「天候が悪いと関節の痛みが強まる」というのは、単なる迷信ではないかもしれない。英マンチェスター大学のWill Dixon氏らが、同国の慢性疼痛患者を対象に、スマートフォン(スマホ)を用いた調査を実施したところ、湿気が高い日と風が強い日には関節の痛みが増す可能性があることが分かった。一方、痛みの程度と気温との間には有意な関連はみられなかったという。研究の詳細は「NPJ Digital Medicine」10月24日オンライン版に掲載された。この研究は、関節炎や線維筋痛症、片頭痛、神経障害性疼痛を有する英国人の慢性疼痛患者2,657人(平均年齢51歳、女性83%)を対象としたもの。参加者には、スマホアプリを用いて、関節痛の症状の程度を毎日記録してもらった。次に、スマホのGPS機能から得た位置情報を用いて地域の天候を特定し、痛みの程度と関連づけた。なお、これらのデータは約6カ月間にわたり収集された。.その結果、乾燥した日よりも湿度が高い日には、関節痛の重症度が高まることが分かった。また、気圧が低い日や風速が強い日にも痛みは強まったが、これらの天候条件のうち「湿度」が痛みの強さと最も強く関連していた。.一方で、気温と関節痛の重症度との間には明らかな関連は認められなかった。しかし、「湿度が高くて寒い日」や「風が強くて寒い日」には、痛みはより増す可能性が示された。なお、雨と痛みの強さとの間に関連はみられなかった。.さらに、高い湿度と強風、低気圧の3つの条件が揃う日には、平均的な天候の日と比べて強い痛みを感じる確率が20%高いことも明らかになった。Dixon氏は「このことは、強い痛みを感じる頻度が、平均的な天候の日では100日中5日なのに対し、これらの悪条件がそろった日には6日に増えることを意味する」と説明している。ただし、同氏らは、今回の研究では因果関係が証明されたわけではないとしている。.今回の研究の意義について、Dixon氏は「この研究結果は、以下に挙げる2つの理由で、将来、患者にとって重要なものとなるだろう」と指摘している。まず、天候と疼痛の関連を明らかにできれば、天気予報と同じく痛みの強さを予測できる可能性がある。次に、痛みの強さを予測できれば、例えば、痛みが強まると予想される日には体に負荷がかかる業務を別の日に変えるなど、日常的な活動の予定が立てやすくなるとしている。さらに、今回の研究データは、疼痛の新しい治療法の開発につながることも期待されるという。.ヒポクラテスの時代から、天候は関節炎の症状に影響すると考えられてきた。今回の研究では、試験開始時点で、対象患者の4人に3人は「天候は関節痛の症状に影響する」と信じていたことも判明した。.一方で、数多くの研究が行われてきたにもかかわらず、これらの関連について、いまだ科学的に一致した見解には至っていない。Dixon氏は、今回の研究で利用したスマホの利便性に触れ、「スマホを活用することで、より多くの対象者の疼痛症状を毎日、季節別に追跡できるようになれば、この領域の研究は大きく進展するだろう」と展望している。(HealthDay News 2019年10月24日).https://consumer.healthday.com/bone-and-joint-information-4/pain-health-news-520/windy-humid-days-could-bring-more-pain-751546.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
「天候が悪いと関節の痛みが強まる」というのは、単なる迷信ではないかもしれない。英マンチェスター大学のWill Dixon氏らが、同国の慢性疼痛患者を対象に、スマートフォン(スマホ)を用いた調査を実施したところ、湿気が高い日と風が強い日には関節の痛みが増す可能性があることが分かった。一方、痛みの程度と気温との間には有意な関連はみられなかったという。研究の詳細は「NPJ Digital Medicine」10月24日オンライン版に掲載された。この研究は、関節炎や線維筋痛症、片頭痛、神経障害性疼痛を有する英国人の慢性疼痛患者2,657人(平均年齢51歳、女性83%)を対象としたもの。参加者には、スマホアプリを用いて、関節痛の症状の程度を毎日記録してもらった。次に、スマホのGPS機能から得た位置情報を用いて地域の天候を特定し、痛みの程度と関連づけた。なお、これらのデータは約6カ月間にわたり収集された。.その結果、乾燥した日よりも湿度が高い日には、関節痛の重症度が高まることが分かった。また、気圧が低い日や風速が強い日にも痛みは強まったが、これらの天候条件のうち「湿度」が痛みの強さと最も強く関連していた。.一方で、気温と関節痛の重症度との間には明らかな関連は認められなかった。しかし、「湿度が高くて寒い日」や「風が強くて寒い日」には、痛みはより増す可能性が示された。なお、雨と痛みの強さとの間に関連はみられなかった。.さらに、高い湿度と強風、低気圧の3つの条件が揃う日には、平均的な天候の日と比べて強い痛みを感じる確率が20%高いことも明らかになった。Dixon氏は「このことは、強い痛みを感じる頻度が、平均的な天候の日では100日中5日なのに対し、これらの悪条件がそろった日には6日に増えることを意味する」と説明している。ただし、同氏らは、今回の研究では因果関係が証明されたわけではないとしている。.今回の研究の意義について、Dixon氏は「この研究結果は、以下に挙げる2つの理由で、将来、患者にとって重要なものとなるだろう」と指摘している。まず、天候と疼痛の関連を明らかにできれば、天気予報と同じく痛みの強さを予測できる可能性がある。次に、痛みの強さを予測できれば、例えば、痛みが強まると予想される日には体に負荷がかかる業務を別の日に変えるなど、日常的な活動の予定が立てやすくなるとしている。さらに、今回の研究データは、疼痛の新しい治療法の開発につながることも期待されるという。.ヒポクラテスの時代から、天候は関節炎の症状に影響すると考えられてきた。今回の研究では、試験開始時点で、対象患者の4人に3人は「天候は関節痛の症状に影響する」と信じていたことも判明した。.一方で、数多くの研究が行われてきたにもかかわらず、これらの関連について、いまだ科学的に一致した見解には至っていない。Dixon氏は、今回の研究で利用したスマホの利便性に触れ、「スマホを活用することで、より多くの対象者の疼痛症状を毎日、季節別に追跡できるようになれば、この領域の研究は大きく進展するだろう」と展望している。(HealthDay News 2019年10月24日).https://consumer.healthday.com/bone-and-joint-information-4/pain-health-news-520/windy-humid-days-could-bring-more-pain-751546.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.