早期乳がん患者の術後の放射線治療において、部分的に高線量の放射線を照射する加速乳房部分照射(APBI)と標準治療である全乳房照射との間で、乳がん再発率は同等であったとする臨床試験の結果が報告された。研究を行ったフィレンツェ大学(イタリア)のIcro Meattini氏は、「APBIは全乳房照射と比べて安全性が高く、侵襲性が低い治療法だ。また、費用対効果が高く、治療期間も短縮できる」と説明している。研究結果は、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2019、12月10~14日、米サンアントニオ)で発表された。米国がん協会(ACS)によると、早期乳がん治療では、腫瘍とその周辺組織のみを切除する乳房部分切除術の後、放射線治療が行われることが多い。手術で腫瘍を切除してもがん細胞が残ってしまう可能性があるが、放射線治療を行えば残ったがん細胞を死滅させ得るからだ。.全乳房照射では文字通り、乳房全体に放射線を当てる。治療期間は通常6週間前後で、最短で3~4週間、最長で7週間に及ぶ。使用する放射線が高線量であると、治療期間は大幅に短くなる。一方、APBIは腫瘍があった部位のみに高線量の放射線を照射する方法で、治療も10日間程度で終わる。.今回報告された臨床試験には、ステージ1または2の乳がん患者520人が参加した。そのほとんどはホルモン受容体が陽性でHER2(ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型)陰性の乳がん患者だった。また、全例が40歳以上で、主な年齢層は50歳以上だった。対象者は全乳房照射群とAPBI群のいずれかにランダムに割り付けられた。.その結果、5年間の追跡期間において、全乳房照射群とAPBI群の間で生存率や再発率に有意差は認められなかった。10年時で乳がんの再発は、APBI群では3.3%の患者、全乳房照射群では2.6%の患者に認められ、この結果は5年時の結果と同等のものであったという。さらに、乳がん特異的生存率も、APBI群で97.6%、全乳房照射群で97.5%と同等であった。.このほか、放射線の照射に起因した皮膚の症状や、医師と患者の双方による評価に基づいた乳房の整容性については、全乳房照射群と比べてAPBI群の方が優れていたという。.これらの結果を踏まえ、Meattini氏は「慎重に選択した患者においては、乳がん治療の選択肢の1つとしてAPBIを考慮すべきだ」との見解を示している。.この試験には関与していない米マウントサイナイ・ウエストのStephanie Bernik氏は、「早期乳がん患者にとって素晴らしい報告だ」とコメント。「この試験では、10年時の再発率も5年時の再発率と同等であることが示された。近年、治療は多ければ多いほど良いわけではないことを示す研究結果が増えつつあるが、今回の結果もその1つだといえる」と話している。.また、Bernik氏は、APBIは治療期間の短縮につながるため、多くの女性にとって新たな治療選択肢の1つとなり得ると指摘。放射線治療を行っている医療機関が近くにないため乳房切除術を選ばざるを得ない女性にも短期間の治療で済むAPBIの選択肢があれば、放射線治療が受けやすくなる可能性があるとしている。ただし、Bernik氏は「より規模の大きな試験で結果を検証し、全般的な安全性を確認する必要がある」と話している。.なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2019年12月12日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/radiation-news-571/radiation-of-just-part-of-the-breast-can-stop-cancer-s-return-752966.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
早期乳がん患者の術後の放射線治療において、部分的に高線量の放射線を照射する加速乳房部分照射(APBI)と標準治療である全乳房照射との間で、乳がん再発率は同等であったとする臨床試験の結果が報告された。研究を行ったフィレンツェ大学(イタリア)のIcro Meattini氏は、「APBIは全乳房照射と比べて安全性が高く、侵襲性が低い治療法だ。また、費用対効果が高く、治療期間も短縮できる」と説明している。研究結果は、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2019、12月10~14日、米サンアントニオ)で発表された。米国がん協会(ACS)によると、早期乳がん治療では、腫瘍とその周辺組織のみを切除する乳房部分切除術の後、放射線治療が行われることが多い。手術で腫瘍を切除してもがん細胞が残ってしまう可能性があるが、放射線治療を行えば残ったがん細胞を死滅させ得るからだ。.全乳房照射では文字通り、乳房全体に放射線を当てる。治療期間は通常6週間前後で、最短で3~4週間、最長で7週間に及ぶ。使用する放射線が高線量であると、治療期間は大幅に短くなる。一方、APBIは腫瘍があった部位のみに高線量の放射線を照射する方法で、治療も10日間程度で終わる。.今回報告された臨床試験には、ステージ1または2の乳がん患者520人が参加した。そのほとんどはホルモン受容体が陽性でHER2(ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型)陰性の乳がん患者だった。また、全例が40歳以上で、主な年齢層は50歳以上だった。対象者は全乳房照射群とAPBI群のいずれかにランダムに割り付けられた。.その結果、5年間の追跡期間において、全乳房照射群とAPBI群の間で生存率や再発率に有意差は認められなかった。10年時で乳がんの再発は、APBI群では3.3%の患者、全乳房照射群では2.6%の患者に認められ、この結果は5年時の結果と同等のものであったという。さらに、乳がん特異的生存率も、APBI群で97.6%、全乳房照射群で97.5%と同等であった。.このほか、放射線の照射に起因した皮膚の症状や、医師と患者の双方による評価に基づいた乳房の整容性については、全乳房照射群と比べてAPBI群の方が優れていたという。.これらの結果を踏まえ、Meattini氏は「慎重に選択した患者においては、乳がん治療の選択肢の1つとしてAPBIを考慮すべきだ」との見解を示している。.この試験には関与していない米マウントサイナイ・ウエストのStephanie Bernik氏は、「早期乳がん患者にとって素晴らしい報告だ」とコメント。「この試験では、10年時の再発率も5年時の再発率と同等であることが示された。近年、治療は多ければ多いほど良いわけではないことを示す研究結果が増えつつあるが、今回の結果もその1つだといえる」と話している。.また、Bernik氏は、APBIは治療期間の短縮につながるため、多くの女性にとって新たな治療選択肢の1つとなり得ると指摘。放射線治療を行っている医療機関が近くにないため乳房切除術を選ばざるを得ない女性にも短期間の治療で済むAPBIの選択肢があれば、放射線治療が受けやすくなる可能性があるとしている。ただし、Bernik氏は「より規模の大きな試験で結果を検証し、全般的な安全性を確認する必要がある」と話している。.なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2019年12月12日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/radiation-news-571/radiation-of-just-part-of-the-breast-can-stop-cancer-s-return-752966.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.