朝食を食べないことと夜遅い時間に夕食を食べることが、蛋白尿の出現に関連していることが報告された。金沢市医師会との協力により、金沢大学附属病院栄養管理部の徳丸季聡氏、同大学大学院腎臓内科学の遠山直志氏、和田隆志氏らが、一般住民の健康診断データを用いて実施した追跡研究の結果で、「Nutrients」に8月19日掲載された。蛋白尿や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下で定義される慢性腎臓病(CKD)は、心血管疾患や末期腎不全のリスクであり、その発症抑制は公衆衛生上の重要な課題である。過剰なエネルギー摂取や栄養バランスの偏りは各種生活習慣病を介してCKD発症につながるが、今回の研究では、朝食の欠食などの好ましくない食習慣に着目して、蛋白尿出現との関連を後方視的に検討した。.解析対象は、1998~2014年に健診を受けた40歳以上の金沢市の住民のうち、ベースライン時のeGFRが60mL/分/1.73m2以上で1年以上追跡可能であり、蛋白尿陽性、食習慣などのデータがない人を除外した2万6,764人。平均年齢は、68±9歳、男性が44%、BMI22.8±3.1、eGFR77±12mL/分/1.73m2。.好ましくない食習慣は、健診の問診票に基づき以下の4項目を検討した。朝食の欠食(朝食を抜くことが週に3回以上ある。該当者は全体の9%)、遅い夕食(就寝前の2時間以内に夕食をとることが週に3回以上ある。同19%)、早食い(人と比較して食べる速度が速いかという問いに、「速い」「普通」「遅い」から「速い」と回答した人。同29%)、夕食後の間食(夕食後に3食以外の夜食をとることが週に3回以上ある。同16%)。.結果について、まずベースライン時のBMIと好ましくない食習慣の関連を見ると、検討した四つの食習慣のうち、朝食の欠食を除き該当者の方が有意にBMIが高かった(遅い夕食の該当者のBMIが23.0、非該当者は22.7。早食いは同順に23.3、22.5。夕食後の間食は23.1、22.7。すべてP<0.001)。朝食の欠食はベースライン時のBMIとの有意な関連は認めなかった(該当者22.8、非該当者22.7。P=0.788)。.平均追跡期間3.4年で2,844人(10.6%)に蛋白尿が出現し、1,000人年当たりの罹患率は32.7だった。蛋白尿出現に影響する可能性のある、年齢、性別、BMI、収縮期血圧、eGFR、ヘモグロビン、中性脂肪、総コレステロール、HbA1c、尿酸、飲酒・喫煙習慣で調整の上、Cox比例ハザードモデルを用いて好ましくない食習慣と蛋白尿出現との関連を検討した。.その結果、朝食の欠食〔ハザード比(HR)1.15(95%信頼区間1.01~1.31)〕および遅い夕食〔HR1.12(同1.02~1.22)〕と、蛋白尿出現との間に有意な関連が認められた。早食いと夕食後の間食は有意な関連を認めなかった。なお、朝食の欠食と遅い夕食との間に交互作用は認められなかった(P=0.222)。また、年齢(65歳未満/以上)、性別、BMI(25未満/以上)で層別化した解析では、それぞれの群間に交互作用は認められなかった。.この結果から、研究グループでは「朝食の欠食と遅い夕食は、蛋白尿の出現に関連している可能性がある。一般住民からのCKD新規発症を抑制することが重要であり、摂取量や栄養バランスだけでなく、これらの是正可能な食習慣の改善を促すことが、それに寄与する可能性がある」と述べている。.なお、著者らは今回の研究はあくまで観察研究であり、今後は因果関係などの検証が必要としているが、遅い時間帯の夕食は夜間のコルチゾールレベルの上昇、朝食の欠食は空腹ストレスを介して、ともに血圧を上昇させることなどの関与を考察している。(HealthDay News 2020年9月14日).Abstract/Full Texthttps://www.mdpi.com/2072-6643/12/9/2511.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
朝食を食べないことと夜遅い時間に夕食を食べることが、蛋白尿の出現に関連していることが報告された。金沢市医師会との協力により、金沢大学附属病院栄養管理部の徳丸季聡氏、同大学大学院腎臓内科学の遠山直志氏、和田隆志氏らが、一般住民の健康診断データを用いて実施した追跡研究の結果で、「Nutrients」に8月19日掲載された。蛋白尿や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下で定義される慢性腎臓病(CKD)は、心血管疾患や末期腎不全のリスクであり、その発症抑制は公衆衛生上の重要な課題である。過剰なエネルギー摂取や栄養バランスの偏りは各種生活習慣病を介してCKD発症につながるが、今回の研究では、朝食の欠食などの好ましくない食習慣に着目して、蛋白尿出現との関連を後方視的に検討した。.解析対象は、1998~2014年に健診を受けた40歳以上の金沢市の住民のうち、ベースライン時のeGFRが60mL/分/1.73m2以上で1年以上追跡可能であり、蛋白尿陽性、食習慣などのデータがない人を除外した2万6,764人。平均年齢は、68±9歳、男性が44%、BMI22.8±3.1、eGFR77±12mL/分/1.73m2。.好ましくない食習慣は、健診の問診票に基づき以下の4項目を検討した。朝食の欠食(朝食を抜くことが週に3回以上ある。該当者は全体の9%)、遅い夕食(就寝前の2時間以内に夕食をとることが週に3回以上ある。同19%)、早食い(人と比較して食べる速度が速いかという問いに、「速い」「普通」「遅い」から「速い」と回答した人。同29%)、夕食後の間食(夕食後に3食以外の夜食をとることが週に3回以上ある。同16%)。.結果について、まずベースライン時のBMIと好ましくない食習慣の関連を見ると、検討した四つの食習慣のうち、朝食の欠食を除き該当者の方が有意にBMIが高かった(遅い夕食の該当者のBMIが23.0、非該当者は22.7。早食いは同順に23.3、22.5。夕食後の間食は23.1、22.7。すべてP<0.001)。朝食の欠食はベースライン時のBMIとの有意な関連は認めなかった(該当者22.8、非該当者22.7。P=0.788)。.平均追跡期間3.4年で2,844人(10.6%)に蛋白尿が出現し、1,000人年当たりの罹患率は32.7だった。蛋白尿出現に影響する可能性のある、年齢、性別、BMI、収縮期血圧、eGFR、ヘモグロビン、中性脂肪、総コレステロール、HbA1c、尿酸、飲酒・喫煙習慣で調整の上、Cox比例ハザードモデルを用いて好ましくない食習慣と蛋白尿出現との関連を検討した。.その結果、朝食の欠食〔ハザード比(HR)1.15(95%信頼区間1.01~1.31)〕および遅い夕食〔HR1.12(同1.02~1.22)〕と、蛋白尿出現との間に有意な関連が認められた。早食いと夕食後の間食は有意な関連を認めなかった。なお、朝食の欠食と遅い夕食との間に交互作用は認められなかった(P=0.222)。また、年齢(65歳未満/以上)、性別、BMI(25未満/以上)で層別化した解析では、それぞれの群間に交互作用は認められなかった。.この結果から、研究グループでは「朝食の欠食と遅い夕食は、蛋白尿の出現に関連している可能性がある。一般住民からのCKD新規発症を抑制することが重要であり、摂取量や栄養バランスだけでなく、これらの是正可能な食習慣の改善を促すことが、それに寄与する可能性がある」と述べている。.なお、著者らは今回の研究はあくまで観察研究であり、今後は因果関係などの検証が必要としているが、遅い時間帯の夕食は夜間のコルチゾールレベルの上昇、朝食の欠食は空腹ストレスを介して、ともに血圧を上昇させることなどの関与を考察している。(HealthDay News 2020年9月14日).Abstract/Full Texthttps://www.mdpi.com/2072-6643/12/9/2511.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.