3月に入り春の学術集会開催シーズンを迎えるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として2月26日、政府からイベント自粛要請が出されたこともあり、開催延期とする学会が相次いでいる。こうした中、各医学系学会は、主にWebを通じて学会員および患者に向けて対応をアナウンスしている。日本ウイルス学会は2月10日、「新型コロナウイルス感染症について」という記事を掲載した。それによると、今回発生したウイルス「2019-nCoV」は、2002年に発生したSARSウイルスの遺伝子と相同性が高く(約80%)、SARSウイルスと同じ受容体を介してヒトの細胞に吸着・侵入するため、SARS流行時に得られた知見の応用が可能という。また、2019-nCoVはエンベロープウイルスというタイプのウイルスで、これはアルコールなどで感染力を失うため、基本的な感染症予防対策は重要だが必要以上に恐れる必要はないとしている。.COVID-19は、高齢者や基礎疾患のある人は重症化ハイリスクとされる。その基礎疾患の1つである糖尿病に関しては、日本糖尿病学会が2月18日にQ&Aを公開した。医療者向けには「米疾病対策センター(CDC)のガイダンス(12日付)では、基礎疾患がある場合には肺炎への進行が起こる可能性を念頭に置き治療にあたるのが望ましいとされている。糖質コルチコイドの使用はウイルス感染を遷延させる可能性が報告されており、使用意義が十分ある場合を除き避けるべきで、使用する場合は血糖値のモニターと治療に配慮すべき」とし、患者向けにはインフルエンザなど他の感染症と同様の対策を呼び掛けている。.また、2月21日には日本腎臓学会が感染予防対策のQ&Aを公開したほか、翌22日には日本リウマチ学会が、免疫抑制薬や生物学的製剤を使用中の患者に向け、「現時点ではそれらの薬剤を用いている患者はCOVID-19にかかりやすいというデータはない。一方、COVID-19の悪化には肺における過剰な免疫反応が関与している可能性が考えられる。よって原則として同じ用量で使い続け、感染症の症状がある場合は主治医に相談を」と解説している。.一方、医療者向けには日本医学放射線学会が2月14日、COVID-19関連肺炎の画像所見が掲載されておりWeb閲覧可能な論文リストを公開した。.日本感染症学会/日本環境感染学会は、「水際対策から感染蔓延期に向けて」という2月21日付の記事を掲載。「致死率は依然としてSARSより低いものの高齢者・基礎疾患保有者における肺炎の合併は生命を脅かす重篤な状態につながる可能性を高める」とし、医療者へ「軽症例はインフルエンザに準じた対応、重症例を見逃さない、遺伝子検査は入院が必要な肺炎でウイルス性肺炎を疑う場合に実施」などと解説している。.日本透析医学会は、1月31日の段階で「いまだ詳細は不明」としつつ、感染予防対策の徹底を呼び掛け、その後も情報更新を続けている。また日本透析医会は2月4日、透析患者におけるCOVID-19のスクリーニングなどの対策を公開した。.このほか日本内科学会では「日本内科学会雑誌」の109巻3号(3月10日発行予定)で緊急掲載予定のCOVID-19関連原稿をWeb先行公開している。(HealthDay News 2020年3月2日).Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.