悪夢を見ると、現実の世界で直面する恐怖にうまく対処するのに役立つ可能性があるという研究結果を、ジュネーブ大学(スイス)睡眠・認知研究所のLampros Perogamvros氏らが「Human Brain Mapping」10月30日オンライン版に発表した。夢の中で恐怖体験をすると、現実に体験したときに恐怖心を抑えられるようになると考えられるという。同氏らは、このような現象を利用した不安障害の新しい治療法の開発につながる可能性があると、期待を示している。Perogamvros氏らは、18人の参加者の夢を分析し、高密度脳波計を用いて、夢の中で恐怖を感じたときに活性化する脳部位を調べた。その結果、夢の中で恐怖を感じると、目覚めているときと同じ2つの脳部位が活性化することが明らかになった。また、悪夢から目覚めた後は、感情を制御する脳領域が現実世界の恐怖に対して、より効果的に反応することも示された。.Perogamvros氏は「夢の中の恐怖体験の誘発には、"島皮質"と"帯状皮質"と呼ばれる2つの脳領域が関与していることを突き止めた」と話す。なお、島皮質は目覚めているときに恐怖を感じると活性化し、帯状皮質は、恐怖を感じたときに起こる運動反応や行動反応を助けるように働くとされている。.さらに、89人の参加者を対象とした別の試験では、夢の中で恐怖を感じる時間が長いほど、起きている間に、恐怖を呼び起こすような刺激(画像)に対する島皮質と帯状皮質の反応が抑えられていることも分かった。これにより、夢を見ているときの感情と目覚めているときの感情には強い関連が認められたという。「このことは、現実世界の恐怖にうまく対処するために、夢の中で恐怖体験をシミュレートしているという仮説を裏付けるものだ」と、Perogamvros氏らは説明している。.Perogamvros氏は「夢を見ることは恐怖体験への反応のトレーニングとなり、現実の生活で危機に直面したときの備えになると考えられる」と述べている。今回の研究結果に基づいて、同氏らは、夢をベースとした不安障害の新しい治療法を探っていく予定だという。.なお、Perogamvros氏らは、恐怖のレベルが中程度の悪夢(bad dream)と、非常に強い恐怖感で睡眠が妨げられ、目覚めても感情に悪影響をもたらすような悪夢(nightmare)では結果は異なると強調している。「夢の中での恐怖感が一定のレベルを超えると、感情を調節する役割としての有益性は失われてしまうと考えられる」と同氏は説明している。(HealthDay News 2019年12月1日).https://consumer.healthday.com/sleep-disorder-information-33/misc-sleep-problems-news-626/dreams-are-training-ground-for-fearful-real-life-situations-752563.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.