スマートフォンには、心拍数、血圧、体重などを簡単に記録できる、無料または安価な健康管理アプリがたくさんあり、使用者が急増している。しかし、そうしたアプリを使用することで、個人の健康データが、知らないうちに第三者に渡る危険性があることについて、専門家や医療団体が注意を呼び掛け始めている。2020年5月には、米国医師会(AMA)が立法機関や医療業界に対し、デジタル化時代に即した、患者のあらゆるプライバシーを保護するための規制を設けるよう要求した。このような健康管理アプリの危険性に関する研究結果が、米国心臓協会(AHA)のHypertension 2020 Scientific Sessions(バーチャル開催、9月10~13日)で発表され、「Hypertension」9月号(Issue Suppl_1)に、その抄録が掲載された。研究論文の上席著者である、米テキサス大学医学部のMohammed Abdullah氏は、現時点では、健康管理アプリのユーザーのプライバシーは、ほとんど保護されておらず、個人情報がテックジャイアントやマーケティング会社に収集されて、広告ターゲットにされる可能性があると述べている。.Abdullah氏らの研究では、35種類の糖尿病アプリについて調査が行われた。その結果、プライバシーポリシーの中でデータの共有を否定しているものも含め、全てのアプリがデータを第三者に提供していることが明らかになった。.Abdullah氏は、「現時点では、こうした情報を企業がどう活用するかについて、制限は設けられていない。テクノロジーと医療が結び付きを強め、企業が健康関連のアプリに巨額の資金をつぎ込むようになれば、抑制と均衡を図ることはますます重要になってくる」と指摘する。その理由は、1996年に制定されたHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)が、医療アプリには適用されないためだという。.2020年7月に「JAMA Network Open」に掲載された、デジタル化時代の健康情報に関わるプライバシーに関する論文の著者である、米ペンシルベニア大学Leonard Davis医療経済研究所のDavid Grande氏は、現在の状況について、「西部開拓時代に丸腰のままいるようなもの」と喩えている。そして、「健康情報のプライバシーに対する懸念は、驚異的な速さで高まってはいるものの、いまだにその見方は現実に追いついていない」と指摘する。.その例として、多くの米国人が、収集された健康情報が永久的にオンラインに残るということを認識していないことを挙げる。同氏によると、「忘れられる権利(消去権)」によりインターネット上のプライバシーが多少は保護されているヨーロッパとは異なり、米国で、健康に関するデータが消滅することはないという。.それゆえGrande氏は、「アプリに記載されている、長くて難解なプライバシーポリシーを読みたいと思う人はまずいないだろう。しかし、5分間だけ時間を割いてその内容を読み、"同意する"を押すことで自分のデータがどうなるのかを理解した上で、そのアプリを使う価値があるか否かを判断することが大切だ」と助言している。.注意すべきポイントの一つは、アプリに表示される広告である。「アプリを開いて広告が出たら、すでに個人データが何らかの形で第三者に送られていると考えて間違いない」とAbdullah氏はいう。被害を未然に防ぐ方法として、アプリが使いにくくなるかもしれないが、位置情報など、アプリで自動的に設定される内容を確認して変更することが有効だという。.Abdullah氏は、「多くのインターネットサービスと同様、健康管理アプリのメーカーは、広告料や第三者へのデータの販売によって利益を得ている。しかし、立法機関が厳格なガイドラインを制定し、消費者も意識改革を行うことにより、このビジネスモデルも変わる可能性がある」と述べている。.なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは、予備的なものとみなされる。(American Heart Association News 2020年9月10日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/misc-stroke-related-heart-news-360/aha-news-health-apps-pose-privacy-risks-but-experts-offer-this-advice-761145.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
スマートフォンには、心拍数、血圧、体重などを簡単に記録できる、無料または安価な健康管理アプリがたくさんあり、使用者が急増している。しかし、そうしたアプリを使用することで、個人の健康データが、知らないうちに第三者に渡る危険性があることについて、専門家や医療団体が注意を呼び掛け始めている。2020年5月には、米国医師会(AMA)が立法機関や医療業界に対し、デジタル化時代に即した、患者のあらゆるプライバシーを保護するための規制を設けるよう要求した。このような健康管理アプリの危険性に関する研究結果が、米国心臓協会(AHA)のHypertension 2020 Scientific Sessions(バーチャル開催、9月10~13日)で発表され、「Hypertension」9月号(Issue Suppl_1)に、その抄録が掲載された。研究論文の上席著者である、米テキサス大学医学部のMohammed Abdullah氏は、現時点では、健康管理アプリのユーザーのプライバシーは、ほとんど保護されておらず、個人情報がテックジャイアントやマーケティング会社に収集されて、広告ターゲットにされる可能性があると述べている。.Abdullah氏らの研究では、35種類の糖尿病アプリについて調査が行われた。その結果、プライバシーポリシーの中でデータの共有を否定しているものも含め、全てのアプリがデータを第三者に提供していることが明らかになった。.Abdullah氏は、「現時点では、こうした情報を企業がどう活用するかについて、制限は設けられていない。テクノロジーと医療が結び付きを強め、企業が健康関連のアプリに巨額の資金をつぎ込むようになれば、抑制と均衡を図ることはますます重要になってくる」と指摘する。その理由は、1996年に制定されたHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)が、医療アプリには適用されないためだという。.2020年7月に「JAMA Network Open」に掲載された、デジタル化時代の健康情報に関わるプライバシーに関する論文の著者である、米ペンシルベニア大学Leonard Davis医療経済研究所のDavid Grande氏は、現在の状況について、「西部開拓時代に丸腰のままいるようなもの」と喩えている。そして、「健康情報のプライバシーに対する懸念は、驚異的な速さで高まってはいるものの、いまだにその見方は現実に追いついていない」と指摘する。.その例として、多くの米国人が、収集された健康情報が永久的にオンラインに残るということを認識していないことを挙げる。同氏によると、「忘れられる権利(消去権)」によりインターネット上のプライバシーが多少は保護されているヨーロッパとは異なり、米国で、健康に関するデータが消滅することはないという。.それゆえGrande氏は、「アプリに記載されている、長くて難解なプライバシーポリシーを読みたいと思う人はまずいないだろう。しかし、5分間だけ時間を割いてその内容を読み、"同意する"を押すことで自分のデータがどうなるのかを理解した上で、そのアプリを使う価値があるか否かを判断することが大切だ」と助言している。.注意すべきポイントの一つは、アプリに表示される広告である。「アプリを開いて広告が出たら、すでに個人データが何らかの形で第三者に送られていると考えて間違いない」とAbdullah氏はいう。被害を未然に防ぐ方法として、アプリが使いにくくなるかもしれないが、位置情報など、アプリで自動的に設定される内容を確認して変更することが有効だという。.Abdullah氏は、「多くのインターネットサービスと同様、健康管理アプリのメーカーは、広告料や第三者へのデータの販売によって利益を得ている。しかし、立法機関が厳格なガイドラインを制定し、消費者も意識改革を行うことにより、このビジネスモデルも変わる可能性がある」と述べている。.なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは、予備的なものとみなされる。(American Heart Association News 2020年9月10日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/misc-stroke-related-heart-news-360/aha-news-health-apps-pose-privacy-risks-but-experts-offer-this-advice-761145.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.