米国では、死亡ドナーから提供された腎臓が廃棄される確率はフランスの約2倍に上ることが、米ペンシルベニア大学准教授のPeter Reese氏らの調査で明らかになった。フランスでは、米国に比べて死亡ドナーの平均年齢が大幅に高く、高齢ドナーから摘出された腎臓を積極的に移植に用いていることも分かった。同氏らは、このような移植基準の格差を解消することで、米国ではさらに数万人の候補者が腎移植を受けられるようになる可能性があるとしている。研究の詳細は「JAMA Internal Medicine」8月26日オンライン版に掲載された。Reese氏らは今回、2004~2014年の間に、米国およびフランスの腎臓移植センターに提供された脳死腎の全国的なレジストリデータを用いて、腎臓の廃棄率や移植後の転帰を比較した。.その結果、同期間中に、米国では15万6,089個の脳死腎が提供され、このうち17.9%(2万7,987個)が廃棄されていた。一方、フランスでは、提供された2万9,984個の脳死腎のうち廃棄されたのは9.1%(2,732個)にとどまっており、米国の腎臓廃棄率はフランスの約2倍であることが分かった。Reese氏らの試算によれば、フランスの基準を用いれば、米国で廃棄された脳死腎のうち62%は移植に用いることができたと考えられたという。.Reese氏は「今回の研究結果から、両国間には移植に用いる臓器の基準に著しい格差があることが浮き彫りになった。フランスの積極的なアプローチにならうことで、さらに腎移植を希望する9万人もの米国人が利益を享受できる可能性が示唆された」と述べている。.また、今回の研究では、腎臓を提供した死亡ドナーの平均年齢は、フランスの56歳に対し、米国では39歳と両国間で17歳もの開きがみられた。この点について、Reese氏は「高齢の死亡ドナーから摘出した臓器は、貴重な資源でありながらも十分に活用されていないことが示された」と説明している。.なお、米国成人の約3700万人が慢性腎臓病患者で、72万人以上は腎不全のために腎移植や透析療法を必要としている。しかし、患者のうち年間5,000人は腎移植の待機中に死亡するとされる。.ドナーの年齢は移植が失敗するリスク因子の一つに挙げられる。しかし、過去の研究では、移植基準を緩和し、60歳以上の高齢者や高血圧などの健康問題を抱えた50歳以上のドナーからの腎移植を受け入れて待機時間を短縮することで、65歳以上の移植候補者の生存期間が延長することが報告されている。.米国では近年、腎移植を必要とする高齢者が増えており、60歳を超える移植レシピエントの割合は、2004年の22%から2017年には32%へと上昇している。現在、腎移植を待つ60歳以上の高齢患者は3万5,000人以上に上る。Reese氏らは、フランスの積極的な姿勢にならうことで、米国でも10年間の観察期間にわたり、約13万生存年数もの同種移植片の生存期間を増やせる可能性があるとしている。.共著者の一人、ネッケル病院(フランス)腎臓移植部門のAlexandre Loupy氏は、「今回の研究結果から、移植待機中に死亡する患者を減らすため、米国ではさらに取り組める課題があることが示された。また、世界的な移植臓器の不足といった問題を解決するには、各国間の連携を強化する必要があることも強調された」と述べている。(HealthDay News 2019年8月27日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/misc-kidney-problem-news-432/thousands-of-kidneys-thrown-away-by-u-s-transplant-centers-749604.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
米国では、死亡ドナーから提供された腎臓が廃棄される確率はフランスの約2倍に上ることが、米ペンシルベニア大学准教授のPeter Reese氏らの調査で明らかになった。フランスでは、米国に比べて死亡ドナーの平均年齢が大幅に高く、高齢ドナーから摘出された腎臓を積極的に移植に用いていることも分かった。同氏らは、このような移植基準の格差を解消することで、米国ではさらに数万人の候補者が腎移植を受けられるようになる可能性があるとしている。研究の詳細は「JAMA Internal Medicine」8月26日オンライン版に掲載された。Reese氏らは今回、2004~2014年の間に、米国およびフランスの腎臓移植センターに提供された脳死腎の全国的なレジストリデータを用いて、腎臓の廃棄率や移植後の転帰を比較した。.その結果、同期間中に、米国では15万6,089個の脳死腎が提供され、このうち17.9%(2万7,987個)が廃棄されていた。一方、フランスでは、提供された2万9,984個の脳死腎のうち廃棄されたのは9.1%(2,732個)にとどまっており、米国の腎臓廃棄率はフランスの約2倍であることが分かった。Reese氏らの試算によれば、フランスの基準を用いれば、米国で廃棄された脳死腎のうち62%は移植に用いることができたと考えられたという。.Reese氏は「今回の研究結果から、両国間には移植に用いる臓器の基準に著しい格差があることが浮き彫りになった。フランスの積極的なアプローチにならうことで、さらに腎移植を希望する9万人もの米国人が利益を享受できる可能性が示唆された」と述べている。.また、今回の研究では、腎臓を提供した死亡ドナーの平均年齢は、フランスの56歳に対し、米国では39歳と両国間で17歳もの開きがみられた。この点について、Reese氏は「高齢の死亡ドナーから摘出した臓器は、貴重な資源でありながらも十分に活用されていないことが示された」と説明している。.なお、米国成人の約3700万人が慢性腎臓病患者で、72万人以上は腎不全のために腎移植や透析療法を必要としている。しかし、患者のうち年間5,000人は腎移植の待機中に死亡するとされる。.ドナーの年齢は移植が失敗するリスク因子の一つに挙げられる。しかし、過去の研究では、移植基準を緩和し、60歳以上の高齢者や高血圧などの健康問題を抱えた50歳以上のドナーからの腎移植を受け入れて待機時間を短縮することで、65歳以上の移植候補者の生存期間が延長することが報告されている。.米国では近年、腎移植を必要とする高齢者が増えており、60歳を超える移植レシピエントの割合は、2004年の22%から2017年には32%へと上昇している。現在、腎移植を待つ60歳以上の高齢患者は3万5,000人以上に上る。Reese氏らは、フランスの積極的な姿勢にならうことで、米国でも10年間の観察期間にわたり、約13万生存年数もの同種移植片の生存期間を増やせる可能性があるとしている。.共著者の一人、ネッケル病院(フランス)腎臓移植部門のAlexandre Loupy氏は、「今回の研究結果から、移植待機中に死亡する患者を減らすため、米国ではさらに取り組める課題があることが示された。また、世界的な移植臓器の不足といった問題を解決するには、各国間の連携を強化する必要があることも強調された」と述べている。(HealthDay News 2019年8月27日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/misc-kidney-problem-news-432/thousands-of-kidneys-thrown-away-by-u-s-transplant-centers-749604.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.