長期にわたり抑うつ症状に苦しんでいた母親から生まれた子どもでは、行動や発達上の問題が生じるリスクが高いとする研究結果を、クイーンズランド大学(オーストラリア)公衆衛生学部のKatrina Moss氏らが「Paediatric and Perinatal Epidemiology」6月14日オンライン版に報告した。Moss氏は「母親が抑うつ症状を経験する時間が長いほど、その子どもの転帰は悪化する」と述べている。母親の抑うつ症状が子どもの行動や発達に悪影響を及ぼすことは複数の研究で示されている。しかし、その原因が、抑うつ症状の累積(慢性化)なのか、症状が現れる時期なのかについては、議論の一致を見ていない。Moss氏らはこの点を明らかにすべく、892人の母親の抑うつ症状と、これらの母親から生まれた978人(2〜12歳、男児496人)の子どもの発達と行動について分析した。.母親は、うつ病評価尺度(CES-D)10項目での評価で、10スコア以上を「抑うつ症状がある」と定義し、妊娠前、妊娠中、または子どもが幼児期の間における抑うつ症状の有無で分類した。一方、子どもの転帰は、母親が「子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)」で行動上の問題について、教師が「オーストラリア乳幼児発達人口調査(AEDC)」で発達上の問題について評価した。SDQでは、行為、多動・不注意、情緒、仲間関係、向社会性の5つの下位尺度のうち、向社会性以外の4つの尺度のスコアが「総合的な困難さ」として算出され、高スコアなほど行動上の問題が大きいことを示す。これとは反対に、AEDCは低スコアなほど、発達上の問題が大きいことを示す。.その結果、半数以上(69.2%)の女性は、妊娠前、妊娠中、および子どもが幼児期の間のいずれにおいても抑うつ症状を経験していなかったが、16.9%の女性は妊娠前に、13.2%の女性は妊娠中に、16.5%の女性は子どもが幼児期の間に、抑うつ症状を抱えていたことが明らかになった。これらの3つの時期のいずれかでのみ抑うつ症状を経験した母親は全体の19.2%、2つの時期に経験した母親は7.4%、3つの時期を通じて経験した母親は4.2%であった。.一方、行動上の問題の程度が高かったまたは非常に高かった子どもの割合は7.0%であり、最も程度が高かったのは概して、妊娠前、妊娠中、子どもが幼児期の間の全てに抑うつ症状があった母親から生まれた子どもであった。発達面に関しては、15.9%に社会的コンピテンス、15.7%に情緒的成熟度に、脆弱性/リスクが認められた。ただし、この割合は2015年のAEDC報告に示された数字(それぞれ24.9%、23.7%)よりも低かった。社会的コンピテンスと情緒的成熟度が最も低かったのは概して、3つの時期の全てで抑うつ症状を経験していた母親の子どもであった。さらに、抑うつ症状の累積と子どもの転帰との関連を調べたところ、母親が抑うつ症状を抱える時期が増えるごとにSDQスコアは1.71ポイント上昇し、社会的コンピテンスは0.31ポイント、情緒的成熟度は0.29ポイントそれぞれ低下していた。.こうした結果を受けてMoss氏は「妊娠中に抑うつ症状を経験した母親は、もう手遅れなのだろうかと心配するかもしれない。だが、どの段階であれ、抑うつ症状があるのなら、それを軽減する方が、母親にとってもその子どもにとっても良い」と説明し、「ただし、母親の抑うつ症状を的確に見つけ出して治療するのが早いほど、転帰を改善できる可能性も高まる」と述べている。.Moss氏は、抑うつ症状のスクリーニングは、カップルが妊娠を計画し始めたときに開始し、子どもが幼児の間は続けるべきだと示唆するとともに、「母親の抑うつは、本人だけでなく、家族やコミュニティにとっても大きな課題であり、われわれは、妊娠と出産という人生の重要な時期にある女性をもっと気にかける必要がある」と主張する。また、抑うつ症状を経験している女性に対しては、かかりつけ医を訪問したり、個人や親に精神的なケアを提供している支援団体などを頼るべきだと呼び掛けている。(HealthDay News 2020年6月17日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/depression-news-176/mom-s-depression-can-lead-to-behavior-problems-in-kids-758629.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
長期にわたり抑うつ症状に苦しんでいた母親から生まれた子どもでは、行動や発達上の問題が生じるリスクが高いとする研究結果を、クイーンズランド大学(オーストラリア)公衆衛生学部のKatrina Moss氏らが「Paediatric and Perinatal Epidemiology」6月14日オンライン版に報告した。Moss氏は「母親が抑うつ症状を経験する時間が長いほど、その子どもの転帰は悪化する」と述べている。母親の抑うつ症状が子どもの行動や発達に悪影響を及ぼすことは複数の研究で示されている。しかし、その原因が、抑うつ症状の累積(慢性化)なのか、症状が現れる時期なのかについては、議論の一致を見ていない。Moss氏らはこの点を明らかにすべく、892人の母親の抑うつ症状と、これらの母親から生まれた978人(2〜12歳、男児496人)の子どもの発達と行動について分析した。.母親は、うつ病評価尺度(CES-D)10項目での評価で、10スコア以上を「抑うつ症状がある」と定義し、妊娠前、妊娠中、または子どもが幼児期の間における抑うつ症状の有無で分類した。一方、子どもの転帰は、母親が「子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)」で行動上の問題について、教師が「オーストラリア乳幼児発達人口調査(AEDC)」で発達上の問題について評価した。SDQでは、行為、多動・不注意、情緒、仲間関係、向社会性の5つの下位尺度のうち、向社会性以外の4つの尺度のスコアが「総合的な困難さ」として算出され、高スコアなほど行動上の問題が大きいことを示す。これとは反対に、AEDCは低スコアなほど、発達上の問題が大きいことを示す。.その結果、半数以上(69.2%)の女性は、妊娠前、妊娠中、および子どもが幼児期の間のいずれにおいても抑うつ症状を経験していなかったが、16.9%の女性は妊娠前に、13.2%の女性は妊娠中に、16.5%の女性は子どもが幼児期の間に、抑うつ症状を抱えていたことが明らかになった。これらの3つの時期のいずれかでのみ抑うつ症状を経験した母親は全体の19.2%、2つの時期に経験した母親は7.4%、3つの時期を通じて経験した母親は4.2%であった。.一方、行動上の問題の程度が高かったまたは非常に高かった子どもの割合は7.0%であり、最も程度が高かったのは概して、妊娠前、妊娠中、子どもが幼児期の間の全てに抑うつ症状があった母親から生まれた子どもであった。発達面に関しては、15.9%に社会的コンピテンス、15.7%に情緒的成熟度に、脆弱性/リスクが認められた。ただし、この割合は2015年のAEDC報告に示された数字(それぞれ24.9%、23.7%)よりも低かった。社会的コンピテンスと情緒的成熟度が最も低かったのは概して、3つの時期の全てで抑うつ症状を経験していた母親の子どもであった。さらに、抑うつ症状の累積と子どもの転帰との関連を調べたところ、母親が抑うつ症状を抱える時期が増えるごとにSDQスコアは1.71ポイント上昇し、社会的コンピテンスは0.31ポイント、情緒的成熟度は0.29ポイントそれぞれ低下していた。.こうした結果を受けてMoss氏は「妊娠中に抑うつ症状を経験した母親は、もう手遅れなのだろうかと心配するかもしれない。だが、どの段階であれ、抑うつ症状があるのなら、それを軽減する方が、母親にとってもその子どもにとっても良い」と説明し、「ただし、母親の抑うつ症状を的確に見つけ出して治療するのが早いほど、転帰を改善できる可能性も高まる」と述べている。.Moss氏は、抑うつ症状のスクリーニングは、カップルが妊娠を計画し始めたときに開始し、子どもが幼児の間は続けるべきだと示唆するとともに、「母親の抑うつは、本人だけでなく、家族やコミュニティにとっても大きな課題であり、われわれは、妊娠と出産という人生の重要な時期にある女性をもっと気にかける必要がある」と主張する。また、抑うつ症状を経験している女性に対しては、かかりつけ医を訪問したり、個人や親に精神的なケアを提供している支援団体などを頼るべきだと呼び掛けている。(HealthDay News 2020年6月17日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/depression-news-176/mom-s-depression-can-lead-to-behavior-problems-in-kids-758629.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.