副鼻腔感染症になりやすい人は、鼻の中の善玉菌が少ないことが原因である可能性が、新たな研究で示された。アントワープ大学(ベルギー)のSarah Lebeer氏らの研究によるもので「Cell Reports」5月26日オンライン版に掲載された。ヒトの消化器や生殖器、皮膚には、健康に有益な菌株が存在していることが知られている。しかし、副鼻腔などの上気道の細菌叢についての研究はあまり行われていない。またLebeer氏によると、「副鼻腔感染症に対する治療選択肢は多いとは言えない。抗菌薬を用いて治療するが、薬剤耐性菌の発生や副作用を引き起こすことが少なくない」という。.同氏らが行った今回の研究は、慢性的な鼻や副鼻腔の感染症がある患者の上気道から採取した検体に存在する30種類の細菌の量を、健康な人のそれと比較するというもの。患者群は225人で平均年齢42歳、男性が63%、健康な対照群は100人で平均年齢34歳、男性が39%だった。.その結果、健康な人の検体には患者群の検体よりも乳酸菌が多く存在していることが分かった。また、一部の乳酸菌は、酸素の多い鼻腔内の環境でも繁殖できるように適応し、抗炎症作用や抗菌作用を持つことも明らかになった。.次に研究グループは、Lactobacillus casei AMBR2(L.casei AMBR2)という乳酸菌株を用いた点鼻薬のパイロット試験を行った。L.casei AMBR2株は上気道の粘膜に付着し、病原性細菌の成長を阻害する作用を持つ乳酸菌。これを健康な被験者20人(平均年齢36.7歳、男性が40%)へ鼻スプレーで投与したところ、上気道でのコロニー形成が認められた。.Lebeer氏が鼻腔内の細菌に関心を持ったきっかけは、自身の母親が長年、頭痛と副鼻腔感染症に悩まされていて、手術を受けたことだったという。「母親はさまざまな治療法を試みていたが、どれも効果がなかった。鼻の症状に効果があるプロバイオティクス療法の助言をできないことが残念だった」と同氏は述べている。また「この領域について、これまで誰も十分な研究をしてこなかった」と指摘し、同氏自身も以前は腟内のプロバイオティクスを研究していたという。.「副鼻腔感染症の患者の中には、細菌叢を変えて有益な細菌を増やすことが、症状の緩和につながる群が存在すると考えられる。しかし、症状緩和の詳しいメカニズムの解明や臨床応用には、まだ長い道のりがある」と同氏は語っている。(HealthDay News 2020年6月2日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/bacteria-960/sinus-infection-good-germs-in-your-nose-may-be-key-758026.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.