スピリチュアルな人は、脳卒中後の障害にもうまく対処でき、かつ、介護者の生活の質(QOL)低下を抑制する可能性のあることが報告された。ローマ・トルヴェルガタ大学(イタリア)のGianluca Pucciarelli氏らの研究によるもので、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月号に掲載された。脳卒中後の患者の約30%は身体的・精神的障害と社会的な孤立に関連するうつ症状を示し、さらに、介護者の52%もうつ症状を示すという報告がある。これに対して従来より、スピリチュアリティーの高いことが、患者と介護者双方に保護的に働くのではないかと考えられてきた。.スピリチュアリティーとは、Pucciarelli氏によると「人間の魂の一部をなすもの」だという。例えば、人生の意味、畏敬の念、強さ、一体感や統一感、心の平和、希望、楽観などで、今回の研究では、以下のような質問を通じて対象者のスピリチュアリティーを評価した。.困難を乗り越える上で、スピリチュアルな存在とのつながりはどのくらい役立つか生にどれほどの意味を見いだしているか自然の恵みにどのくらい感謝しているか不確実な時代にどのくらい楽観性を保てるか日常生活において信仰がどのくらい安息を与えているか.同氏らの研究は、イタリア国内10カ所のリハビリテーション病院から退院した患者213人とその介護者を対象とし、退院後1年まで追跡した。患者は平均年齢70.7±12.0歳、女性が49%、脳卒中発症からリハビリテーション病院退院までの期間は43±9.5日だった。介護者は52.3±13.9歳、女性が66%で、63%は患者と同居していた。0~100点で表すスピリチュアルスコア(点数が高いほどスピリチュアリティーが高いと判定される)は、患者が43.8±15.8、介護者が45.6±12.7だった。.解析の結果、患者のスピリチュアルスコアが高いことは、本人の精神的QOLの高さと相関し(B=0.28、P<0.001)、介護者の抑うつ症状と患者の精神的QOLとの関連の緩和につながることも明らかになった(B=0.03、P<0.05)。また、介護者の抑うつ症状と介護者自身の身体的QOL(B=0.05、P<0.001)や心理的QOL(B=0.04、P<0.001)との関連も、患者のスピリチュアリティーが高いことで緩和されることが分かった。さらに、介護者のスピリチュアルスコアと介護者本人の身体的QOLとの間に正相関が認められた(B=0.28、P<0.001)。.スピリチュアリティーは、どのように脳卒中後の気分やQOLを高めるのだろうか。米国心臓協会(AHA)の広報担当でこの領域に詳しいJoseph Broderick氏によると、「脳卒中後は自分自身のコントロールができなくなり、人の助けがないと日常の作業にも支障を来す。スピリチュアリティーをもっていれば、このような過酷な状況を乗り越える助けとなり、介護者に対しても感謝の心を持つことができる」と述べている。.米レノックス・ヒル病院の脳卒中部門長Salman Azhar氏は、「スピリチュアリティーとは、実質的には『対処メカニズム』だ」とし、今回の研究結果を「患者のスピリチュアリティーが高い場合、介護者の抑うつ症状によって生じる悪影響が緩和され、患者本人と介護者双方のQOLに保護的な効果をもたらすことを示した」と語る。ただし、今回の被験者の障害レベルが軽度から中等度であったことから、「より重度の障害を持つ人には、この結果は当てはまらない可能性がある」との指摘もしている。.Pucciarelli氏は「介護者の重要性を認識すべき」とし、「家族はスピリチュアリティー(文化、価値感、絆)を与えてくれる小さなコミュニティーだ」と話す。Broderick氏やAzhar氏は、「この知見から、脳卒中患者の治療にあたる医療従事者は、患者の身体だけでなく、心も含めて患者と向き合う必要のあることが示された」と述べている。(HealthDay News 2020年5月28日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/heart-stroke-related-stroke-353/spirituality-helps-stroke-survivors-caregivers-bounce-back-758045.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
スピリチュアルな人は、脳卒中後の障害にもうまく対処でき、かつ、介護者の生活の質(QOL)低下を抑制する可能性のあることが報告された。ローマ・トルヴェルガタ大学(イタリア)のGianluca Pucciarelli氏らの研究によるもので、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月号に掲載された。脳卒中後の患者の約30%は身体的・精神的障害と社会的な孤立に関連するうつ症状を示し、さらに、介護者の52%もうつ症状を示すという報告がある。これに対して従来より、スピリチュアリティーの高いことが、患者と介護者双方に保護的に働くのではないかと考えられてきた。.スピリチュアリティーとは、Pucciarelli氏によると「人間の魂の一部をなすもの」だという。例えば、人生の意味、畏敬の念、強さ、一体感や統一感、心の平和、希望、楽観などで、今回の研究では、以下のような質問を通じて対象者のスピリチュアリティーを評価した。.困難を乗り越える上で、スピリチュアルな存在とのつながりはどのくらい役立つか生にどれほどの意味を見いだしているか自然の恵みにどのくらい感謝しているか不確実な時代にどのくらい楽観性を保てるか日常生活において信仰がどのくらい安息を与えているか.同氏らの研究は、イタリア国内10カ所のリハビリテーション病院から退院した患者213人とその介護者を対象とし、退院後1年まで追跡した。患者は平均年齢70.7±12.0歳、女性が49%、脳卒中発症からリハビリテーション病院退院までの期間は43±9.5日だった。介護者は52.3±13.9歳、女性が66%で、63%は患者と同居していた。0~100点で表すスピリチュアルスコア(点数が高いほどスピリチュアリティーが高いと判定される)は、患者が43.8±15.8、介護者が45.6±12.7だった。.解析の結果、患者のスピリチュアルスコアが高いことは、本人の精神的QOLの高さと相関し(B=0.28、P<0.001)、介護者の抑うつ症状と患者の精神的QOLとの関連の緩和につながることも明らかになった(B=0.03、P<0.05)。また、介護者の抑うつ症状と介護者自身の身体的QOL(B=0.05、P<0.001)や心理的QOL(B=0.04、P<0.001)との関連も、患者のスピリチュアリティーが高いことで緩和されることが分かった。さらに、介護者のスピリチュアルスコアと介護者本人の身体的QOLとの間に正相関が認められた(B=0.28、P<0.001)。.スピリチュアリティーは、どのように脳卒中後の気分やQOLを高めるのだろうか。米国心臓協会(AHA)の広報担当でこの領域に詳しいJoseph Broderick氏によると、「脳卒中後は自分自身のコントロールができなくなり、人の助けがないと日常の作業にも支障を来す。スピリチュアリティーをもっていれば、このような過酷な状況を乗り越える助けとなり、介護者に対しても感謝の心を持つことができる」と述べている。.米レノックス・ヒル病院の脳卒中部門長Salman Azhar氏は、「スピリチュアリティーとは、実質的には『対処メカニズム』だ」とし、今回の研究結果を「患者のスピリチュアリティーが高い場合、介護者の抑うつ症状によって生じる悪影響が緩和され、患者本人と介護者双方のQOLに保護的な効果をもたらすことを示した」と語る。ただし、今回の被験者の障害レベルが軽度から中等度であったことから、「より重度の障害を持つ人には、この結果は当てはまらない可能性がある」との指摘もしている。.Pucciarelli氏は「介護者の重要性を認識すべき」とし、「家族はスピリチュアリティー(文化、価値感、絆)を与えてくれる小さなコミュニティーだ」と話す。Broderick氏やAzhar氏は、「この知見から、脳卒中患者の治療にあたる医療従事者は、患者の身体だけでなく、心も含めて患者と向き合う必要のあることが示された」と述べている。(HealthDay News 2020年5月28日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/heart-stroke-related-stroke-353/spirituality-helps-stroke-survivors-caregivers-bounce-back-758045.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.