脳震盪を経験した小児は、視覚と平衡感覚の問題を抱えている可能性のあることが、米フィラデルフィア小児病院(CHOP)のスポーツ医学専門小児科医であるChristina Master氏らの研究で明らかにされた。Master氏は今回の研究背景について、「小児期および思春期に生じる脳震盪の3分の1は5〜11歳、つまり小学生の年齢の小児に生じている。われわれは、この年代の小児における脳震盪の診断とケアの質を向上すべく、脳震盪と診断された小児の臨床像や治療について包括的に説明することを目指した」と述べている。研究結果の詳細は、「Journal of Pediatrics」6月4日オンライン版に掲載された。Master氏らは、CHOPの電子カルテシステムから2014年7月1日〜2015年6月30日の間に脳震盪と診断された5〜11歳の小児1,500人以上を特定した。この中から全体の20%に当たる292人分の電子カルテデータをランダムに抽出し、これを基に解析を行った。.その結果、対象者が初診で訪れたのは、プライマリケア外来か救急外来/診療所(それぞれ49%ずつ)であることが分かった。また、全体の24.7%に当たる患者が、治療過程の中で専門医療を受けていた。さらに、治療過程のどこかの時点で、74.3%の患者が、視覚と平衡を司る器官である前庭の機能に関する標準的な評価を受けており、このうちの62.7%に機能障害が確認された。こうした機能評価が患者に実施された割合は、最終的に専門医療を受けた患者で92.9%に上ったのに対し、専門医療を受けなかった患者では68.5%にとどまっていた。.症状に関しては、ほぼ全ての患者(95.9%)が一つ以上の身体症状を訴えており、全体の66.1%に当たる患者が視覚と前庭の機能に関わる問題を報告していた。ところが、学校での活動に関して必要な配慮――例えば、症状が出たときは休憩を取る、プリント類には大きな書体を用いるかオーディオブックを活用する、宿題は時間的に余裕を見て進める等――について説明を受けた患者は半分に満たず(43.8%)、救急外来のみを受診した患者での割合はわずか5%であった。さらに、スポーツやそのほかのレクリエーション活動の再開に関する許可状を受け取った患者の割合も56.2%にとどまっていた。.Master氏は、脳震盪が原因で視覚と平衡感覚に異常が認められた者の割合は、5〜11歳の小児とそれより年長の小児で同程度であったことを指摘。「視覚と平衡感覚に問題を抱えている10代の小児は、持続的な症状に悩まされやすく、転帰不良となるリスクが高い。こうした年長の小児に対しては、学校の活動に便宜を図る、学校や身体活動への復帰計画を立てる、平衡訓練や視覚訓練を行う、などの介入を早期に行うことが重要で、それにより患者が受ける恩恵は大きなものになるだろう。また、早期介入により、視覚と前庭の機能に異常があると診断された年少の小児の転帰も改善できるだろう」と話している。(HealthDay News 2020年6月10日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/concussions-news-733/concussion-can-lead-to-vision-balance-problems-in-young-kids-758288.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.