健康への効果を期待して、ω-3脂肪酸が豊富な魚油サプリメントを摂取している人は少なくない。そうした中、英イースト・アングリア大学のLee Hooper氏らは、ω-3脂肪酸サプリメントを摂取すると心疾患リスクはわずかに低下するが、がんの予防効果はないとするメタ解析結果を発表した。ω-3脂肪酸サプリメントの摂取量を増やした男性では、前立腺がんリスクがわずかに上昇したという。これらの結果は2月29日付の「British Journal of Cancer」と「Cochrane Database of Systematic Reviews」に発表された。ω-3脂肪酸には、サーモンなどの脂肪の多い魚に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などがある。がんや心筋梗塞、脳卒中の予防効果を期待して、市販のω-3脂肪酸サプリメントを使用する人も多い。.Hooper氏らは今回、ω-3脂肪酸サプリメントの健康効果を調べるため、長鎖ω-3脂肪酸、α-リノレン酸、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取量とがんリスクの関連について検討した47件の臨床試験(計10万8,194人が参加)と、心血管イベントとの関連について検討した86件(計16万2,796人が参加)の臨床試験のデータを解析。ω-3脂肪酸などのサプリメントの摂取量を増やした場合と通常の摂取量を続けた場合を比較した。エンドポイントは全死亡および、がんまたは心疾患による死亡、がん、心筋梗塞、脳卒中の新規診断とした。.その結果、ω-3脂肪酸サプリメントの摂取量を増やすと心疾患による死亡リスクは低下した一方、前立腺がんリスクがわずかに上昇することが分かった。ただし、これらの有益性と有害性はいずれもわずかなものだった。例えば、1,000人がサプリメントを約4年間摂取すると3人の心疾患死を予防でき、6人の心筋梗塞などの心疾患を予防でき、3人の前立腺がん発症につながると推定された。.Hooper氏は「数年間にわたりω-3脂肪酸サプリメントを摂取すると心疾患リスクはある程度低下するが、一部のがんのリスクはわずかに上昇する。そのため、全体的な魚油サプリメントの健康効果は極めて小さい」と述べている。.これらの研究には関与していない米ノースウェル・ヘルス傘下のサンドラ・アトラス・ベイス心臓病院のGuy Mintz氏は、ω-3脂肪酸のサプリメントは万能薬ではないとするHooper氏らの主張に同意している。Mintz氏は「ω-3脂肪酸などの魚油を摂取するよりも、質の良い食生活と定期的な運動、十分な睡眠といった健康的な生活習慣を続ける方が、がんの予防効果は高い」と話している。ただし、同氏は、心血管に対する魚油、特にω-3脂肪酸の処方薬の心血管への有益性については否定できないとしている。.なお、Hooper氏は「ω-3脂肪酸に関するエビデンスのほとんどは魚油サプリメントを用いた臨床試験に基づくもので、長鎖ω-3脂肪酸が豊富な脂肪の多い魚の健康効果については明らかになっていない」と指摘。「脂肪の多い魚は、タンパク質が豊富でエネルギー源となるだけでなく、セレンやヨウ素、ビタミンD、カルシウムなどの重要な栄養素も多く、栄養価の高い食品だ」と説明している。.一方、前出のMintz氏は、2019年には、高純度EPA製剤のVascepa(バスセパ;商品名、日本国内未承認)とスタチンを併用すると、中性脂肪が高い患者の心血管疾患リスクが25%低下したとする臨床試験の結果が「New England Journal of Medicine」(2019; 380: 11-22)に発表されたと指摘。通常の魚油サプリメントと違ってVascepaでこのような大きな効果が認められた理由については、「炎症やコレステロール値に対する作用による可能性がある」と話している。(HealthDay News 2020年3月3日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/nutritional-supplements-health-news-504/fish-oil-may-help-prevent-heart-disease-but-not-cancer-study-755362.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
健康への効果を期待して、ω-3脂肪酸が豊富な魚油サプリメントを摂取している人は少なくない。そうした中、英イースト・アングリア大学のLee Hooper氏らは、ω-3脂肪酸サプリメントを摂取すると心疾患リスクはわずかに低下するが、がんの予防効果はないとするメタ解析結果を発表した。ω-3脂肪酸サプリメントの摂取量を増やした男性では、前立腺がんリスクがわずかに上昇したという。これらの結果は2月29日付の「British Journal of Cancer」と「Cochrane Database of Systematic Reviews」に発表された。ω-3脂肪酸には、サーモンなどの脂肪の多い魚に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などがある。がんや心筋梗塞、脳卒中の予防効果を期待して、市販のω-3脂肪酸サプリメントを使用する人も多い。.Hooper氏らは今回、ω-3脂肪酸サプリメントの健康効果を調べるため、長鎖ω-3脂肪酸、α-リノレン酸、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取量とがんリスクの関連について検討した47件の臨床試験(計10万8,194人が参加)と、心血管イベントとの関連について検討した86件(計16万2,796人が参加)の臨床試験のデータを解析。ω-3脂肪酸などのサプリメントの摂取量を増やした場合と通常の摂取量を続けた場合を比較した。エンドポイントは全死亡および、がんまたは心疾患による死亡、がん、心筋梗塞、脳卒中の新規診断とした。.その結果、ω-3脂肪酸サプリメントの摂取量を増やすと心疾患による死亡リスクは低下した一方、前立腺がんリスクがわずかに上昇することが分かった。ただし、これらの有益性と有害性はいずれもわずかなものだった。例えば、1,000人がサプリメントを約4年間摂取すると3人の心疾患死を予防でき、6人の心筋梗塞などの心疾患を予防でき、3人の前立腺がん発症につながると推定された。.Hooper氏は「数年間にわたりω-3脂肪酸サプリメントを摂取すると心疾患リスクはある程度低下するが、一部のがんのリスクはわずかに上昇する。そのため、全体的な魚油サプリメントの健康効果は極めて小さい」と述べている。.これらの研究には関与していない米ノースウェル・ヘルス傘下のサンドラ・アトラス・ベイス心臓病院のGuy Mintz氏は、ω-3脂肪酸のサプリメントは万能薬ではないとするHooper氏らの主張に同意している。Mintz氏は「ω-3脂肪酸などの魚油を摂取するよりも、質の良い食生活と定期的な運動、十分な睡眠といった健康的な生活習慣を続ける方が、がんの予防効果は高い」と話している。ただし、同氏は、心血管に対する魚油、特にω-3脂肪酸の処方薬の心血管への有益性については否定できないとしている。.なお、Hooper氏は「ω-3脂肪酸に関するエビデンスのほとんどは魚油サプリメントを用いた臨床試験に基づくもので、長鎖ω-3脂肪酸が豊富な脂肪の多い魚の健康効果については明らかになっていない」と指摘。「脂肪の多い魚は、タンパク質が豊富でエネルギー源となるだけでなく、セレンやヨウ素、ビタミンD、カルシウムなどの重要な栄養素も多く、栄養価の高い食品だ」と説明している。.一方、前出のMintz氏は、2019年には、高純度EPA製剤のVascepa(バスセパ;商品名、日本国内未承認)とスタチンを併用すると、中性脂肪が高い患者の心血管疾患リスクが25%低下したとする臨床試験の結果が「New England Journal of Medicine」(2019; 380: 11-22)に発表されたと指摘。通常の魚油サプリメントと違ってVascepaでこのような大きな効果が認められた理由については、「炎症やコレステロール値に対する作用による可能性がある」と話している。(HealthDay News 2020年3月3日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/nutritional-supplements-health-news-504/fish-oil-may-help-prevent-heart-disease-but-not-cancer-study-755362.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.