メタボリックシンドロームの発症前状態(未病)を数学理論に基づく手法で定量的に検出可能なことを、富山大学和漢医薬学総合研究所の小泉桂一氏と東京大学生産技術研究所の合原一幸氏らのグループが報告した。研究の詳細は「Scientific Reports」6月24日オンライン版に掲載された。疾患の発症前にその兆候をとらえ予防的に介入することで効率的な医療を達成できることから、社会的にも「未病」段階へのアプローチの重要性が注目されている。しかし未病の状態は疾患ではないことから診断基準が存在しない。よって現状において、個人にみられる何らかの変化がその後、疾患の発症につながるのか否かは経験的に判断するしかない。.小泉氏らは、合原氏らが開発した生体信号の「揺らぎ」に着目した数学理論である「動的ネットワークバイオマーカー(Dynamic Network Biomarkers:DNB)理論」を活用。DNB理論に基づくと、健康な状態から病気の状態へ移行する直前に発生する生体信号の揺らぎの大幅な増加を、数理解析によって予測可能とされる。DNB理論の応用はこれまでのところ、健康な状態と病的な状態との差異が大きい急性疾患の超早期診断という観点から研究されてきた。一方、メタボリックシンドロームのような長い時間をかけ緩徐に発症・進行する病態にこの理論が適用できるかは明らかでなかった。.今回発表された研究は、まずメタボリックシンドロームを自然発症するTSODマウスを飼育。その飼育期間中の3~7週齢にかけて、1週間ごとに脂肪組織における遺伝子の発現量を網羅的に測定した。次にDNB理論によるデータ解析を行い、遺伝子発現の揺らぎが増加したポイントを調べた。すると、メタボリックシンドロームを発症する前の5週齢の時点で、147個の遺伝子発現量の揺らぎが顕著に増大していることが確認された。.小泉氏は「メタボリックシンドロームのような多くの慢性疾患は、発症時に突然、不連続な変化が生じるわけではなく、健康状態は連続的に悪化していくように思われる。しかし遺伝子発現のプロファイルには、一時的に急激な変化が生じている可能性がある」と述べている。メタボリックシンドロームのみならず、緩やかな経過をたどる認知症やサルコペニア、フレイルなどの予防・先制医療にも、本法の応用が期待される。(HealthDay News 2019年8月19日).Abstract/Full Texthttps://www.nature.com/articles/s41598-019-45119-w.Press Releasehttps://www.u-toyama.ac.jp/outline/publicity/pdf/2019/20190625.pdf.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
メタボリックシンドロームの発症前状態(未病)を数学理論に基づく手法で定量的に検出可能なことを、富山大学和漢医薬学総合研究所の小泉桂一氏と東京大学生産技術研究所の合原一幸氏らのグループが報告した。研究の詳細は「Scientific Reports」6月24日オンライン版に掲載された。疾患の発症前にその兆候をとらえ予防的に介入することで効率的な医療を達成できることから、社会的にも「未病」段階へのアプローチの重要性が注目されている。しかし未病の状態は疾患ではないことから診断基準が存在しない。よって現状において、個人にみられる何らかの変化がその後、疾患の発症につながるのか否かは経験的に判断するしかない。.小泉氏らは、合原氏らが開発した生体信号の「揺らぎ」に着目した数学理論である「動的ネットワークバイオマーカー(Dynamic Network Biomarkers:DNB)理論」を活用。DNB理論に基づくと、健康な状態から病気の状態へ移行する直前に発生する生体信号の揺らぎの大幅な増加を、数理解析によって予測可能とされる。DNB理論の応用はこれまでのところ、健康な状態と病的な状態との差異が大きい急性疾患の超早期診断という観点から研究されてきた。一方、メタボリックシンドロームのような長い時間をかけ緩徐に発症・進行する病態にこの理論が適用できるかは明らかでなかった。.今回発表された研究は、まずメタボリックシンドロームを自然発症するTSODマウスを飼育。その飼育期間中の3~7週齢にかけて、1週間ごとに脂肪組織における遺伝子の発現量を網羅的に測定した。次にDNB理論によるデータ解析を行い、遺伝子発現の揺らぎが増加したポイントを調べた。すると、メタボリックシンドロームを発症する前の5週齢の時点で、147個の遺伝子発現量の揺らぎが顕著に増大していることが確認された。.小泉氏は「メタボリックシンドロームのような多くの慢性疾患は、発症時に突然、不連続な変化が生じるわけではなく、健康状態は連続的に悪化していくように思われる。しかし遺伝子発現のプロファイルには、一時的に急激な変化が生じている可能性がある」と述べている。メタボリックシンドロームのみならず、緩やかな経過をたどる認知症やサルコペニア、フレイルなどの予防・先制医療にも、本法の応用が期待される。(HealthDay News 2019年8月19日).Abstract/Full Texthttps://www.nature.com/articles/s41598-019-45119-w.Press Releasehttps://www.u-toyama.ac.jp/outline/publicity/pdf/2019/20190625.pdf.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.