動物からヒトへのウイルス感染には、細胞よりも小さな因子と地球規模の大きな因子の両方が関わっている。では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の場合は、どうなのだろうか。米国のベストセラー作家で科学ジャーナリストのDavid Quammen氏は、この問いへの答えは、COVID-19パンデミック終息のためのワクチン開発や、次のパンデミックの回避方法の発見につながるはずだと述べている。Quammen氏や専門家たちは、感染症予防のためには、居住地域にかかわりなく、地球上の全ての人々が自分の役割を認識する必要があると指摘する。同氏は、「食事、購入、消費、生殖など全ての人間の行為が、危険なウイルスを自分たちに引き寄せることにつながる」と説明する。これは、裏を返せば、問題解決に貢献するチャンスは誰にでもあるということだ。.ヒトに感染するウイルスの全てが動物由来とは限らないが、ウエストナイルウイルスやHIVといった悪名高いウイルスは、動物からヒトに感染して広がった。そうはいっても、ウイルスが動物からヒトに感染するのは容易なことではないと、米モンタナ州立大学疫学部門准教授のRaina Plowright氏は言う。ウイルスはどこにでも存在している。散歩に出かければ、植物や土、鳥、ペットからウイルスを吸い込む可能性がある。しかし、そのほとんどは無害であり、たとえ体内に入っても気道の粘液や胃酸により死滅するか、細胞に付着して増殖することができない。.ウイルスと共生している動物は自然宿主と呼ばれる。これは、ウイルスの貯蔵庫のようなものだ。ただ、貯蔵されているウイルスの一部が、昆虫などを介して宿主からヒトへと移動することがある。蚊を介して鳥からヒトへ感染が広がったウエストナイルウイルスがその例である。.動物由来のウイルスの多くは増幅動物(amplifier)を介して感染を広げる。例えば、新型インフルエンザの感染は水鳥から始まり、水鳥からニワトリやアヒルなどの家禽に感染し、さらにこれらの家禽が飼育されていた農場のブタへと感染が広がった可能性が高いと考えられている。ブタはヒトのインフルエンザウイルスも保有できるため、ブタの体内でウイルスの遺伝子が混ざって、感染力の高い新しいウイルスが発生したものとみられている。.一方、SARS-CoV-2はコウモリ由来だと考えられている。コウモリは近年、いくつかの致死率の高いウイルスの自然宿主となってきた。Plowright氏によると、コウモリは極めて適応力が高いため、有害な影響を受けることなくウイルスを保有できる。しかし、ウイルスがコウモリからヒトへ感染するには、増幅動物を必要とする場合が多い。そのため、野生動物市場で感染力を持つウイルスを保有するコウモリが扱われていた場合、市場のほかの動物を介してこのウイルスがヒトに感染する可能性はある。ただし、今回のSARS-CoV-2の感染がこうした経緯で始まったかどうかは、現時点では不明だという。問題は、距離の近さだ。同氏は、「ウイルスを排出しているコウモリが森の中にとどまっているのならリスクはない。だが、街中や市場に出てくると、危険性が高まる」と指摘する。.Plowright氏によると、開発が進んだことで人間から餌を奪われたコウモリは、ストレスと空腹を抱えるようになり、このことがウイルスへの感受性に影響した。また、コウモリが餌を求めて人里近くに現れる可能性も考えられる。さらに、Quammen氏は、ロサンゼルスやロンドンからコウモリが生息する中国の洞窟へ、飛行機ですぐにアクセスできる現在では、感染症が特定の地域だけにとどまることはあり得ないと指摘する。Plowright氏は、パンデミックを再び起こしたくないのであれば、誰でもさまざまな形でウイルスの自然宿主との接点を持つ可能性があることを、認識しておくべきだと話している。(American Heart Association News 2020年7月9日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/aha-news-where-do-new-viruses-like-the-coronavirus-come-from-759367.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved.
動物からヒトへのウイルス感染には、細胞よりも小さな因子と地球規模の大きな因子の両方が関わっている。では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の場合は、どうなのだろうか。米国のベストセラー作家で科学ジャーナリストのDavid Quammen氏は、この問いへの答えは、COVID-19パンデミック終息のためのワクチン開発や、次のパンデミックの回避方法の発見につながるはずだと述べている。Quammen氏や専門家たちは、感染症予防のためには、居住地域にかかわりなく、地球上の全ての人々が自分の役割を認識する必要があると指摘する。同氏は、「食事、購入、消費、生殖など全ての人間の行為が、危険なウイルスを自分たちに引き寄せることにつながる」と説明する。これは、裏を返せば、問題解決に貢献するチャンスは誰にでもあるということだ。.ヒトに感染するウイルスの全てが動物由来とは限らないが、ウエストナイルウイルスやHIVといった悪名高いウイルスは、動物からヒトに感染して広がった。そうはいっても、ウイルスが動物からヒトに感染するのは容易なことではないと、米モンタナ州立大学疫学部門准教授のRaina Plowright氏は言う。ウイルスはどこにでも存在している。散歩に出かければ、植物や土、鳥、ペットからウイルスを吸い込む可能性がある。しかし、そのほとんどは無害であり、たとえ体内に入っても気道の粘液や胃酸により死滅するか、細胞に付着して増殖することができない。.ウイルスと共生している動物は自然宿主と呼ばれる。これは、ウイルスの貯蔵庫のようなものだ。ただ、貯蔵されているウイルスの一部が、昆虫などを介して宿主からヒトへと移動することがある。蚊を介して鳥からヒトへ感染が広がったウエストナイルウイルスがその例である。.動物由来のウイルスの多くは増幅動物(amplifier)を介して感染を広げる。例えば、新型インフルエンザの感染は水鳥から始まり、水鳥からニワトリやアヒルなどの家禽に感染し、さらにこれらの家禽が飼育されていた農場のブタへと感染が広がった可能性が高いと考えられている。ブタはヒトのインフルエンザウイルスも保有できるため、ブタの体内でウイルスの遺伝子が混ざって、感染力の高い新しいウイルスが発生したものとみられている。.一方、SARS-CoV-2はコウモリ由来だと考えられている。コウモリは近年、いくつかの致死率の高いウイルスの自然宿主となってきた。Plowright氏によると、コウモリは極めて適応力が高いため、有害な影響を受けることなくウイルスを保有できる。しかし、ウイルスがコウモリからヒトへ感染するには、増幅動物を必要とする場合が多い。そのため、野生動物市場で感染力を持つウイルスを保有するコウモリが扱われていた場合、市場のほかの動物を介してこのウイルスがヒトに感染する可能性はある。ただし、今回のSARS-CoV-2の感染がこうした経緯で始まったかどうかは、現時点では不明だという。問題は、距離の近さだ。同氏は、「ウイルスを排出しているコウモリが森の中にとどまっているのならリスクはない。だが、街中や市場に出てくると、危険性が高まる」と指摘する。.Plowright氏によると、開発が進んだことで人間から餌を奪われたコウモリは、ストレスと空腹を抱えるようになり、このことがウイルスへの感受性に影響した。また、コウモリが餌を求めて人里近くに現れる可能性も考えられる。さらに、Quammen氏は、ロサンゼルスやロンドンからコウモリが生息する中国の洞窟へ、飛行機ですぐにアクセスできる現在では、感染症が特定の地域だけにとどまることはあり得ないと指摘する。Plowright氏は、パンデミックを再び起こしたくないのであれば、誰でもさまざまな形でウイルスの自然宿主との接点を持つ可能性があることを、認識しておくべきだと話している。(American Heart Association News 2020年7月9日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/aha-news-where-do-new-viruses-like-the-coronavirus-come-from-759367.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved.