慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪に対しては、抗菌薬やステロイド薬といった既に広く使用されている薬剤が最善であると結論付けたエビデンスレビューが「Annals of Internal Medicine」2月24日オンライン版に発表された。このレビューの筆頭著者である米メイヨー・クリニックのClaudia Dobler氏は「COPDに対するより新しい治療法の推奨を支持する十分なエビデンスはない」としている。COPDは、長期にわたる刺激性物質への曝露により肺や気道が損傷されることで発症する疾患で、病状の進行に伴い徐々に息苦しさが増す。主要なリスク因子は喫煙で、COPD患者の4人中3人は喫煙者であるか、過去に喫煙歴がある。米国立心肺血液研究所(NHLBI)によると、米国のCOPD患者数は約1600万人に上り、死因の第4位を占める。.Dobler氏らは今回、COPDの増悪による呼吸困難に対してどの薬剤が最も有効であるかを明らかにするため、外来または入院(集中治療室を除く)でCOPD増悪に対する治療を受けた成人患者を対象にした68件の臨床試験のデータを分析した。その結果、抗菌薬を3~14日間投与された群ではプラセボ投与群や抗菌薬を用いずに管理された群に比べて、増悪の重症度とは独立して、投与完了時の寛解率が高く(オッズ比2.03)、治療不成功率も低かった(オッズ比0.54)。また、9~56日間ステロイドの全身投与を受けた群では、プラセボ投与群と比べて、投与完了時の治療不成功率が低かった(オッズ比0.01)。.この結果についてDobler氏は「COPD患者では、病状が悪化すると肺が細菌に感染しやすくなるため、気道を塞ぐ細菌感染に対する治療を行うのは理に適っている」と説明。一方、ステロイド薬については「気道を収縮させる炎症を抑制することで息苦しさを軽減する効果がある」としている。.その一方で、COPDの増悪時の呼吸困難に有用であるとされる短時間作用型気管支拡張薬(いわゆるレスキュー吸入器)をはじめとするその他の薬剤については、研究データが少ないことが明らかになった。この点についてDobler氏は「短時間作用型気管支拡張薬で息切れが改善することは臨床経験を通じて分かっているし、実際に多くの患者で使用されている。しかし、2種類ある同薬剤のうち、有効性が高いのはどちらなのか、あるいは単剤で使用するよりも2剤を併用した方が良いのかについて参考になるデータは十分にないことが分かった。これには我々も驚いた」と述べている。.今回のレビューでは、抗菌薬とステロイド薬はいずれも入院を必要とするほど深刻ではない状態のCOPDの増悪に有効であることが確認された。Dobler氏は「今回得られた知見は、薬剤耐性菌の世界的な増加が問題視される中、抗菌薬処方に頭を悩ませている医師たちを安堵させるはずだ」との見方を示し、「医師がCOPDの増悪に対して抗菌薬を使用することに罪悪感を覚える必要はないことを示した結果だといえる」と話している。.さらに、Dobler氏らは「今回のエビデンスレビューによって、COPDの治療があまり進歩していないことが浮き彫りになった」と指摘。その上で「現時点では、COPDは治療法が限られた疾患だといえる。COPD対策として今我々ができるのは、決して喫煙しないこと、また喫煙している人は禁煙することしかない」と述べている。(HealthDay News 2020年2月25日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/copd-966/what-works-best-to-ease-flare-ups-of-copd-755180.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪に対しては、抗菌薬やステロイド薬といった既に広く使用されている薬剤が最善であると結論付けたエビデンスレビューが「Annals of Internal Medicine」2月24日オンライン版に発表された。このレビューの筆頭著者である米メイヨー・クリニックのClaudia Dobler氏は「COPDに対するより新しい治療法の推奨を支持する十分なエビデンスはない」としている。COPDは、長期にわたる刺激性物質への曝露により肺や気道が損傷されることで発症する疾患で、病状の進行に伴い徐々に息苦しさが増す。主要なリスク因子は喫煙で、COPD患者の4人中3人は喫煙者であるか、過去に喫煙歴がある。米国立心肺血液研究所(NHLBI)によると、米国のCOPD患者数は約1600万人に上り、死因の第4位を占める。.Dobler氏らは今回、COPDの増悪による呼吸困難に対してどの薬剤が最も有効であるかを明らかにするため、外来または入院(集中治療室を除く)でCOPD増悪に対する治療を受けた成人患者を対象にした68件の臨床試験のデータを分析した。その結果、抗菌薬を3~14日間投与された群ではプラセボ投与群や抗菌薬を用いずに管理された群に比べて、増悪の重症度とは独立して、投与完了時の寛解率が高く(オッズ比2.03)、治療不成功率も低かった(オッズ比0.54)。また、9~56日間ステロイドの全身投与を受けた群では、プラセボ投与群と比べて、投与完了時の治療不成功率が低かった(オッズ比0.01)。.この結果についてDobler氏は「COPD患者では、病状が悪化すると肺が細菌に感染しやすくなるため、気道を塞ぐ細菌感染に対する治療を行うのは理に適っている」と説明。一方、ステロイド薬については「気道を収縮させる炎症を抑制することで息苦しさを軽減する効果がある」としている。.その一方で、COPDの増悪時の呼吸困難に有用であるとされる短時間作用型気管支拡張薬(いわゆるレスキュー吸入器)をはじめとするその他の薬剤については、研究データが少ないことが明らかになった。この点についてDobler氏は「短時間作用型気管支拡張薬で息切れが改善することは臨床経験を通じて分かっているし、実際に多くの患者で使用されている。しかし、2種類ある同薬剤のうち、有効性が高いのはどちらなのか、あるいは単剤で使用するよりも2剤を併用した方が良いのかについて参考になるデータは十分にないことが分かった。これには我々も驚いた」と述べている。.今回のレビューでは、抗菌薬とステロイド薬はいずれも入院を必要とするほど深刻ではない状態のCOPDの増悪に有効であることが確認された。Dobler氏は「今回得られた知見は、薬剤耐性菌の世界的な増加が問題視される中、抗菌薬処方に頭を悩ませている医師たちを安堵させるはずだ」との見方を示し、「医師がCOPDの増悪に対して抗菌薬を使用することに罪悪感を覚える必要はないことを示した結果だといえる」と話している。.さらに、Dobler氏らは「今回のエビデンスレビューによって、COPDの治療があまり進歩していないことが浮き彫りになった」と指摘。その上で「現時点では、COPDは治療法が限られた疾患だといえる。COPD対策として今我々ができるのは、決して喫煙しないこと、また喫煙している人は禁煙することしかない」と述べている。(HealthDay News 2020年2月25日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/copd-966/what-works-best-to-ease-flare-ups-of-copd-755180.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.