早産を経験した女性は虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)のリスクが高く、産後数十年たっても影響が続くとする研究結果が、「Journal of the American College of Cardiology」7月号に掲載された。米国では新生児の約9.6%が妊娠37週以前の早産で生まれてくる。このデータを報告した研究者らは「今後、医師は女性の心疾患リスクを評価する際、早産の既往の有無を確認すべきだ」と述べている。早産を経験した女性は心疾患や代謝性疾患のリスクが高いことが既に報告されている。しかし、それが遺伝や環境因子の影響によるものなのかそうでないのか、これまで分かっていなかった。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のCasey Crump氏らは、国民の長期間の医療記録が残っているスウェーデンの医療データベースを用いて出産後の女性を最長43年間追跡し、出産後の虚血性心疾患の長期的なリスクを詳細に検討した。.解析対象は、1973~2015年に単胎妊娠で出産した218万9,190人の女性。また、この解析対象者の姉妹のうち、単胎妊娠の出産歴がある118万8,730人(54.3%)についても、遺伝や環境因子の影響を調べる目的での調査が行われた。.4750万人年の追跡調査の結果、4万9,955人(2.3%)が虚血性心疾患と診断されていた。出産後10年間での虚血性心疾患のリスクを、BMI、喫煙、糖尿病、妊娠高血圧腎症の影響を調整後、満期(39~41週)での出産を基準に比較すると、早産(37週未満)を経験している場合は調整ハザード比(aHR)2.47(95%信頼区間2.16〜2.82)と、有意に高リスクだった。これは、早産を経験した女性は出産後10年間での虚血性心疾患のリスクが、約2.5倍高いことを意味する。.出産の時期でより細かく見ると、22~27週ではaHR4.04(95%信頼区間2.69~6.08)、28〜33週では同2.62(2.09~3.29)、34~36週では同2.30(1.97~2.70)、37~38週では同1.47(1.30~1.65)であり、いずれも有意なリスク上昇が認められた。.虚血性心疾患の相対リスクは出産から10〜19年たつと同1.86(1.73〜1.99)、20〜29年たつと同1.52(1.45~1.59)、30~43年では同1.38(1.32~1.45)と徐々に低下したが、有意に高リスクの状態が続いていた。姉妹間の解析の結果からは、このようなリスク上昇は遺伝や環境因子に起因するものではないことが示唆された。.この研究の限界点として研究者らは、虚血性心疾患のリスク因子が完全に調整できていない可能性や、解析対象がスウェーデン人のみであることなどを挙げている。その上でCrump氏は、「早産の既往のある女性は、肥満、運動不足、喫煙など、虚血性心疾患の既知のリスク因子を取り除くとともに、出産後の長期にわたる経過観察によって虚血性心疾患の早期発見を期すべきだ」と述べている。(HealthDay News 2020年6月29日).https://consumer.healthday.com/pregnancy-information-29/premature-birth-news-774/preterm-birth-ups-mom-s-long-term-heart-disease-risk-study-758954.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.