6歳以上の1型糖尿病患児へのクローズドループ型インスリンポンプ(Control-IQ)の有用性に関する報告が、「New England Journal of Medicine」8月27日オンライン版に掲載された。従来の方法に比べて血糖値が目標範囲内にある時間が、1日当たり2.6時間、有意に延長したという。米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)の資金提供により実施されたこの研究に基づき、米食品医薬品局(FDA)は、6歳以上の小児へのControl-IQ使用を承認した。米コロラド大学小児糖尿病センターのR. Paul Wadwa氏ら、国際糖尿病クローズドループ(The International Diabetes Closed Loop;iDCL)トライアル研究グループは、インスリン注入速度を自動的にコントロールするクローズドループ型インスリンポンプ(人工膵臓とも呼ばれる)と、従来型インスリンポンプに連続血糖測定(CGM)を併用して患者自身が注入速度を設定する方法の有効性と安全性を、多施設共同研究で比較検討した。.6~13歳の1型糖尿病患児101人を、クローズドループ群78人、対照群23人に無作為に割付け、16週間観察。ベースライン時のHbA1cは5.7~10.1%で、81人は研究参加前からインスリンポンプを利用しており、20人はインスリン頻回注射療法を行っていた。有効性については、血糖値が管理目標(70~180mg/dL)の範囲にあった時間の割合(time in range;TIR)で評価した。観察期間中、対照群の1人が脱落し、解析は計100人で行われた。.クローズドループ群のTIRは、ベースライン時に53±17%、観察期間中の平均が67±10%、対照群は同順に51±16%、55±13%であり、観察期間中の群間差は11ポイント(95%信頼区間7~14、P<0.001)だった。この差は1日当たり2.6時間の差に相当する。時間帯別にTIRを比較すると、日中(6~24時)はクローズドループ群63%、対照群56%、夜間(0~6時)は80%、54%であり、低血糖の発症リスクが高い夜間睡眠中の群間差が、より大きかった。.年齢、性別、BMI、世帯収入、親の教育歴、研究参加以前の治療内容などで層別化し比較した結果も、すべてクローズドループ群の方が対照群よりTIRが高かった。HbA1c7%未満の達成率は、クローズドループ群が51%、対照群は18%だった。.有害事象はクローズドループ群15人(19%)、対照群で2人(9%)から報告され、100人年当たりの発生数は65.3、41.3で有意差は認められなかった(P=0.50)。重症低血糖やケトアシドーシスは、両群いずれでも発生しなかった。.NIDDK糖尿病テクノロジー部門ディレクターのGuillermo Arreaza-Rubín氏によると、「現状では、1型糖尿病患児のうち血糖値を基準値内に管理できているのは5人に1人未満だ。不十分な血糖管理は、長期的に見た場合、患児の成長後の健康と生活の質(QOL)に深刻な影響を与える可能性がある」と解説した上で、「クローズドループ型インスリンポンプはこれまでの研究で、14歳以上の患者には安全で有効であることが示されていたが、今回の研究で、より低年齢の子どもにも有用であることが確認できた」と述べている。.前出のWadwa氏は、今回の結果について、特に夜間の血糖コントロールが安定したことに注目している。同氏は、「子どもたちが従来よりも安全であることを知った親や介護者は、夜間、良く眠ることができるだろう。人工膵臓のテクノロジーは、1型糖尿病患児の家族が子どもの糖尿病のケアのために割く時間を減らすことを可能にする。そして子どもたちは、自分たちの時間を謳歌できる」と語っている。(HealthDay News 2020年8月28日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/type-i-diabetes-news-182/artificial-pancreas-controls-diabetes-in-kids-6-and-up-clinical-trial-shows-760753.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
6歳以上の1型糖尿病患児へのクローズドループ型インスリンポンプ(Control-IQ)の有用性に関する報告が、「New England Journal of Medicine」8月27日オンライン版に掲載された。従来の方法に比べて血糖値が目標範囲内にある時間が、1日当たり2.6時間、有意に延長したという。米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)の資金提供により実施されたこの研究に基づき、米食品医薬品局(FDA)は、6歳以上の小児へのControl-IQ使用を承認した。米コロラド大学小児糖尿病センターのR. Paul Wadwa氏ら、国際糖尿病クローズドループ(The International Diabetes Closed Loop;iDCL)トライアル研究グループは、インスリン注入速度を自動的にコントロールするクローズドループ型インスリンポンプ(人工膵臓とも呼ばれる)と、従来型インスリンポンプに連続血糖測定(CGM)を併用して患者自身が注入速度を設定する方法の有効性と安全性を、多施設共同研究で比較検討した。.6~13歳の1型糖尿病患児101人を、クローズドループ群78人、対照群23人に無作為に割付け、16週間観察。ベースライン時のHbA1cは5.7~10.1%で、81人は研究参加前からインスリンポンプを利用しており、20人はインスリン頻回注射療法を行っていた。有効性については、血糖値が管理目標(70~180mg/dL)の範囲にあった時間の割合(time in range;TIR)で評価した。観察期間中、対照群の1人が脱落し、解析は計100人で行われた。.クローズドループ群のTIRは、ベースライン時に53±17%、観察期間中の平均が67±10%、対照群は同順に51±16%、55±13%であり、観察期間中の群間差は11ポイント(95%信頼区間7~14、P<0.001)だった。この差は1日当たり2.6時間の差に相当する。時間帯別にTIRを比較すると、日中(6~24時)はクローズドループ群63%、対照群56%、夜間(0~6時)は80%、54%であり、低血糖の発症リスクが高い夜間睡眠中の群間差が、より大きかった。.年齢、性別、BMI、世帯収入、親の教育歴、研究参加以前の治療内容などで層別化し比較した結果も、すべてクローズドループ群の方が対照群よりTIRが高かった。HbA1c7%未満の達成率は、クローズドループ群が51%、対照群は18%だった。.有害事象はクローズドループ群15人(19%)、対照群で2人(9%)から報告され、100人年当たりの発生数は65.3、41.3で有意差は認められなかった(P=0.50)。重症低血糖やケトアシドーシスは、両群いずれでも発生しなかった。.NIDDK糖尿病テクノロジー部門ディレクターのGuillermo Arreaza-Rubín氏によると、「現状では、1型糖尿病患児のうち血糖値を基準値内に管理できているのは5人に1人未満だ。不十分な血糖管理は、長期的に見た場合、患児の成長後の健康と生活の質(QOL)に深刻な影響を与える可能性がある」と解説した上で、「クローズドループ型インスリンポンプはこれまでの研究で、14歳以上の患者には安全で有効であることが示されていたが、今回の研究で、より低年齢の子どもにも有用であることが確認できた」と述べている。.前出のWadwa氏は、今回の結果について、特に夜間の血糖コントロールが安定したことに注目している。同氏は、「子どもたちが従来よりも安全であることを知った親や介護者は、夜間、良く眠ることができるだろう。人工膵臓のテクノロジーは、1型糖尿病患児の家族が子どもの糖尿病のケアのために割く時間を減らすことを可能にする。そして子どもたちは、自分たちの時間を謳歌できる」と語っている。(HealthDay News 2020年8月28日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/type-i-diabetes-news-182/artificial-pancreas-controls-diabetes-in-kids-6-and-up-clinical-trial-shows-760753.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.