ボランティア活動に参加することが長寿につながる可能性が「American Journal of Preventive Medicine」6月11日オンライン版に掲載された。論文の筆頭著者である米ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生学部のEric Kim氏は、「人間は元来、社会的な生き物である。だからこそ、他人に何かを与えることで、心身が報われるのかもしれない」と述べている。この研究は、大規模パネル調査「Health and Retirement Study(健康と退職に関する調査)」の参加者を対象に行われたコホート研究。50歳以上の米国人1万2,998人を4年間追跡し、ボランティア活動に参加した時間と、死亡や健康に関係する指標との関連を検討した。ボランティア活動への参加状況は、全く参加しなかった人が8,064人(62.0%)、年間1~49時間参加した人が1,794人(13.8%)、年間50~99時間参加した人が1,150人(8.8%)、年間100時間以上参加した人が1,990人(15.3%)だった。.ボランティア活動に全く参加していなかった人を基準として、他群の全死亡リスクを比較すると、年間100時間(週換算で約2時間)以上参加している人の死亡リスクは44%有意に低く、年間50~99時間参加の人も28%有意に低かった。また、身体機能に制限が生じるリスクは、同順に17%、16%有意に低かった。ボランティア参加時間が年間1~49時間の人は、死亡、身体機能制限のリスクともに、全くボランティア活動に参加しなかった人と有意差がなかった。.このほか、ボランティア参加時間が長い人では、主観的健康感が高い、身体活動量が多い、楽観的で人生に目的を持ち幸福感が強い、孤独であることや絶望を感じたりうつ症状を示すことが少ない、友人と連絡をとる頻度が高い、などの傾向が認められた。.一方、ボランティア参加時間と、糖尿病、高血圧、脳卒中、がん、心臓病、肺疾患、関節炎、肥満、認知機能障害、慢性疼痛などの病状との関連は、認められなかった。.Kim氏は、「高齢者がボランティア活動に参加することは、単に地域社会とのつながりを強化するだけでなく、他者との絆を強めることにより自分自身の生活を豊かにし、目的意識や幸福感を獲得でき、孤独感、抑うつ、絶望から自分を守ってくれることが分かった」と述べている。また、「さまざまな慢性疾患に対する直接的な影響は認められなかったものの、利他的な活動をまめに行うことは死亡リスクを低減させる」としている。.研究グループは、この研究が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生前の、ソーシャル・ディスタンシングを確保する必要がない時期に実施されたものであることに言及。この点に関連してKim氏は、「今は歴史上、社会が最もボランティアを必要としている瞬間かもしれない」とした上で、「医療上のガイドラインを順守しながらボランティア活動に参加できるのであれば、その行為は世界を癒すだけでなく、自分自身をも助けることになるだろう」と語っている。.加えて同氏は、「コロナ禍が落ち着けば、社会によりいっそう貢献できるような政策を立案したり、市民組織を形成するチャンスが拡大する。パンデミック前に既にその実現に取り組んでいた人々は、コロナ後の社会でも、その固い決意を持ち続けてほしい」と述べている。(HealthDay News 2020年6月13日).https://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/longevity-982/want-added-years-try-volunteering-758489.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
ボランティア活動に参加することが長寿につながる可能性が「American Journal of Preventive Medicine」6月11日オンライン版に掲載された。論文の筆頭著者である米ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生学部のEric Kim氏は、「人間は元来、社会的な生き物である。だからこそ、他人に何かを与えることで、心身が報われるのかもしれない」と述べている。この研究は、大規模パネル調査「Health and Retirement Study(健康と退職に関する調査)」の参加者を対象に行われたコホート研究。50歳以上の米国人1万2,998人を4年間追跡し、ボランティア活動に参加した時間と、死亡や健康に関係する指標との関連を検討した。ボランティア活動への参加状況は、全く参加しなかった人が8,064人(62.0%)、年間1~49時間参加した人が1,794人(13.8%)、年間50~99時間参加した人が1,150人(8.8%)、年間100時間以上参加した人が1,990人(15.3%)だった。.ボランティア活動に全く参加していなかった人を基準として、他群の全死亡リスクを比較すると、年間100時間(週換算で約2時間)以上参加している人の死亡リスクは44%有意に低く、年間50~99時間参加の人も28%有意に低かった。また、身体機能に制限が生じるリスクは、同順に17%、16%有意に低かった。ボランティア参加時間が年間1~49時間の人は、死亡、身体機能制限のリスクともに、全くボランティア活動に参加しなかった人と有意差がなかった。.このほか、ボランティア参加時間が長い人では、主観的健康感が高い、身体活動量が多い、楽観的で人生に目的を持ち幸福感が強い、孤独であることや絶望を感じたりうつ症状を示すことが少ない、友人と連絡をとる頻度が高い、などの傾向が認められた。.一方、ボランティア参加時間と、糖尿病、高血圧、脳卒中、がん、心臓病、肺疾患、関節炎、肥満、認知機能障害、慢性疼痛などの病状との関連は、認められなかった。.Kim氏は、「高齢者がボランティア活動に参加することは、単に地域社会とのつながりを強化するだけでなく、他者との絆を強めることにより自分自身の生活を豊かにし、目的意識や幸福感を獲得でき、孤独感、抑うつ、絶望から自分を守ってくれることが分かった」と述べている。また、「さまざまな慢性疾患に対する直接的な影響は認められなかったものの、利他的な活動をまめに行うことは死亡リスクを低減させる」としている。.研究グループは、この研究が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生前の、ソーシャル・ディスタンシングを確保する必要がない時期に実施されたものであることに言及。この点に関連してKim氏は、「今は歴史上、社会が最もボランティアを必要としている瞬間かもしれない」とした上で、「医療上のガイドラインを順守しながらボランティア活動に参加できるのであれば、その行為は世界を癒すだけでなく、自分自身をも助けることになるだろう」と語っている。.加えて同氏は、「コロナ禍が落ち着けば、社会によりいっそう貢献できるような政策を立案したり、市民組織を形成するチャンスが拡大する。パンデミック前に既にその実現に取り組んでいた人々は、コロナ後の社会でも、その固い決意を持ち続けてほしい」と述べている。(HealthDay News 2020年6月13日).https://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/longevity-982/want-added-years-try-volunteering-758489.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.