無人のドローンと救急隊員のうちどちらが先に、心停止に至った模擬患者の元にAEDを届けられるかを競った結果、ドローンの圧勝だった――。こんな結果を、Sunnybrook Center for Prehospital Medicine(カナダ)診療部長のSheldon Cheskes氏らが米国心臓協会(AHA)の蘇生科学シンポジウム(ReSS 2019、11月16~17日、米フィラデルフィア)で発表した。同氏らは、ドローンによるAED輸送システムの実用化には、今後1年もかからないとの見通しを示している。このプロジェクトは、理論上はドローンを活用したAED輸送ネットワークが救命に寄与する可能性を示した研究に基づいたものだ。しかし、研究を率いたCheskes氏は「今回の研究から、ドローンは実臨床でも機能することが明らかになった」と説明している。.米国では、病院外で心停止を起こす人は年間35万人以上に上ると推定されるが、そのうち生存できるのは10%程度に過ぎない。心停止患者の救命にはAEDの使用が重要とされ、近年、公共の場での設置が進められているが、Cheskes氏は「院外心停止例のほとんどは家庭で起こっている」と指摘する。.心停止患者への心肺蘇生(CPR)は、開始が1分遅れるごとに死亡率は7~10%上昇する。救急隊の到着に時間がかかる農村部では特に、CPRの遅れが問題視されている。そこで、Cheskes氏らは、ドローンの活用でAED搬送時間を短縮できるかどうかを調べるため、オンタリオ州の農村地帯で4回にわたり実験を行った。.実験では、まず模擬的に911(緊急通報用の電話番号)をかけ、通報を受けた救急医療サービス(EMS)チームが、6.6~8.8km離れた待機場所から出動して、模擬患者の元に到着するまでの時間をドローンと競った。その結果、いずれの実験でも、ドローンが2.1~4.4分の差でEMSチームに勝利した。.次に、患者からの距離を約19~29kmに延ばして同様の実験を行った結果、やはりドローンはEMSチームよりも7~8分早く到着した。.この結果について、米アラバマ大学バーミンガム校傷害科学センター准教授のMichael C. Kurz氏は「EMSサービスから距離が離れているほど、ドローンによる輸送サービスのベネフィットは大きい可能性が示された」と説明。同氏は今回の研究には関与していないが、「公共の場や大型施設へのAED設置の費用対効果が低い地域や、地形的に救急隊が現場に到着するまで時間がかかる農村部では、ドローンの技術が状況を一変させる可能性がある」との見方を示している。.なお、Cheskes氏によれば、ドローンによるAED輸送を実現化するには、いくつかの解決しなければならない課題があるという。その一つは、ドローンに積んだAEDをバイスタンダー(救急現場に居合わせた人)に渡す方法だ。ドローンを着地させるべきか、ロープを使ってドローンからAEDを引き取るべきか、パラシュート装置を使ってAEDを着陸させるべきか。これらの課題については進行中の研究で検証される予定である。.ただ、Cheskes氏は、これらの課題は1年以内に克服できると考えており、「半年以内には、実際にドローンで運ばれたAEDによる人命救助の事例が報告されるのではないか」と期待を示している。(American Heart Association News 2019年11月15日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/emergencies-and-first-aid-news-227/aha-news-drone-delivered-aeds-fly-a-step-closer-to-saving-lives-752196.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
無人のドローンと救急隊員のうちどちらが先に、心停止に至った模擬患者の元にAEDを届けられるかを競った結果、ドローンの圧勝だった――。こんな結果を、Sunnybrook Center for Prehospital Medicine(カナダ)診療部長のSheldon Cheskes氏らが米国心臓協会(AHA)の蘇生科学シンポジウム(ReSS 2019、11月16~17日、米フィラデルフィア)で発表した。同氏らは、ドローンによるAED輸送システムの実用化には、今後1年もかからないとの見通しを示している。このプロジェクトは、理論上はドローンを活用したAED輸送ネットワークが救命に寄与する可能性を示した研究に基づいたものだ。しかし、研究を率いたCheskes氏は「今回の研究から、ドローンは実臨床でも機能することが明らかになった」と説明している。.米国では、病院外で心停止を起こす人は年間35万人以上に上ると推定されるが、そのうち生存できるのは10%程度に過ぎない。心停止患者の救命にはAEDの使用が重要とされ、近年、公共の場での設置が進められているが、Cheskes氏は「院外心停止例のほとんどは家庭で起こっている」と指摘する。.心停止患者への心肺蘇生(CPR)は、開始が1分遅れるごとに死亡率は7~10%上昇する。救急隊の到着に時間がかかる農村部では特に、CPRの遅れが問題視されている。そこで、Cheskes氏らは、ドローンの活用でAED搬送時間を短縮できるかどうかを調べるため、オンタリオ州の農村地帯で4回にわたり実験を行った。.実験では、まず模擬的に911(緊急通報用の電話番号)をかけ、通報を受けた救急医療サービス(EMS)チームが、6.6~8.8km離れた待機場所から出動して、模擬患者の元に到着するまでの時間をドローンと競った。その結果、いずれの実験でも、ドローンが2.1~4.4分の差でEMSチームに勝利した。.次に、患者からの距離を約19~29kmに延ばして同様の実験を行った結果、やはりドローンはEMSチームよりも7~8分早く到着した。.この結果について、米アラバマ大学バーミンガム校傷害科学センター准教授のMichael C. Kurz氏は「EMSサービスから距離が離れているほど、ドローンによる輸送サービスのベネフィットは大きい可能性が示された」と説明。同氏は今回の研究には関与していないが、「公共の場や大型施設へのAED設置の費用対効果が低い地域や、地形的に救急隊が現場に到着するまで時間がかかる農村部では、ドローンの技術が状況を一変させる可能性がある」との見方を示している。.なお、Cheskes氏によれば、ドローンによるAED輸送を実現化するには、いくつかの解決しなければならない課題があるという。その一つは、ドローンに積んだAEDをバイスタンダー(救急現場に居合わせた人)に渡す方法だ。ドローンを着地させるべきか、ロープを使ってドローンからAEDを引き取るべきか、パラシュート装置を使ってAEDを着陸させるべきか。これらの課題については進行中の研究で検証される予定である。.ただ、Cheskes氏は、これらの課題は1年以内に克服できると考えており、「半年以内には、実際にドローンで運ばれたAEDによる人命救助の事例が報告されるのではないか」と期待を示している。(American Heart Association News 2019年11月15日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/emergencies-and-first-aid-news-227/aha-news-drone-delivered-aeds-fly-a-step-closer-to-saving-lives-752196.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.