地球温暖化は今後、世界中の人々に影響を及ぼすものとみられているが、既に温暖化による激しい雷雨が、高齢者の呼吸器疾患に悪影響を与えていることを示唆する研究結果が明らかになった。米ハーバード大学医学大学院医療政策部門のChristopher Worsham氏らによるこの研究では、大規模な雷雨に先立って生じる大気の変化が、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持つ高齢患者の呼吸器症状を悪化させ、救急外来の受診リスクを高める可能性が示されたという。詳細は「JAMA Internal Medicine」8月10日オンライン版に発表された。Worsham氏らは今回、1999年1月~2012年12月の全米の気象データと、65歳以上のメディケア受給者4658万1,214人の同期間の追跡データを収集。これらのデータを用いて、大規模雷雨と呼吸器症状による救急外来受診の関連について検討した。対象者は、平均年齢が77.0歳、58.6%が女性で、全体の10.5%に喘息、26.5%にCOPDがあり、6.6%は喘息とCOPDの両方を持っていた。大規模雷雨は、雷の発生とともに降水量が多く、平均を上回る風速が観測された場合と定義した。.追跡期間中に、米国内では大規模な雷雨が82万2,095回発生し、この間の呼吸器症状による救急外来の受診件数は2211万8,934件であった。また、大規模雷雨の発生前日には、気温が上昇して粒子状物質の飛散数が増加するものの、雷雨の当日および翌日には気温が低下し、粒子状物質の飛散数も減少することが分かった。.Worsham氏らがデータを詳細に調べた結果、呼吸器症状による救急外来の受診件数は、大規模雷雨の前日に最も増加することが判明した。対象者100万人当たりの救急外来受診の平均増加件数は、喘息患者で6.3件、COPD患者で6.4件、喘息とCOPDの両方を持つ患者で9.4件、全体としては1.8件であった(増加率は順に、1.1%、1.2%、1.2%、1.2%、)。人口データに基づいて試算したところ、14年間の研究期間中に、大規模雷雨が引き起こした呼吸器症状による救急外来受診の増加件数は約5万2,000件と算出された。.このような結果についてWorsham氏は、「高齢者の呼吸器症状による救急外来の受診件数は、雷雨に先行して生じる気温の上昇や粒子状物質の飛散数の増加などの大気の変化と時を同じくして増加することが明らかになった」と説明している。粒子状物質は塵や埃、火災で生じる煤、自動車の排気ガス、工場などから排出される種々の排気物質などの微小な物質を指す。同氏によると、これらの微小物質は、人々の肺の中まで入り込みやすく、気道に刺激を与え、喘息やCOPDを増悪させる場合があるという。.ただし、この研究は高齢者を対象としているため、喘息をはじめとする呼吸器疾患の既往歴がある、より若い人たちも、雷雨による同様の影響を受けるのかどうかは不明だ。.また、将来的な気象パターンの変化についても確定的なことは言えないが、専門家の間では、温暖化の進行に伴い雷雨の激しさも増すことが予測されている。そのため、Worsham氏は、環境の変化が人々の健康に影響を与え得るという、今回の研究で得られた知見の重要性を強調する。.米国肺協会のスポークスパーソンで米ジョンズ・ホプキンス大学のMeredith McCormack氏もWorsham氏の見解に同意を示し、「大気汚染や高温に曝されることと、喘息やCOPDの増悪を関連付ける報告はこれまでにもあったが、激しい雷雨の前に、これらの疾患の病態に急激な変化が起こることが示されたのは初めてだ」とコメント。その上で、「この研究結果が、リスクの高い人々に対する今後の適応戦略に生かされることを期待する」と付け加えている。(HealthDay News 2020年8月11日).https://consumer.healthday.com/environmental-health-information-12/environment-health-news-233/as-climate-change-intensifies-storms-seniors-health-could-suffer-study-760280.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
地球温暖化は今後、世界中の人々に影響を及ぼすものとみられているが、既に温暖化による激しい雷雨が、高齢者の呼吸器疾患に悪影響を与えていることを示唆する研究結果が明らかになった。米ハーバード大学医学大学院医療政策部門のChristopher Worsham氏らによるこの研究では、大規模な雷雨に先立って生じる大気の変化が、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持つ高齢患者の呼吸器症状を悪化させ、救急外来の受診リスクを高める可能性が示されたという。詳細は「JAMA Internal Medicine」8月10日オンライン版に発表された。Worsham氏らは今回、1999年1月~2012年12月の全米の気象データと、65歳以上のメディケア受給者4658万1,214人の同期間の追跡データを収集。これらのデータを用いて、大規模雷雨と呼吸器症状による救急外来受診の関連について検討した。対象者は、平均年齢が77.0歳、58.6%が女性で、全体の10.5%に喘息、26.5%にCOPDがあり、6.6%は喘息とCOPDの両方を持っていた。大規模雷雨は、雷の発生とともに降水量が多く、平均を上回る風速が観測された場合と定義した。.追跡期間中に、米国内では大規模な雷雨が82万2,095回発生し、この間の呼吸器症状による救急外来の受診件数は2211万8,934件であった。また、大規模雷雨の発生前日には、気温が上昇して粒子状物質の飛散数が増加するものの、雷雨の当日および翌日には気温が低下し、粒子状物質の飛散数も減少することが分かった。.Worsham氏らがデータを詳細に調べた結果、呼吸器症状による救急外来の受診件数は、大規模雷雨の前日に最も増加することが判明した。対象者100万人当たりの救急外来受診の平均増加件数は、喘息患者で6.3件、COPD患者で6.4件、喘息とCOPDの両方を持つ患者で9.4件、全体としては1.8件であった(増加率は順に、1.1%、1.2%、1.2%、1.2%、)。人口データに基づいて試算したところ、14年間の研究期間中に、大規模雷雨が引き起こした呼吸器症状による救急外来受診の増加件数は約5万2,000件と算出された。.このような結果についてWorsham氏は、「高齢者の呼吸器症状による救急外来の受診件数は、雷雨に先行して生じる気温の上昇や粒子状物質の飛散数の増加などの大気の変化と時を同じくして増加することが明らかになった」と説明している。粒子状物質は塵や埃、火災で生じる煤、自動車の排気ガス、工場などから排出される種々の排気物質などの微小な物質を指す。同氏によると、これらの微小物質は、人々の肺の中まで入り込みやすく、気道に刺激を与え、喘息やCOPDを増悪させる場合があるという。.ただし、この研究は高齢者を対象としているため、喘息をはじめとする呼吸器疾患の既往歴がある、より若い人たちも、雷雨による同様の影響を受けるのかどうかは不明だ。.また、将来的な気象パターンの変化についても確定的なことは言えないが、専門家の間では、温暖化の進行に伴い雷雨の激しさも増すことが予測されている。そのため、Worsham氏は、環境の変化が人々の健康に影響を与え得るという、今回の研究で得られた知見の重要性を強調する。.米国肺協会のスポークスパーソンで米ジョンズ・ホプキンス大学のMeredith McCormack氏もWorsham氏の見解に同意を示し、「大気汚染や高温に曝されることと、喘息やCOPDの増悪を関連付ける報告はこれまでにもあったが、激しい雷雨の前に、これらの疾患の病態に急激な変化が起こることが示されたのは初めてだ」とコメント。その上で、「この研究結果が、リスクの高い人々に対する今後の適応戦略に生かされることを期待する」と付け加えている。(HealthDay News 2020年8月11日).https://consumer.healthday.com/environmental-health-information-12/environment-health-news-233/as-climate-change-intensifies-storms-seniors-health-could-suffer-study-760280.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.