研究者らの間では、気候変動がこのまま進めば、地球の気温は数十年以内に人体が耐えられないレベルまで上昇することが予測されている。しかし、一部の地域では、既にそのような事態に直面していることが、米コロンビア大学ラモント・ドハティ地球研究所のColin Raymond氏らの研究から明らかになった。同氏は「気温が人体の耐えられる限度を超える日は、予測されていたよりも早く近付いてきている」との見方を示している。詳細は「Science Advances」5月8日オンライン版に発表された。Raymond氏らは今回、7,877カ所に上る世界各国の気象観測所の1時間ごとのデータを分析した。その結果、1979年から2017年の間に、気温と湿度の複合的な指標である湿球温度が摂氏30度に近いかそれを超えた回数は2倍になっていたことが分かった。また、湿球温度で摂氏31度が記録された回数は約1,000回、摂氏33度に達した回数は約80回あった。湿球温度で摂氏31度あるいは摂氏33度という数値は、ヒート・インデックス(暑さ指数)に換算すると、以前は起こり得ないと考えられていた値だった。なお、現在では、人間の体が耐えられる暑さの上限は、湿球温度で摂氏35度と考えられている。.最も危険なレベルまで気温が上昇していたのはペルシャ湾岸地域であり、複数の町で、短時間ながらも湿球温度が摂氏35度に達した回数が14回もあった。また、インドやバングラデシュ、パキスタン、オーストラリア北西地域、メキシコの一部地域でも、大幅な気温の上昇が観測されていた。米国では、主にメキシコ湾に近いテキサス州東部、ルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州、フロリダ州パンハンドルでも湿球温度が摂氏30度前後まで上昇した記録があった。.Raymond氏は「人間は誰でも、ある程度の気温や湿度の上昇には順応できる。しかし、一定の閾値に達すると、どれほど健康であろうと、汗をかいても体温を下げることができなくなってしまう」と説明。そして、「人間にもともと備わっているこのような体温調節機能が働かなくなると、熱中症あるいは臓器不全に至る可能性もある」と指摘する。.さらに、そこまで極端に気温が上昇していなくても、高気温の環境に長時間曝されることで、健康に有害な影響が及ぶ可能性はあるという。例えば、2003年に欧州を襲った熱波により、冷房機器が普及していない地域に住む暑さ慣れしていない人々の多くが犠牲となった。.気候変動によるさまざまな健康被害に関する啓発活動に取り組んでいる米国の医学団体Medical Society Consortium on Climate and Healthのエグゼクティブディレクターで、米ジョージ・メイソン大学のMona Sarfaty氏は、「気候変動による影響は、熱中症による死亡だけではない。例えば、気候変動による大気汚染の悪化は、心臓や肺の疾患を抱えている人たちにとって危険な環境をもたらす。気温や湿度の上昇により、ライム病やジカ熱などの昆虫が媒介する感染症も増える。また、海面上昇により豪雨や洪水が増えると食料や飲料水が汚染され、それが疾患の原因になり得る」と説明している。.Raymond氏は「世界で最も暑い地域の多くでは、冷房機器が普及していない。また、屋外で働くことが一般的な地域も少なくない」とした上で、「どうすればこうした地域で冷房機器を普及させることができるのか、真剣に考える必要がある」と主張している。(HealthDay News 2020年5月8日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/heat-and-sunstroke-health-news-370/planet-already-seeing-temperatures-beyond-human-tolerability-757501.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
研究者らの間では、気候変動がこのまま進めば、地球の気温は数十年以内に人体が耐えられないレベルまで上昇することが予測されている。しかし、一部の地域では、既にそのような事態に直面していることが、米コロンビア大学ラモント・ドハティ地球研究所のColin Raymond氏らの研究から明らかになった。同氏は「気温が人体の耐えられる限度を超える日は、予測されていたよりも早く近付いてきている」との見方を示している。詳細は「Science Advances」5月8日オンライン版に発表された。Raymond氏らは今回、7,877カ所に上る世界各国の気象観測所の1時間ごとのデータを分析した。その結果、1979年から2017年の間に、気温と湿度の複合的な指標である湿球温度が摂氏30度に近いかそれを超えた回数は2倍になっていたことが分かった。また、湿球温度で摂氏31度が記録された回数は約1,000回、摂氏33度に達した回数は約80回あった。湿球温度で摂氏31度あるいは摂氏33度という数値は、ヒート・インデックス(暑さ指数)に換算すると、以前は起こり得ないと考えられていた値だった。なお、現在では、人間の体が耐えられる暑さの上限は、湿球温度で摂氏35度と考えられている。.最も危険なレベルまで気温が上昇していたのはペルシャ湾岸地域であり、複数の町で、短時間ながらも湿球温度が摂氏35度に達した回数が14回もあった。また、インドやバングラデシュ、パキスタン、オーストラリア北西地域、メキシコの一部地域でも、大幅な気温の上昇が観測されていた。米国では、主にメキシコ湾に近いテキサス州東部、ルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州、フロリダ州パンハンドルでも湿球温度が摂氏30度前後まで上昇した記録があった。.Raymond氏は「人間は誰でも、ある程度の気温や湿度の上昇には順応できる。しかし、一定の閾値に達すると、どれほど健康であろうと、汗をかいても体温を下げることができなくなってしまう」と説明。そして、「人間にもともと備わっているこのような体温調節機能が働かなくなると、熱中症あるいは臓器不全に至る可能性もある」と指摘する。.さらに、そこまで極端に気温が上昇していなくても、高気温の環境に長時間曝されることで、健康に有害な影響が及ぶ可能性はあるという。例えば、2003年に欧州を襲った熱波により、冷房機器が普及していない地域に住む暑さ慣れしていない人々の多くが犠牲となった。.気候変動によるさまざまな健康被害に関する啓発活動に取り組んでいる米国の医学団体Medical Society Consortium on Climate and Healthのエグゼクティブディレクターで、米ジョージ・メイソン大学のMona Sarfaty氏は、「気候変動による影響は、熱中症による死亡だけではない。例えば、気候変動による大気汚染の悪化は、心臓や肺の疾患を抱えている人たちにとって危険な環境をもたらす。気温や湿度の上昇により、ライム病やジカ熱などの昆虫が媒介する感染症も増える。また、海面上昇により豪雨や洪水が増えると食料や飲料水が汚染され、それが疾患の原因になり得る」と説明している。.Raymond氏は「世界で最も暑い地域の多くでは、冷房機器が普及していない。また、屋外で働くことが一般的な地域も少なくない」とした上で、「どうすればこうした地域で冷房機器を普及させることができるのか、真剣に考える必要がある」と主張している。(HealthDay News 2020年5月8日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/heat-and-sunstroke-health-news-370/planet-already-seeing-temperatures-beyond-human-tolerability-757501.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.