狭くなった冠動脈を内側から広げて血流をよくする手術(経皮的冠動脈インターベーション;PCI)を受けた患者の多くは、手術前に受けた説明について理解したり覚えていたりせず、大半は受ける手術に対して「心臓の病気が治る」といった非現実的な期待を抱いていることが、英ハダースフィールド大学のFelicity Astin氏らによる新たな研究で明らかになった。研究の詳細は「European Journal of Cardiovascular Nursing」11月28日オンライン版に掲載された。PCI(冠動脈形成術とも呼ばれる)は、薬剤のみの治療と比べて生存率の改善や死亡または非致死的な心筋梗塞の発生率の減少と関連することから、急性冠症候群患者に対してよく用いられる。研究では、PCIを受けた患者326人(緊急PCIが159人、待機的PCIが167人)と循環器専門医118人を対象に、質問票を用いて調査を実施。インフォームド・コンセント(IC)に対する患者と医師の意識について調べた。「説明と同意」と訳されるICは、医療スタッフが患者に対し、病状と治療法、およびその利点と有害作用、その他の選択肢などについて説明し、患者がこれらを理解した上で治療内容を決めることを意味する。.その結果、患者も医師も、ICを行う目的についてはほぼ同様の認識を持っていたものの、患者の40%以上および医師の3分の1以上は、「ICで与えられた情報を患者は理解していない」と回答していた。.また、PCIがもたらす利点についての考えには患者と医師の間で大きな隔たりがあり、ほぼ全ての患者がPCIによる諸症状の緩和を期待していた一方で、約60%は「PCIにより病気が治る」と考えていた。また、待機的PCI患者では、95%が「心筋梗塞の今後のリスクが下がる」、91%が「寿命が延びる」と考えていた。この結果についてAstin氏は、「従来の報告を見ても、安定期に行う待機的PCIは主に諸症状の緩和を目的に行うものであって、寿命延伸のエビデンスはほとんどない。このことが理解されていない」と話す。.研究では、患者の47%は治療についての説明を受ける際に家族が同席することを希望し、31%は健康に関わる情報についての文書を理解するために助けが必要だったことも分かった。この点についてAstin氏は、「ヘルスリテラシー(健康や医療についての情報を調べて入手し、理解して活用する能力)の問題は軽視されている。患者に渡す資料では、分かりやすい言葉を用いるべきだ。また、臨床医は、患者が健康情報を読んだり、内容を理解したりするにあたり手助けが必要かどうかを確認する必要がある。患者が自ら進んで"読んでも分からない"と言うことはまずない」と主張する。.さらにAstin氏は、「患者はたいてい、全てのことを一気に説明される。多過ぎる情報量は患者の負担となり、それが聞いたことを忘れたり理解できなかったりすることにつながる」と述べ、患者と医療提供者には、提案されている治療法と選択可能な他の治療法について話し合う十分な時間を与える必要があるとする。.こうした問題への対応策としてAstin氏は、情報を少しずつ伝え、患者に聞いたことを自分の言葉で説明してもらい、どのくらい理解できているか確認する「ティーチバック」のテクニックを循環器専門医と看護師が身につけることを提案する。そして、「大切なのは良い教師になること。患者を試したり、質問に答えられないことを恥ずかしいと思わせたりしてはいけない。ただし、医師や看護師に時間がなければこうしたことはできない。だからこそ、患者にとって最適なクリニカルパスを作ることが必要なのだ」と述べている。(HealthDay News 2019年11月28日).https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/coronary-and-artery-news-356/does-informed-consent-before-heart-procedure-actually-inform-752510.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
狭くなった冠動脈を内側から広げて血流をよくする手術(経皮的冠動脈インターベーション;PCI)を受けた患者の多くは、手術前に受けた説明について理解したり覚えていたりせず、大半は受ける手術に対して「心臓の病気が治る」といった非現実的な期待を抱いていることが、英ハダースフィールド大学のFelicity Astin氏らによる新たな研究で明らかになった。研究の詳細は「European Journal of Cardiovascular Nursing」11月28日オンライン版に掲載された。PCI(冠動脈形成術とも呼ばれる)は、薬剤のみの治療と比べて生存率の改善や死亡または非致死的な心筋梗塞の発生率の減少と関連することから、急性冠症候群患者に対してよく用いられる。研究では、PCIを受けた患者326人(緊急PCIが159人、待機的PCIが167人)と循環器専門医118人を対象に、質問票を用いて調査を実施。インフォームド・コンセント(IC)に対する患者と医師の意識について調べた。「説明と同意」と訳されるICは、医療スタッフが患者に対し、病状と治療法、およびその利点と有害作用、その他の選択肢などについて説明し、患者がこれらを理解した上で治療内容を決めることを意味する。.その結果、患者も医師も、ICを行う目的についてはほぼ同様の認識を持っていたものの、患者の40%以上および医師の3分の1以上は、「ICで与えられた情報を患者は理解していない」と回答していた。.また、PCIがもたらす利点についての考えには患者と医師の間で大きな隔たりがあり、ほぼ全ての患者がPCIによる諸症状の緩和を期待していた一方で、約60%は「PCIにより病気が治る」と考えていた。また、待機的PCI患者では、95%が「心筋梗塞の今後のリスクが下がる」、91%が「寿命が延びる」と考えていた。この結果についてAstin氏は、「従来の報告を見ても、安定期に行う待機的PCIは主に諸症状の緩和を目的に行うものであって、寿命延伸のエビデンスはほとんどない。このことが理解されていない」と話す。.研究では、患者の47%は治療についての説明を受ける際に家族が同席することを希望し、31%は健康に関わる情報についての文書を理解するために助けが必要だったことも分かった。この点についてAstin氏は、「ヘルスリテラシー(健康や医療についての情報を調べて入手し、理解して活用する能力)の問題は軽視されている。患者に渡す資料では、分かりやすい言葉を用いるべきだ。また、臨床医は、患者が健康情報を読んだり、内容を理解したりするにあたり手助けが必要かどうかを確認する必要がある。患者が自ら進んで"読んでも分からない"と言うことはまずない」と主張する。.さらにAstin氏は、「患者はたいてい、全てのことを一気に説明される。多過ぎる情報量は患者の負担となり、それが聞いたことを忘れたり理解できなかったりすることにつながる」と述べ、患者と医療提供者には、提案されている治療法と選択可能な他の治療法について話し合う十分な時間を与える必要があるとする。.こうした問題への対応策としてAstin氏は、情報を少しずつ伝え、患者に聞いたことを自分の言葉で説明してもらい、どのくらい理解できているか確認する「ティーチバック」のテクニックを循環器専門医と看護師が身につけることを提案する。そして、「大切なのは良い教師になること。患者を試したり、質問に答えられないことを恥ずかしいと思わせたりしてはいけない。ただし、医師や看護師に時間がなければこうしたことはできない。だからこそ、患者にとって最適なクリニカルパスを作ることが必要なのだ」と述べている。(HealthDay News 2019年11月28日).https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/coronary-and-artery-news-356/does-informed-consent-before-heart-procedure-actually-inform-752510.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.