新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって人々のストレスが高まっている。このようなストレス負荷のある状況では血糖値が高くなりやすくなり、糖尿病患者では血糖コントロールの悪化につながる可能性を示す論文が、「Psychoneuroendocrinology」7月13日オンライン版に掲載された。米オハイオ州立大学のJoshua Joseph氏らの研究によるもので、6年間の追跡期間中にストレスホルモンのコルチゾールレベルが高値で推移した人は、空腹時血糖が経年的に悪化したという。ストレスにより血糖値が高くなるメカニズムをJoseph氏は、「これは攻撃・逃避反応の一部である。クマなどに襲われて逃げなければならないときは、エネルギー源として血糖が必要となる。その際に体はコルチゾールを放出する」と説明する。そのコルチゾールのレベルは通常、朝が最も高く夜間は低いという日内変動が見られる。ところが糖尿病患者では、夜間のコルチゾール低下があまり起こらないことをJoseph氏らは見いだした。.この研究では、空腹時血糖が正常な人、空腹時血糖異常(IFG)の人、糖尿病の人、計2,000人以上を6年間追跡し、コルチゾールレベルと空腹時血糖との関連を検討した。その結果、早朝のコルチゾールレベルの高さや、日内変動曲線下面積の大きさ、および夜間の低下幅が少ないことが、空腹時血糖の有意な上昇と関連することが分かった(いずれもP<0.05)。.「コルチゾールレベルは夕方以降に低くなるはずだが、ストレス負荷のある人は、夜間のコルチゾールと血糖レベルがともに高くなり、血糖コントロールに影響が現われる。また、コルチゾール分泌が亢進すると食欲が高まる。そのようなときに、もしストレスを感じているとしたら、その人は野菜を食べようとはせず、高炭水化物、高糖質の食べ物に手を伸ばすだろう」とJoseph氏は言う。.論文を査読した米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの内分泌専門医であるAkankasha Goyal氏は、この研究で示された知見について、「多くの患者が経験的に既に感じていることを証明したもの」とし、「ストレスは血糖コントロールを悪化させる可能性がある。この研究結果は、糖尿病患者がストレスのコントロール策を講じる動機づけになるかもしれない」と述べている。.Goyal氏は、コルチゾールのことを「double whammy(ダブルパンチ)」と表現する。その理由は、コルチゾールは肝臓の糖新生を増やすだけでなく、膵臓からのインスリン分泌を減らすという二重の経路で高血糖に拍車をかけるからだ。加えて2型糖尿病患者では、インスリン抵抗性のためインスリンを効果的に利用できず、血糖値がより上昇してしまう。.このようなストレスによる血糖コントロールへの悪影響を防ぐ方法、特にコロナ禍でのその対策についてGoyal氏は、「可能なら運動をすること」とし、ウォーキングやヨガ、太極拳、またはダンベルを使った筋力トレーニングを勧めている。また、本を読んだり、絵を描いたりするのも良いという。Goyal氏は、これらによるストレスの緩和は"副作用のない薬"だとしている。.またJoseph氏も「糖尿病患者は疾患管理の一環として、ストレス緩和を心がける必要がある」と述べ、「定期的な運動、7~8時間の睡眠、ヨガ、瞑想、音楽鑑賞、健康的な食事」などのアドバイスをしている。(HealthDay News 2020年7月14日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/stressful-days-worse-blood-sugar-control-for-people-with-diabetes-759473.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって人々のストレスが高まっている。このようなストレス負荷のある状況では血糖値が高くなりやすくなり、糖尿病患者では血糖コントロールの悪化につながる可能性を示す論文が、「Psychoneuroendocrinology」7月13日オンライン版に掲載された。米オハイオ州立大学のJoshua Joseph氏らの研究によるもので、6年間の追跡期間中にストレスホルモンのコルチゾールレベルが高値で推移した人は、空腹時血糖が経年的に悪化したという。ストレスにより血糖値が高くなるメカニズムをJoseph氏は、「これは攻撃・逃避反応の一部である。クマなどに襲われて逃げなければならないときは、エネルギー源として血糖が必要となる。その際に体はコルチゾールを放出する」と説明する。そのコルチゾールのレベルは通常、朝が最も高く夜間は低いという日内変動が見られる。ところが糖尿病患者では、夜間のコルチゾール低下があまり起こらないことをJoseph氏らは見いだした。.この研究では、空腹時血糖が正常な人、空腹時血糖異常(IFG)の人、糖尿病の人、計2,000人以上を6年間追跡し、コルチゾールレベルと空腹時血糖との関連を検討した。その結果、早朝のコルチゾールレベルの高さや、日内変動曲線下面積の大きさ、および夜間の低下幅が少ないことが、空腹時血糖の有意な上昇と関連することが分かった(いずれもP<0.05)。.「コルチゾールレベルは夕方以降に低くなるはずだが、ストレス負荷のある人は、夜間のコルチゾールと血糖レベルがともに高くなり、血糖コントロールに影響が現われる。また、コルチゾール分泌が亢進すると食欲が高まる。そのようなときに、もしストレスを感じているとしたら、その人は野菜を食べようとはせず、高炭水化物、高糖質の食べ物に手を伸ばすだろう」とJoseph氏は言う。.論文を査読した米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの内分泌専門医であるAkankasha Goyal氏は、この研究で示された知見について、「多くの患者が経験的に既に感じていることを証明したもの」とし、「ストレスは血糖コントロールを悪化させる可能性がある。この研究結果は、糖尿病患者がストレスのコントロール策を講じる動機づけになるかもしれない」と述べている。.Goyal氏は、コルチゾールのことを「double whammy(ダブルパンチ)」と表現する。その理由は、コルチゾールは肝臓の糖新生を増やすだけでなく、膵臓からのインスリン分泌を減らすという二重の経路で高血糖に拍車をかけるからだ。加えて2型糖尿病患者では、インスリン抵抗性のためインスリンを効果的に利用できず、血糖値がより上昇してしまう。.このようなストレスによる血糖コントロールへの悪影響を防ぐ方法、特にコロナ禍でのその対策についてGoyal氏は、「可能なら運動をすること」とし、ウォーキングやヨガ、太極拳、またはダンベルを使った筋力トレーニングを勧めている。また、本を読んだり、絵を描いたりするのも良いという。Goyal氏は、これらによるストレスの緩和は"副作用のない薬"だとしている。.またJoseph氏も「糖尿病患者は疾患管理の一環として、ストレス緩和を心がける必要がある」と述べ、「定期的な運動、7~8時間の睡眠、ヨガ、瞑想、音楽鑑賞、健康的な食事」などのアドバイスをしている。(HealthDay News 2020年7月14日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/stressful-days-worse-blood-sugar-control-for-people-with-diabetes-759473.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.