人工弁置換術を受けた先天性心疾患の小児では通常、大人になるまで複数回にわたり開心術を受けて弁を交換する必要がある。しかし、米ボストン小児病院心臓血管外科のPedro del Nido氏が率いる研究チームが、大人になるまで継続使用できる新たな拡張型人工弁を開発したことを「Science Translational Medicine」2月19日オンライン版で報告した。この新しい人工弁を使えば、大人になるまで通常受けるはずの開心術を回避できる可能性があるという。毎年、心臓の弁に異常を持って生まれてくる児は世界中で33万人以上、また、弁置換術が必要となるリウマチ性心疾患の罹患者数は数百万人にも上るという。現在使われている人工弁には、一方向にのみ血液を送るための小さい弁が付いていて、これにより血液を正しい方向に流している。人工弁の形状を変えることはできないため、小児に弁を埋め込んだ場合、体の成長に合わせて数年おきに大きなサイズのものに取り替える必要がある。例えば、2歳前に最初の人工弁を入れた場合、大人になるまでに開心術を最大5回も受けることになる。.一方、静脈の弁は、立つ・座るなどの姿勢に応じ、その形状を大きく変える。今回新たにデザインされた人工弁は、この静脈弁に着想を得て作り出された。弁は、ステンレス鋼のステントに付けた高分子素材の2枚の弁葉から成り、患者の成長に応じて、低侵襲治療であるバルーンカテーテルを用いて拡張することができる。.血管を流れる血液量や血管の太さは常に変化しているが、それが大きく変化しても、静脈弁はきちんと機能する。実験室での実験や子羊を用いた試験で、今回作成した人工弁も、大きさや形状の変化に対して同じように適応すること、つまり、体の成長や心臓の構造上の不均一さに適応できることが示された。.研究チームによると、新しい人工弁は円滑な血流を促すような設計になっているため、既存の人工弁でしばしば起こる血栓形成のリスクが減少するという。ヒツジにこの人工弁を埋め込んで10週間以上にわたって観察した試験では、人工弁置換術を受けた患者に通常投与するような抗凝固薬を用いなくても、血栓形成は認められなかった。.この結果を受けて、研究論文の上席著者であるdel Nido氏は「この新しい人工弁を用いた臨床試験をすぐにでも行いたい」と述べている。動物実験と同じ結果が人間でも得られるとは限らないものの、人を対象にした臨床試験は1~2年以内に実施される可能性があるという。同氏は「我々が行った前臨床試験の結果が人を対象にした臨床試験でも有効であれば、この分野に非常に大きな変化をもたらすことになる」と期待を寄せている。(HealthDay News 2020年2月19日).https://consumer.healthday.com/disabilities-information-11/misc-birth-defect-news-63/artificial-heart-valve-would-grow-with-kids-cutting-need-for-repeat-surgeries-754975.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.