プロトンポンプ阻害薬(PPI)で十分な効果が得られない難治性の胸焼けには、強化薬物療法よりも外科治療が有効とする臨床試験の結果が「New England Journal of Medicine」10月17日号に発表された。米ベイラー大学医療センターのStuart Jon Spechler氏らが報告したもので、慎重に選択した難治性の胸焼け患者において、治療後に症状が大幅に改善した患者の割合は強化薬物療法群では28%、対照群では12%だったのに対し、外科治療群では67%に達していたという。Spechler氏は「胃食道逆流症(GERD)の有病率は極めて高く、米国では成人の約5人中1人にみられる。主な症状は胸焼けで、PPIを中心とした薬物治療が行われているが、同薬を使用しても30%の患者は症状が改善しない」と話す。.PPI治療が効かない胸焼けの多くは「機能性胸焼け」と呼ばれ、明らかな原因が特定されない状態を指す。Spechler氏によれば、こうした胸焼けには手術を行っても効果は期待できないという。「胸焼けは胃酸が食道に逆流することが原因だと考えられていた。しかし、実際にはそれ以外にも胸焼け症状をもたらす要因はたくさんある」と同氏は説明。ただ、胃酸の逆流以外が原因の胸焼け症状は手術では軽減しないことから、「手術が有益な患者に対してのみ手術を行うべきだ」と同氏は述べている。.そこで、今回の臨床試験では、まずいくつかの段階を踏んで「噴門形成術」と呼ばれる手術が適応となる患者を特定した。噴門形成術は全身麻酔下で腹腔鏡を使用し、胃の上部を食道の周りに巻き付けて縫合する手術だ。米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)によると、この手術により食道が再び開いて胃酸が逆流するのを防ぐことができる。Spechler氏も「噴門形成術は大きな手術だが、消化管の問題を解消し、あらゆる逆流も防ぐことができる」と述べている。.この臨床試験では、PPIに治療抵抗性を示す胸焼け症状で退役軍人(VA)クリニックに紹介された患者366人が対象とされた。患者の平均年齢は48.5歳で、366人中280人が男性だった。全ての患者にオメプラゾール20mgを1日2回、2週間にわたって投与した。それでも胸焼け症状が続く患者には、原因を特定するため、内視鏡検査や食道生検などさまざまな検査を行った。.対象患者のうち計288人は、オメプラゾールによる初期治療で症状が改善した、あるいは原因を特定するための検査を完了しなかった、他の食道疾患が見つかったなどの理由で、途中で試験を中止した。その後、残る78人を(1)噴門形成術群、(2)強化薬物療法群(オメプラゾールとバクロフェンの併用療法、ただし症状に応じてデシプラミンも追加)、(3)対照群(オメプラゾールとプラセボを投与)の3つの群にランダムに割り付けた。.その結果について、「外科手術の適応を慎重に判断した患者集団では、手術の症状改善効果は、薬物治療よりも有意に優れていることが示された」とSpechler氏らは結論づけている。.この試験結果の報告を受け、米デトロイト医療センター傘下のサイナイ・グレース病院で消化器科部長を務めるAnthony Williams氏は「手術を必要とするGERD患者はそれほど多くはないことが改めて示された」と指摘。また、この種の手術の成功は術者の腕によるところが大きいため、手術を受ける予定の患者に対して、「執刀経験が豊富な外科医を見つけることが重要だ」と助言している。(HealthDay News 2019年10月17日).https://consumer.healthday.com/gastrointestinal-information-15/heartburn-gerd-and-indigestion-news-369/surgery-helps-tough-to-treat-acid-reflux-751283.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
プロトンポンプ阻害薬(PPI)で十分な効果が得られない難治性の胸焼けには、強化薬物療法よりも外科治療が有効とする臨床試験の結果が「New England Journal of Medicine」10月17日号に発表された。米ベイラー大学医療センターのStuart Jon Spechler氏らが報告したもので、慎重に選択した難治性の胸焼け患者において、治療後に症状が大幅に改善した患者の割合は強化薬物療法群では28%、対照群では12%だったのに対し、外科治療群では67%に達していたという。Spechler氏は「胃食道逆流症(GERD)の有病率は極めて高く、米国では成人の約5人中1人にみられる。主な症状は胸焼けで、PPIを中心とした薬物治療が行われているが、同薬を使用しても30%の患者は症状が改善しない」と話す。.PPI治療が効かない胸焼けの多くは「機能性胸焼け」と呼ばれ、明らかな原因が特定されない状態を指す。Spechler氏によれば、こうした胸焼けには手術を行っても効果は期待できないという。「胸焼けは胃酸が食道に逆流することが原因だと考えられていた。しかし、実際にはそれ以外にも胸焼け症状をもたらす要因はたくさんある」と同氏は説明。ただ、胃酸の逆流以外が原因の胸焼け症状は手術では軽減しないことから、「手術が有益な患者に対してのみ手術を行うべきだ」と同氏は述べている。.そこで、今回の臨床試験では、まずいくつかの段階を踏んで「噴門形成術」と呼ばれる手術が適応となる患者を特定した。噴門形成術は全身麻酔下で腹腔鏡を使用し、胃の上部を食道の周りに巻き付けて縫合する手術だ。米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)によると、この手術により食道が再び開いて胃酸が逆流するのを防ぐことができる。Spechler氏も「噴門形成術は大きな手術だが、消化管の問題を解消し、あらゆる逆流も防ぐことができる」と述べている。.この臨床試験では、PPIに治療抵抗性を示す胸焼け症状で退役軍人(VA)クリニックに紹介された患者366人が対象とされた。患者の平均年齢は48.5歳で、366人中280人が男性だった。全ての患者にオメプラゾール20mgを1日2回、2週間にわたって投与した。それでも胸焼け症状が続く患者には、原因を特定するため、内視鏡検査や食道生検などさまざまな検査を行った。.対象患者のうち計288人は、オメプラゾールによる初期治療で症状が改善した、あるいは原因を特定するための検査を完了しなかった、他の食道疾患が見つかったなどの理由で、途中で試験を中止した。その後、残る78人を(1)噴門形成術群、(2)強化薬物療法群(オメプラゾールとバクロフェンの併用療法、ただし症状に応じてデシプラミンも追加)、(3)対照群(オメプラゾールとプラセボを投与)の3つの群にランダムに割り付けた。.その結果について、「外科手術の適応を慎重に判断した患者集団では、手術の症状改善効果は、薬物治療よりも有意に優れていることが示された」とSpechler氏らは結論づけている。.この試験結果の報告を受け、米デトロイト医療センター傘下のサイナイ・グレース病院で消化器科部長を務めるAnthony Williams氏は「手術を必要とするGERD患者はそれほど多くはないことが改めて示された」と指摘。また、この種の手術の成功は術者の腕によるところが大きいため、手術を受ける予定の患者に対して、「執刀経験が豊富な外科医を見つけることが重要だ」と助言している。(HealthDay News 2019年10月17日).https://consumer.healthday.com/gastrointestinal-information-15/heartburn-gerd-and-indigestion-news-369/surgery-helps-tough-to-treat-acid-reflux-751283.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.