慢性炎症性疾患の治療でステロイド薬を使用している人は高血圧発症のリスクが高いことが、英リーズ大学医療健康学部のPaul Stewart氏らの研究で示された。炎症性腸疾患(IBD)や関節リウマチ(RA)といった慢性炎症性疾患の治療では、高用量のステロイド薬が長期使用されることが多いが、この研究では、解析対象とした慢性炎症性疾患の患者の約3分の1が高血圧を発症していたという。Stewart氏は「ステロイド薬はその優れた炎症抑制作用により多くの患者の命を救うが、副作用もある。その代表例が高血圧だ。高血圧は、心疾患や脳卒中、早期死亡の重大なリスク因子である」と指摘している。研究結果の詳細は「Canadian Medical Association Journal」3月23日号に発表された。Stewart氏らは今回、イングランドの一般医389人から集めた1998~2017年の電子カルテデータを解析した。解析対象となった患者(総計7万1,642人)は、高血圧の診断歴がない18歳以上の成人(研究登録時の平均年齢は50.5歳、62%が女性)で、IBD、RA、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、血管炎のいずれかの診断を受けていた。.解析の結果、ステロイド薬による治療が最も高頻度に行われていた疾患はIBD(35.1%)であり、RA(28.2%)、リウマチ性多発筋痛症(22.9%)がそれに続くことが分かった。中央値で6.5年に及ぶ追跡期間中に、2万4,896人(34.8%)の患者が高血圧を発症していた。高血圧の罹患率は全体で1,000人年当たり46.7であった。高血圧発症のリスクは、ステロイド薬の使用期間が長いほど上昇し、ステロイド非使用者では罹患率が1,000人年当たり44.4であったのに対し、プレドニゾロン換算累積投与量が>0~959.9mgの患者では45.3、960~3,054.9mgの患者では49.3、≧3,055mgの患者では55.6であった。.こうした結果についてStewart氏は、「医師は、もっと血圧の測定値に注意を払い、ステロイド薬は、最小有効量をできる限り短い期間で処方すべきことを、あらためて示したものだ」と説明。さらに、ステロイド薬を長期使用している患者に対しては、「その必要性や減量の可否について医師に尋ねるべきだ」と助言している。ただし、ステロイド薬の長期使用により生じるリスクは、高血圧を治療することで低下させることは可能だとしている。.Stewart氏らはこの研究で、高血圧を発症した慢性炎症性疾患の患者に共通する要因を突き止めることはできなかった。そのため、肥満などの高血圧のリスク因子が関与しているかどうかについては、明らかになっていない。しかし、同氏は「ステロイド薬がもたらす影響に、こうした高血圧のリスク因子が関連しているとは考えにくい」と話している。ただし、今回の研究では因果関係が証明されたわけではなく、関連が認められたに過ぎない。.Stewart氏らの報告を受けて、この研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院の循環器医Satjit Bhusri氏は「高血圧は無症状のまま経過し、心筋梗塞や脳卒中を発症して初めて気付くことも多いことから、"サイレントキラー"とも呼ばれている。ステロイド薬の長期使用によって体のストレス反応が高まり、血圧が上昇する」と説明。その上で、「ステロイド薬を長期使用している全ての患者に高血圧のスクリーニングを実施し、心疾患のリスク・プロファイルを評価することが重要だ」との見解を示している。(HealthDay News 2020年3月23日).https://consumer.healthday.com/men-s-health-information-24/steroid-health-news-637/taking-steroids-for-rheumatoid-arthritis-ibd-your-odds-for-hypertension-may-rise-756005.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
慢性炎症性疾患の治療でステロイド薬を使用している人は高血圧発症のリスクが高いことが、英リーズ大学医療健康学部のPaul Stewart氏らの研究で示された。炎症性腸疾患(IBD)や関節リウマチ(RA)といった慢性炎症性疾患の治療では、高用量のステロイド薬が長期使用されることが多いが、この研究では、解析対象とした慢性炎症性疾患の患者の約3分の1が高血圧を発症していたという。Stewart氏は「ステロイド薬はその優れた炎症抑制作用により多くの患者の命を救うが、副作用もある。その代表例が高血圧だ。高血圧は、心疾患や脳卒中、早期死亡の重大なリスク因子である」と指摘している。研究結果の詳細は「Canadian Medical Association Journal」3月23日号に発表された。Stewart氏らは今回、イングランドの一般医389人から集めた1998~2017年の電子カルテデータを解析した。解析対象となった患者(総計7万1,642人)は、高血圧の診断歴がない18歳以上の成人(研究登録時の平均年齢は50.5歳、62%が女性)で、IBD、RA、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、血管炎のいずれかの診断を受けていた。.解析の結果、ステロイド薬による治療が最も高頻度に行われていた疾患はIBD(35.1%)であり、RA(28.2%)、リウマチ性多発筋痛症(22.9%)がそれに続くことが分かった。中央値で6.5年に及ぶ追跡期間中に、2万4,896人(34.8%)の患者が高血圧を発症していた。高血圧の罹患率は全体で1,000人年当たり46.7であった。高血圧発症のリスクは、ステロイド薬の使用期間が長いほど上昇し、ステロイド非使用者では罹患率が1,000人年当たり44.4であったのに対し、プレドニゾロン換算累積投与量が>0~959.9mgの患者では45.3、960~3,054.9mgの患者では49.3、≧3,055mgの患者では55.6であった。.こうした結果についてStewart氏は、「医師は、もっと血圧の測定値に注意を払い、ステロイド薬は、最小有効量をできる限り短い期間で処方すべきことを、あらためて示したものだ」と説明。さらに、ステロイド薬を長期使用している患者に対しては、「その必要性や減量の可否について医師に尋ねるべきだ」と助言している。ただし、ステロイド薬の長期使用により生じるリスクは、高血圧を治療することで低下させることは可能だとしている。.Stewart氏らはこの研究で、高血圧を発症した慢性炎症性疾患の患者に共通する要因を突き止めることはできなかった。そのため、肥満などの高血圧のリスク因子が関与しているかどうかについては、明らかになっていない。しかし、同氏は「ステロイド薬がもたらす影響に、こうした高血圧のリスク因子が関連しているとは考えにくい」と話している。ただし、今回の研究では因果関係が証明されたわけではなく、関連が認められたに過ぎない。.Stewart氏らの報告を受けて、この研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院の循環器医Satjit Bhusri氏は「高血圧は無症状のまま経過し、心筋梗塞や脳卒中を発症して初めて気付くことも多いことから、"サイレントキラー"とも呼ばれている。ステロイド薬の長期使用によって体のストレス反応が高まり、血圧が上昇する」と説明。その上で、「ステロイド薬を長期使用している全ての患者に高血圧のスクリーニングを実施し、心疾患のリスク・プロファイルを評価することが重要だ」との見解を示している。(HealthDay News 2020年3月23日).https://consumer.healthday.com/men-s-health-information-24/steroid-health-news-637/taking-steroids-for-rheumatoid-arthritis-ibd-your-odds-for-hypertension-may-rise-756005.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.