認知症患者で頻繁にみられる焦燥性興奮(アジテーション)や不安、攻撃性などの症状は、介護者にも大きな負担を強いる。そうした中、認知症患者の攻撃性やアジテーションの軽減には、マッサージなどの非薬物療法の方が、薬物療法よりも有効性が高い可能性が、セント・マイケルズ病院ユニティ・ヘルス(カナダ)のJennifer Watt氏らの研究で示された。詳細は、「Annals of Internal Medicine」10月14日号に発表された。認知症患者では、最大で4分の3の人に行動・心理症状がみられるとされる。こうした患者の多くは早期から施設でのケアが必要となる。医療従事者は、認知症患者の攻撃性やアジテーションの症状を軽減するために抗精神病薬など複数の種類の薬剤に頼っているのが現状だ。しかし、これらの薬剤にはさまざまなリスクがある。その1つが、皮肉なことに、記憶力や思考力が低下するというものだ。しかも、薬剤によっては攻撃性やアジテーションなどの症状にはほとんど奏効しない可能性を米国内科専門医認定機構財団(ABIM)が指摘している。さらに、米食品医薬品局(FDA)も、こうした薬剤は認知症患者の脳卒中や死亡のリスクを上昇させ得ると警告している。.そこで、Watt氏らは認知症患者のアジテーションなどに対する薬物療法以外の治療法を探るために今回の研究を実施。薬物療法や非薬物療法について検討した163件の研究に参加した合計2万3,000人以上の男女のデータを解析した。参加者の平均年齢は、ほとんどの研究で75歳以上だったほか、認知症としては、軽度から重度までの、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などさまざまな種類のものが含まれていた。.検討された薬剤は抗うつ薬や抗精神病薬、認知症治療薬、カンナビノイド、情動調節障害の治療薬であるデキストロメトルファン・キニジン(米国での商品名Nuedexta、日本国内未承認)など。一方、非薬物療法としては、環境調整や野外活動、レクリエーション療法、運動、マッサージ、音楽療法、認知活性化療法、介護者への教育およびサポートなどが検討された。.Watt氏らによる解析の結果、アジテーションや攻撃性を抑える効果が最も高いのは野外活動であることが示された。また、暴言に対しては野外活動、マッサージやタッチ療法が最も有効であることも分かったほか、暴力行為に対しては運動や日常生活の改善が最も有効性が高いとみられた。.一方、Nuedextaや大麻由来の薬剤は、プラセボと比べてアジテーションや攻撃性の軽減効果に優れていることが分かった。しかし、Watt氏は、これらの薬剤が処方される頻度はそれほど高くなく、また副作用の可能性もあるとして、「できるだけ非薬物療法を優先して実施することが重要だ」との見解を示している。.結果についてWatt氏は「われわれの研究から得られた最も重要な知見は、薬物療法よりも非薬物療法や多元的なケアの方が、認知症患者の攻撃性やアジテーションといった症状の治療には有効である可能性が高いということだ」と結論付けている。ただし、非薬物療法の導入は簡単ではないとの認識も示し、「介護の負担は大きく、介護する人たちは時間的あるいは経済的に可能な範囲で、できる限りのことをしているのが現状だ。非薬物療法による介入を促すためには、そのための財源の拡充を求めていく必要がある」と述べている。.その一方で、Watt氏は、簡単な介入でも認知症患者に役立ち得ることも指摘。「例えば、ヘッドホンで音楽を聞かせて気持ちを落ち着かせたり、外に連れ出したりするだけでも、認知症患者のこうした症状を抑える効果が期待できる」と話している。(HealthDay News 2019年10月15日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/what-helps-calm-agitated-dementia-patients-751257.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
認知症患者で頻繁にみられる焦燥性興奮(アジテーション)や不安、攻撃性などの症状は、介護者にも大きな負担を強いる。そうした中、認知症患者の攻撃性やアジテーションの軽減には、マッサージなどの非薬物療法の方が、薬物療法よりも有効性が高い可能性が、セント・マイケルズ病院ユニティ・ヘルス(カナダ)のJennifer Watt氏らの研究で示された。詳細は、「Annals of Internal Medicine」10月14日号に発表された。認知症患者では、最大で4分の3の人に行動・心理症状がみられるとされる。こうした患者の多くは早期から施設でのケアが必要となる。医療従事者は、認知症患者の攻撃性やアジテーションの症状を軽減するために抗精神病薬など複数の種類の薬剤に頼っているのが現状だ。しかし、これらの薬剤にはさまざまなリスクがある。その1つが、皮肉なことに、記憶力や思考力が低下するというものだ。しかも、薬剤によっては攻撃性やアジテーションなどの症状にはほとんど奏効しない可能性を米国内科専門医認定機構財団(ABIM)が指摘している。さらに、米食品医薬品局(FDA)も、こうした薬剤は認知症患者の脳卒中や死亡のリスクを上昇させ得ると警告している。.そこで、Watt氏らは認知症患者のアジテーションなどに対する薬物療法以外の治療法を探るために今回の研究を実施。薬物療法や非薬物療法について検討した163件の研究に参加した合計2万3,000人以上の男女のデータを解析した。参加者の平均年齢は、ほとんどの研究で75歳以上だったほか、認知症としては、軽度から重度までの、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などさまざまな種類のものが含まれていた。.検討された薬剤は抗うつ薬や抗精神病薬、認知症治療薬、カンナビノイド、情動調節障害の治療薬であるデキストロメトルファン・キニジン(米国での商品名Nuedexta、日本国内未承認)など。一方、非薬物療法としては、環境調整や野外活動、レクリエーション療法、運動、マッサージ、音楽療法、認知活性化療法、介護者への教育およびサポートなどが検討された。.Watt氏らによる解析の結果、アジテーションや攻撃性を抑える効果が最も高いのは野外活動であることが示された。また、暴言に対しては野外活動、マッサージやタッチ療法が最も有効であることも分かったほか、暴力行為に対しては運動や日常生活の改善が最も有効性が高いとみられた。.一方、Nuedextaや大麻由来の薬剤は、プラセボと比べてアジテーションや攻撃性の軽減効果に優れていることが分かった。しかし、Watt氏は、これらの薬剤が処方される頻度はそれほど高くなく、また副作用の可能性もあるとして、「できるだけ非薬物療法を優先して実施することが重要だ」との見解を示している。.結果についてWatt氏は「われわれの研究から得られた最も重要な知見は、薬物療法よりも非薬物療法や多元的なケアの方が、認知症患者の攻撃性やアジテーションといった症状の治療には有効である可能性が高いということだ」と結論付けている。ただし、非薬物療法の導入は簡単ではないとの認識も示し、「介護の負担は大きく、介護する人たちは時間的あるいは経済的に可能な範囲で、できる限りのことをしているのが現状だ。非薬物療法による介入を促すためには、そのための財源の拡充を求めていく必要がある」と述べている。.その一方で、Watt氏は、簡単な介入でも認知症患者に役立ち得ることも指摘。「例えば、ヘッドホンで音楽を聞かせて気持ちを落ち着かせたり、外に連れ出したりするだけでも、認知症患者のこうした症状を抑える効果が期待できる」と話している。(HealthDay News 2019年10月15日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/what-helps-calm-agitated-dementia-patients-751257.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.