脂肪が多くて太い脚の人は、高血圧になりにくい可能性があるとする研究結果が、米Rutgers New Jersey Medical SchoolのAayush Visaria氏らにより報告された。詳細は、米国心臓協会(AHA)のHypertension 2020 Scientific Sessions(バーチャル開催、9月10〜13日)で発表され、「Hypertension」9月号(Issue Suppl_1)にその抄録が掲載された。この研究で対象とされたのは、米国国民健康栄養調査(NHANES)に2011〜2016年に登録された、20〜59歳の成人5,997人(平均年齢37.4歳、49%が女性)。対象者に妊婦は含まれておらず、降圧薬使用者や心血管疾患の既往者もいなかった。両下肢の総脂肪量を二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)で測定して体全体の脂肪量と比較し、その割合が男性では34%以上、女性では39%以上の場合を脂肪量が多い(脚が太い)と定義した。血圧については、130/80mmHgを高血圧とし、収縮期血圧のみが高い孤立性収縮期高血圧(ISH)、拡張期血圧のみが高い孤立性拡張期高血圧(IDH)、収縮期・拡張期の両方が高い収縮期・拡張期高血圧(SDH)の3種類に分類した。.多項ロジスティック回帰分析の結果、太い脚の人は細い脚の人と比べて、IDHになる可能性が53%、ISHになる可能性が39%、SDHになる可能性が61%、それぞれ低いことが明らかになった。年齢、性別、人種/民族、教育歴、喫煙、飲酒、コレステロール値、腰周りの脂肪レベルなどの因子を調整した後でも、脚が太い人の高血圧発症リスクは低いままであった(それぞれ、31%、24%、34%の低下)。.こうした結果を受けてVisaria氏は、「問題となるのは、脂肪の分布の仕方なのかもしれない。どんな場合であれ、脂肪は良くないと考えられているが、脚の脂肪は、われわれが思っているほど悪いものではないのかもしれない」と述べている。過去の研究では、腹部についた過剰な脂肪が、心疾患や糖尿病のリスクを高める可能性が示唆されている。同氏は、「腹部脂肪が重要なのは、腹部に存在する、肝臓、膵臓、腸などの臓器全てが、その影響を受けるからだ。脂肪が多過ぎると、これらの臓器は正常に機能できなくなる」と説明する。.だからといって、脂肪の多い部分が腹部ではなく下肢であるのなら、健康的な体重を維持しなくていいというわけではない。同氏は、「われわれの研究結果は、腹部に脂肪が多いよりは脚部に多い方が良いということを示すものだ。どこであれ、脂肪が多過ぎるのは良くない」と強調する。.ただし、この研究では、脚部の脂肪の多さと血圧の低さとの関連が示されたに過ぎない。また、研究対象者の年齢も20〜59歳であったため、得られた調査結果が60歳以上の人々には該当しない可能性もあるという。.この研究報告を受けて、米スタンフォード大学高血圧センター長のVivek Bhalla氏は、「この研究結果を、脚に脂肪が多い人は高血圧を発症しにくいという風に解釈するべきではない。ただし、非常に興味深い研究であり、今後の研究を通じて、血圧低下の理由が解明されることを期待する」と述べている。.また、Bhalla氏は、今回の研究では脂肪の分布が高血圧に及ぼす影響については明らかにされていない点を指摘し、「脂肪は蓄積されている場所により、作用が異なる可能性がある」と推測する。一方、Visaria氏は、この研究では、脚の脂肪が多い人ではトリグリセライド値が低かった点を指摘し、トリグリセライドが何らかの関連を持つ可能性を示唆している。.Bhalla氏は、血圧を下げるためにすぐにできることとして、1)塩分摂取量を減らす、2)定期的に運動を行う、3)十分な睡眠をとる、4)ストレスを減らす、5)飲酒量を減らす、を挙げている。.なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは、予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2020年9月10日).https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/blood-pressure-news-70/do-fatter-legs-mean-lower-blood-pressure-761123.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
脂肪が多くて太い脚の人は、高血圧になりにくい可能性があるとする研究結果が、米Rutgers New Jersey Medical SchoolのAayush Visaria氏らにより報告された。詳細は、米国心臓協会(AHA)のHypertension 2020 Scientific Sessions(バーチャル開催、9月10〜13日)で発表され、「Hypertension」9月号(Issue Suppl_1)にその抄録が掲載された。この研究で対象とされたのは、米国国民健康栄養調査(NHANES)に2011〜2016年に登録された、20〜59歳の成人5,997人(平均年齢37.4歳、49%が女性)。対象者に妊婦は含まれておらず、降圧薬使用者や心血管疾患の既往者もいなかった。両下肢の総脂肪量を二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)で測定して体全体の脂肪量と比較し、その割合が男性では34%以上、女性では39%以上の場合を脂肪量が多い(脚が太い)と定義した。血圧については、130/80mmHgを高血圧とし、収縮期血圧のみが高い孤立性収縮期高血圧(ISH)、拡張期血圧のみが高い孤立性拡張期高血圧(IDH)、収縮期・拡張期の両方が高い収縮期・拡張期高血圧(SDH)の3種類に分類した。.多項ロジスティック回帰分析の結果、太い脚の人は細い脚の人と比べて、IDHになる可能性が53%、ISHになる可能性が39%、SDHになる可能性が61%、それぞれ低いことが明らかになった。年齢、性別、人種/民族、教育歴、喫煙、飲酒、コレステロール値、腰周りの脂肪レベルなどの因子を調整した後でも、脚が太い人の高血圧発症リスクは低いままであった(それぞれ、31%、24%、34%の低下)。.こうした結果を受けてVisaria氏は、「問題となるのは、脂肪の分布の仕方なのかもしれない。どんな場合であれ、脂肪は良くないと考えられているが、脚の脂肪は、われわれが思っているほど悪いものではないのかもしれない」と述べている。過去の研究では、腹部についた過剰な脂肪が、心疾患や糖尿病のリスクを高める可能性が示唆されている。同氏は、「腹部脂肪が重要なのは、腹部に存在する、肝臓、膵臓、腸などの臓器全てが、その影響を受けるからだ。脂肪が多過ぎると、これらの臓器は正常に機能できなくなる」と説明する。.だからといって、脂肪の多い部分が腹部ではなく下肢であるのなら、健康的な体重を維持しなくていいというわけではない。同氏は、「われわれの研究結果は、腹部に脂肪が多いよりは脚部に多い方が良いということを示すものだ。どこであれ、脂肪が多過ぎるのは良くない」と強調する。.ただし、この研究では、脚部の脂肪の多さと血圧の低さとの関連が示されたに過ぎない。また、研究対象者の年齢も20〜59歳であったため、得られた調査結果が60歳以上の人々には該当しない可能性もあるという。.この研究報告を受けて、米スタンフォード大学高血圧センター長のVivek Bhalla氏は、「この研究結果を、脚に脂肪が多い人は高血圧を発症しにくいという風に解釈するべきではない。ただし、非常に興味深い研究であり、今後の研究を通じて、血圧低下の理由が解明されることを期待する」と述べている。.また、Bhalla氏は、今回の研究では脂肪の分布が高血圧に及ぼす影響については明らかにされていない点を指摘し、「脂肪は蓄積されている場所により、作用が異なる可能性がある」と推測する。一方、Visaria氏は、この研究では、脚の脂肪が多い人ではトリグリセライド値が低かった点を指摘し、トリグリセライドが何らかの関連を持つ可能性を示唆している。.Bhalla氏は、血圧を下げるためにすぐにできることとして、1)塩分摂取量を減らす、2)定期的に運動を行う、3)十分な睡眠をとる、4)ストレスを減らす、5)飲酒量を減らす、を挙げている。.なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは、予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2020年9月10日).https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/blood-pressure-news-70/do-fatter-legs-mean-lower-blood-pressure-761123.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.