子どもの生命を脅かす自己免疫疾患に関連する抗体を同定したという研究結果を、バルセロナ大学(スペイン)サン・ジョアン・デ・デウ小児病院のThaís Armangue氏らが「Lancet Neurology」2月10日オンライン版に発表した。同氏らは、これらの疾患の早期診断と早期治療につながる成果だと期待を示している。Armangue氏らは今回、2013~2018年に、スペインの40施設から募集した中枢神経系の脱髄疾患および脳炎の小児患者計535人を対象に、前向きの観察研究を実施した。その結果、これらの疾患には、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myelin oligodendrocyte glycoprotein;MOG)に対する抗体が関与していることを突き止めた。.MOG抗体は、脳や視神経、脊髄の神経線維を包み込む保護層(髄鞘)に損傷を与え、これにより神経細胞間の情報伝達ができなくなるとされる。今回の研究では、検査でMOG抗体が陽性であることが判明し、適切な治療を受けた116人の小児の85%が、完全またはほぼ完全に回復したことが分かった。.この発見により、MOG抗体は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)や脳炎など致死性の高い自己免疫疾患と、これまで考えられていた以上に関連している可能性が示唆された。Armangue氏らによると、これらの疾患では、失明や筋力低下、協調運動障害や言語障害といった重度の脳や神経系の症状がみられるという。.また、NMOSDなどの神経疾患群の症状は、多発性硬化症(MS)とよく似ているため、これらを正しく鑑別することは難しいとされる。10年ほど前までは、これらの疾患は非定型のMSと考えられ、その予後や最良の治療法は不明だった。しかし、この10年間に、一部の脱髄疾患にはMOG抗体のバイオマーカーが関連していることが明らかになり、その多くは免疫療法で改善することも分かってきた。一方で、最良の治療法や長期予後については、依然として不明なままだった。.こうした状況の中、今回の研究から、「MOG抗体の検査によって、一部の脱髄疾患や脳炎の患児に対する最も有益な治療法を選択できる可能性が示された」と、Armangue氏らは説明している。.Armangue氏は「今回対象とした患児のうち、特に脳炎の子どもは、研究デザインが前向きなものでなければ見落とされていただろう」と指摘。その上で、「MOG抗体検査が陽性だった小児のほとんどが免疫療法に反応したことを考慮すると、これらの疾患の患児を見つけ出すことは重要だ」と話している。.一方、共同研究者で同大学のJosep Dalmau氏は「小児の脱髄疾患とMSの鑑別診断は難しい場合もあるが、より早期に正確に診断することで、免疫抑制薬による適切な治療につなげることができる。さらに、長期にわたる免疫療法を必要としない疾患の予後改善のためには、免疫療法の継続が必要となる疾患を判別することも重要だ」と述べている。.なお、ピエール・ヴェルテメール神経病院(フランス)のRomain Marignier氏は付随論評で、「MOG抗体関連症候群の病態解明に向けた画期的な研究だ」と、Armangue氏らの研究を評価している。(HealthDay News 2020年2月12日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/immune-disorder-news-404/scientists-spot-antibody-that-might-help-diagnose-treat-autoimmune-disorders-754762.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.