心房細動と呼ばれる不整脈の治療に用いられるナトリウム(Na)チャネル遮断薬は、肥満のある患者では効果が減弱する可能性があることが、米イリノイ大学循環器学部部長のDawood Darbar氏らの研究で示された。研究の詳細は「JAMA Cardiology」11月27日オンライン版に掲載された。Darbar氏らは今回、肥満が抗不整脈薬の効果に影響を与えるのか否かを検討するため、同大学の心房細動レジストリのデータを用いて311人(平均年齢65歳、女性が約40%)の心房細動患者を追跡した。.その結果、肥満のある心房細動患者では、Naチャネル遮断薬という一部の抗不整脈薬の有効性が低いことが分かった。同薬を使用していた患者における心房細動の再発率は、肥満のない患者群では6%だったのに対し、肥満患者では30%であった。.肥満は既に、心房細動の強力なリスク因子であることが知られている。しかし、肥満があっても不整脈の治療を諦める必要はないようだ。Darbar氏らによると、今回の研究では、カリウム(K)チャネル遮断薬の有効性については、肥満の有無で差は見られないことも示されたという。.Darbar氏は「今回の研究から、心房細動に対する抗不整脈薬の効果には個人差があることが初めて明らかになった」と説明。また、「今回のレジストリに登録された患者の50%は肥満であったことから、このデータを活用することで、治療薬の効果に肥満が与える影響について調べることができた」と話している。.この研究には関与していない米レノックス・ヒル病院の循環器医であるSatjit Bhusri氏は、今回の報告を受けて、「Naチャネル遮断薬の作用機序を考えれば、納得できる結果だ」と指摘。「抗不整脈薬のほとんどは全身に行き渡り、さまざまな臓器で吸収される。このような薬剤は、血中濃度を安定した状態に保つためには高用量で投与する必要がある。したがって、特に肥満患者で治療効果を得るためには、痩せている患者よりも用量を増やすべきかもしれない」と説明している。.ただし、Bhusri氏は「用量を増やすと副作用の危険性が増すことから、肥満の患者には別の治療法を検討したほうがよいとする考え方もあるだろう」と付け加えている。.Darbar氏も、この研究結果は、肥満の心房細動患者のより良い治療選択肢の提供につながるものだとし、「肥満は増加し続けており、心房細動をより適切に管理できる治療選択肢があれば、患者のQOL(生活の質)は向上し、早期死亡の原因ともなる脳卒中などの合併症を予防できる可能性がある」と話している。.一方、専門家の一人で米ノースウェル・ヘルス電気生理学のLaurence Epstein氏は「がんにもいろいろな種別があるように、心房細動にも同じことが言えるようだ。今回の研究結果は、心房細動は全てが同じものではないことを支持するものだ」と述べ、心房細動治療においても個別化医療が重要との見方を示している。(HealthDay News 2019年11月27日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/atrial-fibrillation-959/obesity-might-weaken-some-drugs-effectiveness-against-afib-752556.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
心房細動と呼ばれる不整脈の治療に用いられるナトリウム(Na)チャネル遮断薬は、肥満のある患者では効果が減弱する可能性があることが、米イリノイ大学循環器学部部長のDawood Darbar氏らの研究で示された。研究の詳細は「JAMA Cardiology」11月27日オンライン版に掲載された。Darbar氏らは今回、肥満が抗不整脈薬の効果に影響を与えるのか否かを検討するため、同大学の心房細動レジストリのデータを用いて311人(平均年齢65歳、女性が約40%)の心房細動患者を追跡した。.その結果、肥満のある心房細動患者では、Naチャネル遮断薬という一部の抗不整脈薬の有効性が低いことが分かった。同薬を使用していた患者における心房細動の再発率は、肥満のない患者群では6%だったのに対し、肥満患者では30%であった。.肥満は既に、心房細動の強力なリスク因子であることが知られている。しかし、肥満があっても不整脈の治療を諦める必要はないようだ。Darbar氏らによると、今回の研究では、カリウム(K)チャネル遮断薬の有効性については、肥満の有無で差は見られないことも示されたという。.Darbar氏は「今回の研究から、心房細動に対する抗不整脈薬の効果には個人差があることが初めて明らかになった」と説明。また、「今回のレジストリに登録された患者の50%は肥満であったことから、このデータを活用することで、治療薬の効果に肥満が与える影響について調べることができた」と話している。.この研究には関与していない米レノックス・ヒル病院の循環器医であるSatjit Bhusri氏は、今回の報告を受けて、「Naチャネル遮断薬の作用機序を考えれば、納得できる結果だ」と指摘。「抗不整脈薬のほとんどは全身に行き渡り、さまざまな臓器で吸収される。このような薬剤は、血中濃度を安定した状態に保つためには高用量で投与する必要がある。したがって、特に肥満患者で治療効果を得るためには、痩せている患者よりも用量を増やすべきかもしれない」と説明している。.ただし、Bhusri氏は「用量を増やすと副作用の危険性が増すことから、肥満の患者には別の治療法を検討したほうがよいとする考え方もあるだろう」と付け加えている。.Darbar氏も、この研究結果は、肥満の心房細動患者のより良い治療選択肢の提供につながるものだとし、「肥満は増加し続けており、心房細動をより適切に管理できる治療選択肢があれば、患者のQOL(生活の質)は向上し、早期死亡の原因ともなる脳卒中などの合併症を予防できる可能性がある」と話している。.一方、専門家の一人で米ノースウェル・ヘルス電気生理学のLaurence Epstein氏は「がんにもいろいろな種別があるように、心房細動にも同じことが言えるようだ。今回の研究結果は、心房細動は全てが同じものではないことを支持するものだ」と述べ、心房細動治療においても個別化医療が重要との見方を示している。(HealthDay News 2019年11月27日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/atrial-fibrillation-959/obesity-might-weaken-some-drugs-effectiveness-against-afib-752556.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.