新型コロナウイルスの感染拡大に世界中が注目する中、古くからある感染症である「結核」の治療を大きく変革し得る、画期的な臨床試験の結果が明らかになった。ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)のFrancesca Conradie氏らが実施したこの試験から、治療薬が効きにくい多剤耐性結核や、多剤耐性結核のなかでも致死率が高く、強力な抗結核薬にも耐性を示す超多剤耐性結核の患者に対して、ベダキリン、リネゾリド、pretomanid(プレトマニド、日本国内未承認)の3剤併用により90%もの治癒率が得られたことが分かった。試験結果の詳細は「New England Journal of Medicine」3月5日号に発表された。結核は結核菌による細菌感染症で、高所得国ではあまり見られなくなっている。米疾病対策センター(CDC)によると、米国で2018年に報告された結核患者数は約9,000人にとどまっている。しかし、世界的に見ると、年間約1000万人が結核にかかり、死亡者は150万人に上ると推定されている。世界保健機関(WHO)によれば、結核は感染症による死因の多くを占め、結核による死亡者数はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)/AIDS(後天性免疫不全症候群)による死亡者数を上回っているという。.結核は、適切な治療を受ければ治すことができる。しかし、WHOによると、2018年に報告された結核患者のうち約40万人は、2剤以上の抗結核薬に耐性を示す「多剤耐性結核」の患者だった。さらに、そのうちの一部を、より薬剤耐性が進んだ「超多剤耐性結核」の患者が占めていた。.今回の臨床試験は、38人の多剤耐性結核患者と71人の超多剤耐性結核患者、計109人の薬剤耐性結核患者を対象に実施された。対象患者の半数はHIVにも感染していた。対象患者には、ベダキリン、リネゾリド、pretomanidの3剤の経口薬による併用療法を行った。このうちベダキリンとリネゾリドは多剤耐性結核の治療薬として長年使用されてきたものであり、pretomanidは、非営利団体のTBアライアンスによって新たに開発された薬剤である。.対象患者には、これらの経口薬を6カ月間服用してもらった。その結果、3剤併用レジメンによって、患者の90%(98人)で治療終了から6カ月後の時点で症状が消失し、結核菌の検査でも陰性が確認された。残る11人のうち6人は治療中に死亡し、1人が治療完了後に死亡した(原因は不明)。.なお、この試験結果を受け、米食品医薬品局(FDA)はpretomanidをベダキリンおよびリネゾリドとの併用薬として承認している。.専門家の1人で、米国感染症学会(IDSA)のスポークスパーソンを務めるRichard Murphy氏は、「これほどの治癒率が得られたことは、驚くべき結果だ」とコメント。この試験を率いたConradie氏も、この結果について「驚くべきものだ」としている。同氏らは当初、対象患者の半数が治療で良好な転帰をとることを期待していたが、期待を大幅に上回る10人中9人が日常生活に戻ることができたという。.ただし、対象患者はまだ治癒したと判断できる状態ではないため、Conradie氏らは引き続き患者を追跡している。また、南アフリカ以外の国の患者にもこの試験結果が当てはまるかどうかは明らかになっておらず、さらに、併用療法には吐き気や頭痛、貧血、視力障害などの副作用があるなど、解決すべき課題もあるという。(HealthDay News 2020年3月4日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/tuberculosis-news-683/new-weapon-in-fight-against-multidrug-resistant-tb-755441.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
新型コロナウイルスの感染拡大に世界中が注目する中、古くからある感染症である「結核」の治療を大きく変革し得る、画期的な臨床試験の結果が明らかになった。ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)のFrancesca Conradie氏らが実施したこの試験から、治療薬が効きにくい多剤耐性結核や、多剤耐性結核のなかでも致死率が高く、強力な抗結核薬にも耐性を示す超多剤耐性結核の患者に対して、ベダキリン、リネゾリド、pretomanid(プレトマニド、日本国内未承認)の3剤併用により90%もの治癒率が得られたことが分かった。試験結果の詳細は「New England Journal of Medicine」3月5日号に発表された。結核は結核菌による細菌感染症で、高所得国ではあまり見られなくなっている。米疾病対策センター(CDC)によると、米国で2018年に報告された結核患者数は約9,000人にとどまっている。しかし、世界的に見ると、年間約1000万人が結核にかかり、死亡者は150万人に上ると推定されている。世界保健機関(WHO)によれば、結核は感染症による死因の多くを占め、結核による死亡者数はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)/AIDS(後天性免疫不全症候群)による死亡者数を上回っているという。.結核は、適切な治療を受ければ治すことができる。しかし、WHOによると、2018年に報告された結核患者のうち約40万人は、2剤以上の抗結核薬に耐性を示す「多剤耐性結核」の患者だった。さらに、そのうちの一部を、より薬剤耐性が進んだ「超多剤耐性結核」の患者が占めていた。.今回の臨床試験は、38人の多剤耐性結核患者と71人の超多剤耐性結核患者、計109人の薬剤耐性結核患者を対象に実施された。対象患者の半数はHIVにも感染していた。対象患者には、ベダキリン、リネゾリド、pretomanidの3剤の経口薬による併用療法を行った。このうちベダキリンとリネゾリドは多剤耐性結核の治療薬として長年使用されてきたものであり、pretomanidは、非営利団体のTBアライアンスによって新たに開発された薬剤である。.対象患者には、これらの経口薬を6カ月間服用してもらった。その結果、3剤併用レジメンによって、患者の90%(98人)で治療終了から6カ月後の時点で症状が消失し、結核菌の検査でも陰性が確認された。残る11人のうち6人は治療中に死亡し、1人が治療完了後に死亡した(原因は不明)。.なお、この試験結果を受け、米食品医薬品局(FDA)はpretomanidをベダキリンおよびリネゾリドとの併用薬として承認している。.専門家の1人で、米国感染症学会(IDSA)のスポークスパーソンを務めるRichard Murphy氏は、「これほどの治癒率が得られたことは、驚くべき結果だ」とコメント。この試験を率いたConradie氏も、この結果について「驚くべきものだ」としている。同氏らは当初、対象患者の半数が治療で良好な転帰をとることを期待していたが、期待を大幅に上回る10人中9人が日常生活に戻ることができたという。.ただし、対象患者はまだ治癒したと判断できる状態ではないため、Conradie氏らは引き続き患者を追跡している。また、南アフリカ以外の国の患者にもこの試験結果が当てはまるかどうかは明らかになっておらず、さらに、併用療法には吐き気や頭痛、貧血、視力障害などの副作用があるなど、解決すべき課題もあるという。(HealthDay News 2020年3月4日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/tuberculosis-news-683/new-weapon-in-fight-against-multidrug-resistant-tb-755441.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.