新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、多くの人々に精神的および経済的な影響を与えているが、特に、米国人が被っている影響は、他の高所得国の人々と比べてはるかに大きいとする調査結果を、米コモンウェルス財団が8月6日に公表した。この調査はコモンウェルス財団が、世界の高所得国全10カ国(米国、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、英国)の18歳以上の成人8,259人を対象に、COVID-19のパンデミックが人々のウェルビーイングに与えた初期(2020年3〜5月)の影響を調査したもの。同財団では、過去数十年にわたって世界各国の医療システムを比較検討してきた。しかし、今回は、COVID-19のパンデミックにより、同じタイミングで同様の危機に直面した国々の状況を比較できたという点で、これまでとは違う、貴重な調査になったという。その主な結果は、以下の通りである。.・米国では、成人の3分の1(33%)が、パンデミックの間に耐え難いストレスや不安、深い悲しみを経験したと回答。他国で同様の回答をした人の割合は、英国とカナダで26%、フランスで24%、オーストラリアとニュージーランドで23%、スウェーデンで18%、オランダで14%、ノルウェーで10%であった。.・米国では、「基本的な生活必需品を購入できない」「貯金を使い果たした」などの経済的困難に直面した経験がある成人の割合が31%に上った。この割合はカナダ(24%)とオーストラリア(21%)でも高く、逆に、ドイツ(6%)とオランダ(7%)では低かった。.・米国では、パンデミックに対する政府の対応を支持する国民が少なく、ドナルド・トランプ大統領の対応について「良い」または「とても良い」と回答した人は、わずか33%にとどまった。一方、米国以外の国では、49%(英国)〜95%(ドイツ)とほぼ半数以上の人が、大統領や首相のパンデミック対策を評価すると回答した。.・必要なメンタルヘルスケアを受けることができた成人の割合は、米国では31%にとどまっており、英国でも32%と低めであったが、カナダでは47%、オーストラリアでは54%に上った。.こうした調査結果について、同財団バイスプレジデントのReginald Williams II氏は、「米国の成人は他の9カ国の高所得国の成人と比べて、COVID-19のパンデミックによる精神面や経済面への影響をより強く受けていたことが分かった」と説明する。.また、同財団会長のDavid Blumenthal氏は、「多くの国々で経済活動が再開される中、米国では依然として、以前の仕事や日常生活に戻ることが難しい状況にある」と指摘。その上で、「米国ではCOVID-19の確定診断例や死亡例が増加し続けている。したがって、マスク着用やソーシャルディスタンスの保持、検査体制および接触者追跡の強化といった、COVID-19感染拡大防止における有効性が確認されている公衆衛生上の対策を講じる必要がある」としている。.一方、同財団政策・調査部門のシニア・バイスプレジデントを務めるEric Schneider氏は、「COVID-19がもたらした危機は、米国の医療のあり方の弱点を浮き彫りにした」と話す。そして、米国以外の国々の医療システムに共通する特徴として、国民皆保険制度の存在やプライマリケア医へのアクセスの良さ、困難な状況にある国民への社会的サポート体制の充実などを挙げ、これらがCOVID-19による精神面や経済面への影響の軽減に寄与したのではないかとの見方を示している。(HealthDay News 2020年8月6日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/covid-19-causing-more-stress-in-america-than-other-nations-survey-760175.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.