乳房内の乳腺組織の密度が高い「高濃度乳房(デンスブレスト)」の女性は、マンモグラフィだけでは乳がんを発見しにくいことが知られている。マンモグラフィでは発見できない乳がんは、MRI検査で見つけ出せるのだろうか――。ユトレヒト大学医療センター(オランダ)がん臨床疫学部教授のCarla van Gils氏らが実施したランダム化比較試験の結果、定期的にマンモグラフィを受けている女性では、次回の検診までにMRI検査を追加すると、中間期がんと診断される確率が半減することが分かった。ただし、MRI検査では、マンモグラフィのみによる検診と比べて偽陽性率が高かったという。研究結果の詳細は「New England Journal of Medicine」11月28日号に発表された。van Gils氏らは、オランダの50~75歳の女性4万373人を対象に、マンモグラフィ単独とMRI検査を追加した場合の有用性を検討するため、多施設共同のランダム化比較試験を実施した。極めて高濃度の乳房を有し、通常のマンモグラフィ検診で異常は認められなかった対象者を、MRI検査を追加する群(8,061人)またはマンモグラフィを単独で行う群(3万2,312人)にランダムに割り付けて比較した。.その結果、2年間のマンモグラフィ検診期間における検診1,000件当たりの中間期がんの発症率は、マンモグラフィ単独群では5件だったのに対し、MRI検査を追加した群では2.5件だった(P<0.001)。.ただし、MRI検査を追加した群では、検診1,000件当たりの偽陽性率は79.8件に上った。van Gils氏によると、マンモグラフィの偽陽性率は、オランダの過去の研究では1,000件当たり24件と報告されているという。なお、中間期がんとは、定期的に受けている検診から次の検診までに、症状が現れるなどのきっかけで発見されたがんのことを指す。.van Gils氏は「MRI検査はより高価で、造影剤の注射が必要であり、また、検出された病変が後になって乳がんではないことが判明する場合もある」と指摘。また、「進行が遅く、健康上の問題を引き起こす心配はない乳がんが検出される可能性があり、過剰治療につながることもある」と付け加えている。.米国がん協会(ACS)がん対策部門長のRichard Wender氏によると、米国人女性の10~20%に極めて高濃度の乳房がみられるという。しかし、そのような乳房ではマンモグラフィで乳がんを見つけるのは難しいことが以前から指摘されていた。.今回の報告を受けて、Wender氏は「数多くの女性たちが直面する難問について検討した質の高い研究だ」と評価。その上で、「乳腺密度が最も高いと分類される女性たちは、乳がんの発症リスクが高く、マンモグラフィでは乳がんが見逃される可能性が高いという2つの問題を抱えていることを理解することが重要だ」と指摘している。.van Gils氏は、今回の研究結果から、「MRIによる補助的な検診の有用性について、エビデンスの蓄積に向けた重要な一歩を踏み出すことができた」としているが、その一方で「多くの疑問点が残されており、リスクとベネフィットのバランスを慎重に評価する必要がある」と強調している。Wender氏もこれに同意し、「この臨床試験の結果を受けて、現行の検診体制がすぐに変わることはないが、今後の研究の方向性は示されたと考えている」と話している。(HealthDay News 2019年11月27日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/does-mri-screening-benefit-women-with-extremely-dense-breasts-752560.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
乳房内の乳腺組織の密度が高い「高濃度乳房(デンスブレスト)」の女性は、マンモグラフィだけでは乳がんを発見しにくいことが知られている。マンモグラフィでは発見できない乳がんは、MRI検査で見つけ出せるのだろうか――。ユトレヒト大学医療センター(オランダ)がん臨床疫学部教授のCarla van Gils氏らが実施したランダム化比較試験の結果、定期的にマンモグラフィを受けている女性では、次回の検診までにMRI検査を追加すると、中間期がんと診断される確率が半減することが分かった。ただし、MRI検査では、マンモグラフィのみによる検診と比べて偽陽性率が高かったという。研究結果の詳細は「New England Journal of Medicine」11月28日号に発表された。van Gils氏らは、オランダの50~75歳の女性4万373人を対象に、マンモグラフィ単独とMRI検査を追加した場合の有用性を検討するため、多施設共同のランダム化比較試験を実施した。極めて高濃度の乳房を有し、通常のマンモグラフィ検診で異常は認められなかった対象者を、MRI検査を追加する群(8,061人)またはマンモグラフィを単独で行う群(3万2,312人)にランダムに割り付けて比較した。.その結果、2年間のマンモグラフィ検診期間における検診1,000件当たりの中間期がんの発症率は、マンモグラフィ単独群では5件だったのに対し、MRI検査を追加した群では2.5件だった(P<0.001)。.ただし、MRI検査を追加した群では、検診1,000件当たりの偽陽性率は79.8件に上った。van Gils氏によると、マンモグラフィの偽陽性率は、オランダの過去の研究では1,000件当たり24件と報告されているという。なお、中間期がんとは、定期的に受けている検診から次の検診までに、症状が現れるなどのきっかけで発見されたがんのことを指す。.van Gils氏は「MRI検査はより高価で、造影剤の注射が必要であり、また、検出された病変が後になって乳がんではないことが判明する場合もある」と指摘。また、「進行が遅く、健康上の問題を引き起こす心配はない乳がんが検出される可能性があり、過剰治療につながることもある」と付け加えている。.米国がん協会(ACS)がん対策部門長のRichard Wender氏によると、米国人女性の10~20%に極めて高濃度の乳房がみられるという。しかし、そのような乳房ではマンモグラフィで乳がんを見つけるのは難しいことが以前から指摘されていた。.今回の報告を受けて、Wender氏は「数多くの女性たちが直面する難問について検討した質の高い研究だ」と評価。その上で、「乳腺密度が最も高いと分類される女性たちは、乳がんの発症リスクが高く、マンモグラフィでは乳がんが見逃される可能性が高いという2つの問題を抱えていることを理解することが重要だ」と指摘している。.van Gils氏は、今回の研究結果から、「MRIによる補助的な検診の有用性について、エビデンスの蓄積に向けた重要な一歩を踏み出すことができた」としているが、その一方で「多くの疑問点が残されており、リスクとベネフィットのバランスを慎重に評価する必要がある」と強調している。Wender氏もこれに同意し、「この臨床試験の結果を受けて、現行の検診体制がすぐに変わることはないが、今後の研究の方向性は示されたと考えている」と話している。(HealthDay News 2019年11月27日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/does-mri-screening-benefit-women-with-extremely-dense-breasts-752560.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.