住み慣れた自宅で家族に見守られながら、穏やかに最期のときを迎えたいと願う人は多いだろう。米国では、そのような在宅死の望みを叶えている人が増えつつあることが、米ハーバード大学医学大学院のHaider Warraich氏らの調査で明らかになった。同氏らが「New England Journal of Medicine」12月12日号に発表した報告書によると、米国で20世紀初頭以来、初めて在宅で死を迎えた人の数が、病院で死を迎えた人の数をわずかに上回ったことが分かった。Warraich氏らが、2017年の全米データを分析した結果、病院で死を迎えた人の割合は約30%だったのに対し、自宅で死を迎えた人は約31%で、病院死を上回っていた。一方、21%は介護施設で、約8%はホスピス施設で死を迎えていたという。.2003年の時点では、病院死が約40%を占め、在宅死は24%に過ぎなかった。このような変化には、人生の最期に直面する人々の願望が反映されていると、Warraich氏は指摘する。「文化的な背景や経済状況にかかわらず、ほとんどの人は自宅で最期を迎えたいと考えている。しかし、医療が進歩し、病院の近代化が進む中で、実際には多くの人が病院で死を迎えるようになった」と同氏。さらに、「自宅で死にたいという希望が叶えられるようになったのは、患者中心の医療が尊重されてきているためと考えられる。これは好ましい変化だ」と話している。.Warraich氏はまた、緩和ケアの認知度が向上し、ホスピスケアの利用者が増えたことも在宅死の増加に寄与したとの見方を示している。なお、米国では、ホスピスケアは公的医療保険のメディケアでカバーされ、自分の望んだ場所で受けることができる。.さらに、Warraich氏や米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のKatherine Ornstein氏によれば、病院死よりも在宅死の方が費用も抑えられるという。今回の研究には関与していないOrnstein氏は、「終末期ケアに限らず、重症患者についても、病院から地域や在宅医療へと移行する流れが加速している」と話す。.ただし、Warraich氏をはじめとする専門家らからは、在宅医療では、患者の家族や友人に大きな負担がかかることを懸念する声もあがっている。Ornstein氏も「家族は無償で患者を支えることになる。しかも、終末期ケアは簡単なものではない」と強調。その上で、「介護者をより支援し、彼らが利用できる資源を拡充する必要がある。介護者が休息できるように支援するレスパイトケアや介護休業制度を普及させていくべきだ」と主張している。.一方、Warraich氏らは「病院や介護施設で治療やケアを受けるべき患者もいる。これらの施設であれば適切なケアが受けられるにもかかわらず、自宅に戻されて死を迎えるケースが増えることも心配している」と付け加えている。.このほか、今回の研究では、在宅医療に関しても格差の存在が示された。例えば、病院で死を迎える確率は、白人と比べて黒人では47%、ヒスパニック系では40%それぞれ高かった。また、米国の死因のトップを占める心疾患の患者は、がん患者と比べて在宅死の確率が27%低かった。Warraich氏は「現在の終末期ケアが、がん以外の疾患の患者にも適切なのかは疑問だ」と指摘。Ornstein氏もそれに同意し、「誰もが質の高い終末期ケアを受けられるようになるためには、さらなる研究が必要だ」と話している。(HealthDay News 2019年12月11日).https://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/misc-death-and-dying-news-172/more-americans-are-now-dying-at-home-rather-than-the-hospital-752953.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
住み慣れた自宅で家族に見守られながら、穏やかに最期のときを迎えたいと願う人は多いだろう。米国では、そのような在宅死の望みを叶えている人が増えつつあることが、米ハーバード大学医学大学院のHaider Warraich氏らの調査で明らかになった。同氏らが「New England Journal of Medicine」12月12日号に発表した報告書によると、米国で20世紀初頭以来、初めて在宅で死を迎えた人の数が、病院で死を迎えた人の数をわずかに上回ったことが分かった。Warraich氏らが、2017年の全米データを分析した結果、病院で死を迎えた人の割合は約30%だったのに対し、自宅で死を迎えた人は約31%で、病院死を上回っていた。一方、21%は介護施設で、約8%はホスピス施設で死を迎えていたという。.2003年の時点では、病院死が約40%を占め、在宅死は24%に過ぎなかった。このような変化には、人生の最期に直面する人々の願望が反映されていると、Warraich氏は指摘する。「文化的な背景や経済状況にかかわらず、ほとんどの人は自宅で最期を迎えたいと考えている。しかし、医療が進歩し、病院の近代化が進む中で、実際には多くの人が病院で死を迎えるようになった」と同氏。さらに、「自宅で死にたいという希望が叶えられるようになったのは、患者中心の医療が尊重されてきているためと考えられる。これは好ましい変化だ」と話している。.Warraich氏はまた、緩和ケアの認知度が向上し、ホスピスケアの利用者が増えたことも在宅死の増加に寄与したとの見方を示している。なお、米国では、ホスピスケアは公的医療保険のメディケアでカバーされ、自分の望んだ場所で受けることができる。.さらに、Warraich氏や米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のKatherine Ornstein氏によれば、病院死よりも在宅死の方が費用も抑えられるという。今回の研究には関与していないOrnstein氏は、「終末期ケアに限らず、重症患者についても、病院から地域や在宅医療へと移行する流れが加速している」と話す。.ただし、Warraich氏をはじめとする専門家らからは、在宅医療では、患者の家族や友人に大きな負担がかかることを懸念する声もあがっている。Ornstein氏も「家族は無償で患者を支えることになる。しかも、終末期ケアは簡単なものではない」と強調。その上で、「介護者をより支援し、彼らが利用できる資源を拡充する必要がある。介護者が休息できるように支援するレスパイトケアや介護休業制度を普及させていくべきだ」と主張している。.一方、Warraich氏らは「病院や介護施設で治療やケアを受けるべき患者もいる。これらの施設であれば適切なケアが受けられるにもかかわらず、自宅に戻されて死を迎えるケースが増えることも心配している」と付け加えている。.このほか、今回の研究では、在宅医療に関しても格差の存在が示された。例えば、病院で死を迎える確率は、白人と比べて黒人では47%、ヒスパニック系では40%それぞれ高かった。また、米国の死因のトップを占める心疾患の患者は、がん患者と比べて在宅死の確率が27%低かった。Warraich氏は「現在の終末期ケアが、がん以外の疾患の患者にも適切なのかは疑問だ」と指摘。Ornstein氏もそれに同意し、「誰もが質の高い終末期ケアを受けられるようになるためには、さらなる研究が必要だ」と話している。(HealthDay News 2019年12月11日).https://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/misc-death-and-dying-news-172/more-americans-are-now-dying-at-home-rather-than-the-hospital-752953.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.