脂質低下薬のスタチン系薬により、一部の前立腺がん患者の生存期間が延長し得る可能性を、米シドニー・キンメルがんセンターのGrace Lu-Yao氏らが報告した。この研究では、腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)値が高く、前立腺がんの悪性度の指標であるグリーソンスコアが8以上の高リスク患者において、スタチン系薬の使用と生存期間の延長に関連が認められたという。研究の詳細は「Cancer Medicine」2月8日オンライン版に発表された。スタチン系薬と糖尿病治療薬のメトホルミンは併用されることが多い。これらの薬剤に抗がん作用があることは、これまでの研究でも示唆されていたが、抗がん作用がより強いのはどちらなのか、また、高リスク前立腺がんに対してどの程度の効果があるのかを検証した研究はなかった。.そこでLu-Yao氏らは、2007~2011年に前立腺がんと診断された高リスク患者1万2,700人のデータを分析した。その結果、因果関係が証明されたわけではないが、スタチン系薬を単独使用していたか、同薬とメトホルミンを併用していた患者において生存率の上昇が認められた。生存期間の中央値は、両薬剤の併用患者で3.9年、スタチン系薬の単独使用患者で3.6年、メトホルミンの単独使用患者で3.1年、いずれも使用していなかった患者で3.1年であった。.全死亡リスクに関しては、スタチン系薬の単独使用患者で11%、同薬とメトホルミンの併用患者で25%のリスク低下が認められた。前立腺がんによる死亡リスクに関しても、スタチン系薬の単独使用患者で20%、同薬とメトホルミンの併用患者で36%のリスク低下が見られた。一方、メトホルミンの単独使用と、全死亡リスクまたは前立腺がんによる死亡リスクとの間に、有意な関連は認められなかった。.また、今回の研究ではアトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンの3種類のスタチン系薬のうちいずれかを使用していた患者では、非使用患者と比べて生存期間の延長が認められた。一方、同じスタチン系薬でもlovastatin(日本国内未承認)については、これら3剤と同様の有益性は認められなかった。.さらに、前立腺がんの進行には男性ホルモンの一種であるテストステロンが重要な役割を果たしているため、男性ホルモン(アンドロゲン)産生を抑制する治療が行われることが多い。この研究では、こうしたアンドロゲン遮断療法を受けていた患者のうち、アトルバスタチン使用者でスタチン系薬非使用者と比べて、前立腺がんの無増悪期間の中央値が長いことが示された。この点についてLu-Yao氏は「明確な理由は分からない」としているが、「アトルバスタチンはバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が最も優れている可能性があり、体内に留まる時間が最も長いことが影響したのではないか」と考察している。.研究チームは、これまでのエビデンスに基づき、スタチン系薬単独使用あるいは同薬とメトホルミンの併用が前立腺がん患者の生存期間に与える影響について検討するため、臨床試験を実施すべきだと主張している。.今回の研究報告を受けて、研究には関与していない米レノックス・ヒル病院のElizabeth Kavaler氏は「有望な結果ではあるが、患者の治療に適用するのは時期尚早だ」と指摘。その一方で「コレステロール値が高いとアンドロゲンの分泌が促され、前立腺がんが増殖しやすくなるが、スタチン系薬がこうしたプロセスを抑制する可能性はある」との見方を示している。(HealthDay News 2020年2月14日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/prostate-cancer-news-106/cholesterol-drugs-might-help-curb-high-risk-prostate-cancers-754792.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
脂質低下薬のスタチン系薬により、一部の前立腺がん患者の生存期間が延長し得る可能性を、米シドニー・キンメルがんセンターのGrace Lu-Yao氏らが報告した。この研究では、腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)値が高く、前立腺がんの悪性度の指標であるグリーソンスコアが8以上の高リスク患者において、スタチン系薬の使用と生存期間の延長に関連が認められたという。研究の詳細は「Cancer Medicine」2月8日オンライン版に発表された。スタチン系薬と糖尿病治療薬のメトホルミンは併用されることが多い。これらの薬剤に抗がん作用があることは、これまでの研究でも示唆されていたが、抗がん作用がより強いのはどちらなのか、また、高リスク前立腺がんに対してどの程度の効果があるのかを検証した研究はなかった。.そこでLu-Yao氏らは、2007~2011年に前立腺がんと診断された高リスク患者1万2,700人のデータを分析した。その結果、因果関係が証明されたわけではないが、スタチン系薬を単独使用していたか、同薬とメトホルミンを併用していた患者において生存率の上昇が認められた。生存期間の中央値は、両薬剤の併用患者で3.9年、スタチン系薬の単独使用患者で3.6年、メトホルミンの単独使用患者で3.1年、いずれも使用していなかった患者で3.1年であった。.全死亡リスクに関しては、スタチン系薬の単独使用患者で11%、同薬とメトホルミンの併用患者で25%のリスク低下が認められた。前立腺がんによる死亡リスクに関しても、スタチン系薬の単独使用患者で20%、同薬とメトホルミンの併用患者で36%のリスク低下が見られた。一方、メトホルミンの単独使用と、全死亡リスクまたは前立腺がんによる死亡リスクとの間に、有意な関連は認められなかった。.また、今回の研究ではアトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンの3種類のスタチン系薬のうちいずれかを使用していた患者では、非使用患者と比べて生存期間の延長が認められた。一方、同じスタチン系薬でもlovastatin(日本国内未承認)については、これら3剤と同様の有益性は認められなかった。.さらに、前立腺がんの進行には男性ホルモンの一種であるテストステロンが重要な役割を果たしているため、男性ホルモン(アンドロゲン)産生を抑制する治療が行われることが多い。この研究では、こうしたアンドロゲン遮断療法を受けていた患者のうち、アトルバスタチン使用者でスタチン系薬非使用者と比べて、前立腺がんの無増悪期間の中央値が長いことが示された。この点についてLu-Yao氏は「明確な理由は分からない」としているが、「アトルバスタチンはバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が最も優れている可能性があり、体内に留まる時間が最も長いことが影響したのではないか」と考察している。.研究チームは、これまでのエビデンスに基づき、スタチン系薬単独使用あるいは同薬とメトホルミンの併用が前立腺がん患者の生存期間に与える影響について検討するため、臨床試験を実施すべきだと主張している。.今回の研究報告を受けて、研究には関与していない米レノックス・ヒル病院のElizabeth Kavaler氏は「有望な結果ではあるが、患者の治療に適用するのは時期尚早だ」と指摘。その一方で「コレステロール値が高いとアンドロゲンの分泌が促され、前立腺がんが増殖しやすくなるが、スタチン系薬がこうしたプロセスを抑制する可能性はある」との見方を示している。(HealthDay News 2020年2月14日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/prostate-cancer-news-106/cholesterol-drugs-might-help-curb-high-risk-prostate-cancers-754792.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.