パーキンソン病患者に対する理学療法として卓球が有望である可能性が、福岡大学脳神経内科の井上賢一氏らが実施した小規模な予備研究で示された。パーキンソン病患者に6カ月間、卓球エクササイズプログラムを実施したところ、さまざまな症状に有意な改善が見られたという。この研究結果は、第72回米国神経学会議(AAN 2020、4月25日~5月1日、カナダ、トロント)で発表される予定。パーキンソン病は、ドーパミンと呼ばれる脳内の神経伝達物質が減少することで生じる運動障害疾患で、振戦、筋強剛、動作緩慢、姿勢障害、歩行障害、バランス障害、発話の変化などが見られる。.井上氏は今回の研究の背景について、「卓球は一種の有酸素運動であり、一般の人々においても、目と手の協調関係や反射を向上させ、脳に刺激を与えることが明らかにされている。我々は、パーキンソン病患者においても卓球により同様のベネフィットが得られ、それが一部の症状の緩和につながるのかに興味があった」と説明している。.井上氏らが対象としたのは、診断から平均7年が経過した軽度から中等度のパーキンソン病患者12人(平均年齢73歳)。対象者は、研究開始時にパーキンソン病の症状とその程度に関する評価を受けた。その後、福岡大学スポーツ科学部の卓球熟練者たちが考案した、パーキンソン病患者向けの卓球プログラムを、週に1回、6カ月間行った。プログラムは1セッション当たり5時間で、ストレッチ運動の後、卓球熟練者の指導のもと卓球を行うという内容だった。.井上氏らが、卓球プログラムの開始後3カ月の時点と研究終了時(6カ月後)に、患者の症状について評価したところ、いずれの時点においても、発話、書字、着替え、起床、歩行、表情、姿勢、筋強剛、動作緩慢、振戦に有意な改善が見られた。例えば、被験者は研究開始時には平均2回以上、試みないとベッドから出られなかったのに対し、研究終了時には平均1回の試みでベッドから出ることができるようになっていた。また、頸部強剛の平均スコアは、研究開始時には「中等度の強剛」を表すスコア3であったのに対し、研究終了時には「軽度の強剛」を表すスコア2に改善していた。.ただし、この研究では、卓球エクササイズを行った患者と行っていない患者を比較していない上に、患者を評価した専門家が一人だけであった。井上氏らはこれらの点を研究の限界として挙げた上で、「小規模研究とはいえ、卓球という比較的安価な治療法でパーキンソン病の症状をいくらか緩和できる可能性を示す、励みになる結果が得られた」と述べている。同氏らは、今回得られた知見を確認すべく、より規模の大きな研究を計画中であるとしている。.なお、学会発表される研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般的に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2020年2月26日).https://consumer.healthday.com/fitness-information-14/exercise-ping-pong-or-table-tennis-267/paddles-against-parkinson-s-ping-pong-might-ease-symptoms-755173.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.