳神経内科主任教授の北川一夫氏らによる新たな研究で示された。研究の詳細は「JAMA Neurology」7月29日オンライン版に発表された。今回の研究は、研究に参加した日本の病院140施設から募集され2010~2016年に登録された脳卒中の既往患者1,263人を対象に実施された。研究参加者は、140/90mmHg未満を目標値とした通常の血圧管理を行う群と、120/80mmHg未満を目標値とした厳格な血圧管理を行う群のいずれかにランダムに割り付けられた。なお、この研究は患者の登録に時間がかかったことや研究資金が不十分であったことなどの理由で予定よりも早期に中止された。.ベースライン時の血圧値は、いずれの群も145/84mmHgだった。追跡期間中に平均血圧は、通常血圧管理群では133/78mmHgまで低下し、厳格血圧管理群では127/77 mmHgまで低下した。.対象者のうち、脳卒中を再発したのは91人だった。解析の結果、厳格血圧管理群では再発リスクが低下する傾向が認められたが、統計学的に有意ではなかった。しかし、脳卒中既往患者を対象に降圧による脳卒中の再発予防効果を検証した過去の3件の研究データを今回の研究データと統合して解析した結果、厳格な血圧管理によって脳卒中の再発リスクが22%低下することが分かった。.この結果を受けて北川氏らは、「脳卒中の再発を予防するには、血圧管理を強化して130/80mmHg未満に抑えることが推奨される」と結論づけている。目標値を120/80mmHgとより低く設定した方が良い可能性もあるが、今回の研究では平均で約3種類もの降圧薬を使用していたにもかかわらず、そこまで低下させることができた患者は約3割にとどまっていたという。また、血圧が低くなり過ぎることを恐れる患者も少なくない上に、降圧療法の強化に伴い副作用が生じることもあると同氏は説明している。.ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)脳神経内科学教授のCraig Anderson氏は、北川氏らの論文に関する付随論評で「降圧療法は比較的分かりやすい治療だ。しかし、効率的に血圧を管理するには複数の薬剤の処方が必要になる場合が多いが、そうしない医師もいる」と説明。その背景について、医師の間には、めまいによる転倒リスクなど降圧薬による副作用を避けるため、特に高齢でフレイル(虚弱)の患者に対する降圧薬の使用に消極的になる傾向があるとの見方を示している。降圧薬の副作用としては、めまいのほか、足首のむくみ、疲労感、転倒や失神、腎機能障害などがある。ただ、こうした副作用は使用量を調整することで回避できると同氏は話す。.一方、今回の研究では、降圧薬の利点も明確に示された。Anderson氏は「血圧を下げることで脳卒中リスクがなぜ低減するのか、はっきりと分かってはいないが、血圧が低下することで血管壁にかかる圧力が軽減され、血管壁が厚くなったり、血管が詰まったり破裂したりする確率が低下すると考えられる」と説明している。.また、北川氏とAnderson氏はともに、適正体重の維持や健康的な食生活、定期的な運動、減塩、ストレスをため込まない生活といった生活習慣の是正も、脳卒中の再発リスクの低減には重要だと強調している。(HealthDay News 2019年7月29日).https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/blood-pressure-news-70/trying-to-avoid-a-second-stroke-blood-pressure-control-is-key-748766.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.