2型糖尿病の治療で既に使われているGLP-1受容体作動薬を、もう1つの研究段階にある薬品と併用すると、膵臓のβ細胞の再生速度が速まるという研究結果が「Science Translational Medicine」2月12日オンライン版に掲載された。血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが低下すると、糖尿病を発症する。インスリンの働きが低下する主要な原因は、インスリンの分泌量そのものが不足することだ。インスリンは膵臓にあるβ細胞で作られており、この細胞が破壊されることが糖尿病発症につながる。.米マウントサイナイ糖尿病・肥満・代謝研究所所長のAndrew Stewart氏らは、β細胞を再生させる薬剤の開発に取り組んできた。「米国では糖尿病患者が3,000万人、糖尿病前症が8,000万人おり、全世界での糖尿病患者は4億人に上る。これら全ての人でβ細胞の数が不足している。もしこれらの人々が十分な数のβ細胞を再生できるようになれば、糖尿病治療は必要なくなる」と同氏は語る。.2015年に同氏らの研究グループは、ハルミンという研究用薬品に膵臓のβ細胞再生作用があることを発見した。しかしハルミンによるβ細胞再生速度は1日2%ほどであった。インスリン分泌がほぼ枯渇する1型糖尿病では、β細胞の90%は失われており、この再生速度では不十分。また、β細胞再生作用のある他の薬剤も見つかったが、それは副作用が大き過ぎた。.今回、同氏らが用いた手法は、ハルミン単独ではなく、他の薬剤と併用するというもの。研究グループでは、さまざまな薬剤の組み合わせの効果を検討したところ、2型糖尿病の治療薬として既に広く用いられているGLP-1受容体作動薬とハルミンの併用で、β細胞の再生が促進されることが判明した。同氏によると「GLP-1受容体作動薬には数種類あるが、どのタイプでもハルミンと併用すると、1日5~8%の速度でβ細胞が再生される」といい、健常者のβ細胞や2型糖尿病患者のβ細胞を使った実験でも同様の結果が得られたという。.さらに、ヒトβ細胞を移植したマウスにこの2剤を投与したところ、β細胞の再生が確認されるとともに、1週間の投与期間中に重篤な短期的副作用は見られなかった。.その一方で、細胞の再生を促すということは、β細胞以外の細胞の再生も促進してしまう懸念がある。また、2剤併用の治療効果がどのぐらい長く続くのか、仮に効果が徐々に低下していくのであれば、追加治療を何回行う必要があるのかという点も明らかにされていない。さらに別の問題として、1型糖尿病では自己免疫によるβ細胞の攻撃が発症後にも続いていて、再生されたβ細胞も破壊されてしまう可能性がある。.しかしStewart氏は、「希望はある。5年前には不可能だと感じていた、β細胞再生速度の大幅な増加が可能になりつつある。事態は前例のないスピードで進展している」と語っている。(HealthDay News 2020年 2月12日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/diabetes-drug-news-179/drug-duo-speeds-regeneration-of-key-cells-lost-in-diabetes-754815.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.