心筋梗塞へのカテーテル治療では、発作の原因となった動脈の閉塞部位(責任病変)だけでなく、それ以外の狭窄部分(非責任病変)にもステントを留置すると予後が改善することが、大規模な国際共同ランダム化比較試験で明らかになった。同試験では、責任病変に加えて全ての非責任病変にステント治療を行うことで、心血管死または心筋梗塞再発の複合エンドポイントのリスクが26%低下したという。この試験結果は欧州心臓病学会(ESC 2019、8月31日~9月4日、パリ)で発表され、「New England Journal of Medicine」9月1日オンライン版に同時掲載された。この臨床試験は、世界31カ国140施設から登録した4,041人のST上昇型心筋梗塞患者を対象としたもの。全ての対象患者に対し責任病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)治療を施行し、責任病変のみを治療する群(2,025人)と非責任病変にも追加治療を行う群(2,016人)にランダムに割り付けて比較した。.その結果、中央値で3年間の追跡期間中に心血管死または心筋梗塞の再発がみられた患者の割合は、責任病変のみを治療した群では10.5%だったのに対し、非責任病変にも追加治療を行った群では7.8%と低かった(ハザード比0.74、95%信頼区間0.60~0.91、P=0.004)。また、責任病変のみを治療した群に比べて非責任病変も治療した群では、心血管死または心筋梗塞の再発に虚血による再血行再建を合わせた複合評価項目のリスクが半減したことも分かった(16.7%対8.9%、同0.51、0.43~0.61、P<0.001)。.心筋梗塞に対するPCI治療では、責任病変のみを治療するべきか、非責任病変に対しても治療するべきかについては長い間、議論の的であった。ガイドラインでもこの問題について明確な推奨はなされていないが、この8年間に報告された複数の研究や臨床試験で、全ての狭窄病変を再開通させると患者の予後が改善するという結果が示されていた。.臨床試験を率いたハミルトン・ヘルス・サイエンス(カナダ)インターベンショナルカーディオロジーのディレクターを務めるShamir Mehta氏は「今回の結果から、最近の研究報告の妥当性が改めて確認された」とし、「この結果は極めて明確で、米国やカナダだけでなく、世界中のガイドラインと臨床診療に影響することはほぼ確実といえる」と話している。専門家の一人で米国心臓病学会(ACC)会長のMichael Valentine氏も、「今回の結果は過去の研究結果を再確認するものであり、多くの心臓病専門医が待ち望んでいた報告だ」と評価している。.Mehta氏らによると、心筋梗塞患者の約半数には、発作の原因となった病変以外にも複数の狭窄病変があると考えられているという。この研究には関与していない米マウント・サイナイ病院のSamin Sharma氏は「このような多枝病変患者の80%以上は、全ての狭窄を再開通させる治療が有益なはずだ」としたうえで、「今回の試験では、非責任病変も追加して再開通しても、健康上の問題が生じるリスクは上昇しなかった点も重要だ」と指摘。Mehta氏も「両群間で腎傷害や血管合併症の発生率に差はみられず、非責任病変に追加治療を行っても脳卒中リスクは増加しなかった」と話している。.これらを踏まえ、Mehta氏は「狭窄した動脈の全てにステントを留置して再開通させる治療は有益であることが明らかになった」と結論。また、その有益性は長期間にわたり認められたことも興味深いとしている。なお、MehtaとSharmaの両氏は、全ての狭窄病変を治療しておけば将来、未治療の狭窄病変が原因で再治療が必要となる確率が低下するため、長期的には医療費を削減できる可能性もあると期待を示している。(HealthDay News 2019年9月1日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/stents-news-781/after-heart-attack-stenting-more-than-the-blocked-artery-may-be-best-749800.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
心筋梗塞へのカテーテル治療では、発作の原因となった動脈の閉塞部位(責任病変)だけでなく、それ以外の狭窄部分(非責任病変)にもステントを留置すると予後が改善することが、大規模な国際共同ランダム化比較試験で明らかになった。同試験では、責任病変に加えて全ての非責任病変にステント治療を行うことで、心血管死または心筋梗塞再発の複合エンドポイントのリスクが26%低下したという。この試験結果は欧州心臓病学会(ESC 2019、8月31日~9月4日、パリ)で発表され、「New England Journal of Medicine」9月1日オンライン版に同時掲載された。この臨床試験は、世界31カ国140施設から登録した4,041人のST上昇型心筋梗塞患者を対象としたもの。全ての対象患者に対し責任病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)治療を施行し、責任病変のみを治療する群(2,025人)と非責任病変にも追加治療を行う群(2,016人)にランダムに割り付けて比較した。.その結果、中央値で3年間の追跡期間中に心血管死または心筋梗塞の再発がみられた患者の割合は、責任病変のみを治療した群では10.5%だったのに対し、非責任病変にも追加治療を行った群では7.8%と低かった(ハザード比0.74、95%信頼区間0.60~0.91、P=0.004)。また、責任病変のみを治療した群に比べて非責任病変も治療した群では、心血管死または心筋梗塞の再発に虚血による再血行再建を合わせた複合評価項目のリスクが半減したことも分かった(16.7%対8.9%、同0.51、0.43~0.61、P<0.001)。.心筋梗塞に対するPCI治療では、責任病変のみを治療するべきか、非責任病変に対しても治療するべきかについては長い間、議論の的であった。ガイドラインでもこの問題について明確な推奨はなされていないが、この8年間に報告された複数の研究や臨床試験で、全ての狭窄病変を再開通させると患者の予後が改善するという結果が示されていた。.臨床試験を率いたハミルトン・ヘルス・サイエンス(カナダ)インターベンショナルカーディオロジーのディレクターを務めるShamir Mehta氏は「今回の結果から、最近の研究報告の妥当性が改めて確認された」とし、「この結果は極めて明確で、米国やカナダだけでなく、世界中のガイドラインと臨床診療に影響することはほぼ確実といえる」と話している。専門家の一人で米国心臓病学会(ACC)会長のMichael Valentine氏も、「今回の結果は過去の研究結果を再確認するものであり、多くの心臓病専門医が待ち望んでいた報告だ」と評価している。.Mehta氏らによると、心筋梗塞患者の約半数には、発作の原因となった病変以外にも複数の狭窄病変があると考えられているという。この研究には関与していない米マウント・サイナイ病院のSamin Sharma氏は「このような多枝病変患者の80%以上は、全ての狭窄を再開通させる治療が有益なはずだ」としたうえで、「今回の試験では、非責任病変も追加して再開通しても、健康上の問題が生じるリスクは上昇しなかった点も重要だ」と指摘。Mehta氏も「両群間で腎傷害や血管合併症の発生率に差はみられず、非責任病変に追加治療を行っても脳卒中リスクは増加しなかった」と話している。.これらを踏まえ、Mehta氏は「狭窄した動脈の全てにステントを留置して再開通させる治療は有益であることが明らかになった」と結論。また、その有益性は長期間にわたり認められたことも興味深いとしている。なお、MehtaとSharmaの両氏は、全ての狭窄病変を治療しておけば将来、未治療の狭窄病変が原因で再治療が必要となる確率が低下するため、長期的には医療費を削減できる可能性もあると期待を示している。(HealthDay News 2019年9月1日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/stents-news-781/after-heart-attack-stenting-more-than-the-blocked-artery-may-be-best-749800.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.