音楽は心拍数に影響するが、ある音楽が心臓にどう影響するかは人によってそれぞれ異なることが、フランス国立科学研究センター(CNRS)のElaine Chew氏らによる小規模研究で示された。この知見は、高血圧や心拍障害などに対する、薬剤を用いない新たな治療法の開発につながり、リラックスすることや注意力維持の助けにもなる可能性があるという。研究結果は、欧州心臓病学会(ESC)の科学的プラットフォームである「EHRA Essentials 4 You」で5月20日に発表された。音楽に対する身体の反応を調べた過去の研究は、「悲しい」、「楽しい」、「穏やか」、「激しい」の4つのカテゴリーに分類した音楽を参加者に聞かせ、その後の心拍数の変化を測定するというものだった。.それに対して、今回の研究は、ペースメーカーを装着した軽症の心不全患者3人に、クラシックのピアノコンサートで生演奏を聴かせ、音楽のテンポ、音量、リズムに大きな変化があったときの心臓の電気的活動を、ペースメーカーのリード(導線)から直接測定するという、より焦点を絞った手法を採用している。具体的には、音楽を聴いて変化した対象者の鼓動が回復するまでの時間が測定された。研究論文の共著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)心血管科学研究所教授のPier Lambiase氏は「われわれは、心拍数ではなく、心拍変動からの回復時間に関心がある。心拍変動からの回復時間は、心臓の電気的安定性と危険な心調律異常に対する感受性に関連付けられているからだ」と説明している。.その結果、同じ音楽を聴いていても、心拍変動からの回復時間は人によって著しく異なることが判明した。Chew氏は「ある人にとっては落ち着く音楽が、別の人にとっては興奮する音楽となり得ることが分かった。同じ音楽の変化に対して、2人の人間に統計的に有意な変化が生じるとしても、その反応は、一方の人ではリラックスに、もう一方の人では興奮やストレスにつながるという具合に、正反対になることがあるということだ」と説明。そして、穏やかな曲調だった音楽が激しいものに変化した場合、それを予測していなかった人はストレスを感じるかもしれないが、音楽の盛り上がり部分が来ることを予測していた人にとっては開放感につながるという例を挙げている。.今回の研究についてChew氏は「個々人の心臓が音楽の変化にどのように反応するかを理解することで、目的とする反応を引き起こすような、オーダーメイドの音楽による介入方法をデザインしていく予定だ」と述べている。さらに、Lambiase氏は、「個々人に合わせた介入策により、薬物療法による副作用なしで、血圧や心拍障害リスクを低下させることができるだろう」と付け加えている。.研究チームは現在、今回の試験で得られた知見を確証するべく、患者8人を対象とした試験を実施中だという。(HealthDay News 2020年5月28日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/music-988/music-might-help-soothe-ailing-hearts-757863.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
音楽は心拍数に影響するが、ある音楽が心臓にどう影響するかは人によってそれぞれ異なることが、フランス国立科学研究センター(CNRS)のElaine Chew氏らによる小規模研究で示された。この知見は、高血圧や心拍障害などに対する、薬剤を用いない新たな治療法の開発につながり、リラックスすることや注意力維持の助けにもなる可能性があるという。研究結果は、欧州心臓病学会(ESC)の科学的プラットフォームである「EHRA Essentials 4 You」で5月20日に発表された。音楽に対する身体の反応を調べた過去の研究は、「悲しい」、「楽しい」、「穏やか」、「激しい」の4つのカテゴリーに分類した音楽を参加者に聞かせ、その後の心拍数の変化を測定するというものだった。.それに対して、今回の研究は、ペースメーカーを装着した軽症の心不全患者3人に、クラシックのピアノコンサートで生演奏を聴かせ、音楽のテンポ、音量、リズムに大きな変化があったときの心臓の電気的活動を、ペースメーカーのリード(導線)から直接測定するという、より焦点を絞った手法を採用している。具体的には、音楽を聴いて変化した対象者の鼓動が回復するまでの時間が測定された。研究論文の共著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)心血管科学研究所教授のPier Lambiase氏は「われわれは、心拍数ではなく、心拍変動からの回復時間に関心がある。心拍変動からの回復時間は、心臓の電気的安定性と危険な心調律異常に対する感受性に関連付けられているからだ」と説明している。.その結果、同じ音楽を聴いていても、心拍変動からの回復時間は人によって著しく異なることが判明した。Chew氏は「ある人にとっては落ち着く音楽が、別の人にとっては興奮する音楽となり得ることが分かった。同じ音楽の変化に対して、2人の人間に統計的に有意な変化が生じるとしても、その反応は、一方の人ではリラックスに、もう一方の人では興奮やストレスにつながるという具合に、正反対になることがあるということだ」と説明。そして、穏やかな曲調だった音楽が激しいものに変化した場合、それを予測していなかった人はストレスを感じるかもしれないが、音楽の盛り上がり部分が来ることを予測していた人にとっては開放感につながるという例を挙げている。.今回の研究についてChew氏は「個々人の心臓が音楽の変化にどのように反応するかを理解することで、目的とする反応を引き起こすような、オーダーメイドの音楽による介入方法をデザインしていく予定だ」と述べている。さらに、Lambiase氏は、「個々人に合わせた介入策により、薬物療法による副作用なしで、血圧や心拍障害リスクを低下させることができるだろう」と付け加えている。.研究チームは現在、今回の試験で得られた知見を確証するべく、患者8人を対象とした試験を実施中だという。(HealthDay News 2020年5月28日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/music-988/music-might-help-soothe-ailing-hearts-757863.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.