逆境を乗り越えるのに必要なレジリエンスを発揮する力に、遺伝は関係ない。必要なのは、その力を発揮するための"筋肉"を身に付けるスキルだ――。専門家たちは今、そのように助言している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに加え、経済状況の悪化という二重の厄災に見舞われ始めてから、約6カ月が経過した。このような時こそ、レジリエンスを鍛える良い機会かもしれない。.レジリエンスとは、ストレスや自分に対する要求の変化に直面しても、揺らぐことなくそれを跳ね返し、さらに成長する力のことだ。米国デラウェア州の心理学者、Vanessa Downing氏は「これまで長い間、レジリエンスは人が生まれ持った特性だと考えられてきた。しかし、レジリエンスのスキルは、教えたり、学び取ったりすることのできるものだということが、明らかになってきた」と説明する。.デラウェア州で最大規模のヘルスケアシステムであるChristiana Care Center for WorkLife WellbeingのディレクターであるDowning氏は、長年にわたって心疾患患者やその介護者に対して、レジリエンスを身に付けてもらう取り組みを行ってきた。同氏は「人々が苦労しながらCOVID-19パンデミックに立ち向おうとしている今、レジリエンスの本当の意味や、レジリエンスを持ち続ける方法を理解することの重要性が、これまで以上に高まってきた」と話す。.同様に、米シアトル小児病院の小児がん専門医で米ワシントン大学医学部にも所属するAbby Rosenberg氏も、「レジリエンスが求められるのは、人生において困難に直面した時だ」と指摘する。そして「レジリエンスは、難局を乗り越え、自分の心身の状態を良好に保つために必要な力を発揮するプロセスだと言える。レジリエンスが備わってくれば、『確かに今は厳しい状況だ。しかし、自分はこれを乗り越えられる』と考えられるようになる」と説明する。.レジリエンスには心理的なメリットだけでなく、高血圧やうつ病、心疾患などのリスクを軽減する可能性のあることが近年、複数の研究で示唆されている。例えば昨年、「Journal of the American Heart Association」で、心血管疾患のリスク因子が同等であっても、レジリエンスに優れている人は心血管疾患の罹患率が低いことが報告された。2018年に「Psychological Science」に掲載された論文では、ストレスに対してネガティブな反応をする人は、10年後の慢性疾患罹患リスクが高いことが示された。.では、レジリエンスの力を高めるにはどうしたら良いのだろうか? Downing氏は、「十分な睡眠と栄養が大切であり、また、他者との間に物理的な距離を維持しなくてはならない状況でも、社会的なつながりは保ち続けることが重要だ」と説明する。また現在、仕事を自宅でしている人が少なくないが、過労やバーンアウト(燃え尽き状態)にならないために、生活のスケジュールを決めて、昼食の時間や休憩時間をきちんと確保すべきだと呼び掛けている。.一方、Rosenberg氏は、過去に自分が困難な局面をどのように乗り越えてきたか、その経験を思い出すことで、今の自分に何が必要なのかに気付くことができ、助けを求めることも可能になると話す。.Downing氏によると、ヒトの脳はポジティブなことよりもネガティブなことの方が気になり、それが記憶に残りやすいのだという。これに対して、例えば、1日の終わりにその日に起こった良いことを記録するといった方法を、対策として推奨。「取り越し苦労しているより、現在の瞬間に意識を集中する方法を見つけるべきだ。パンデミックによる不確実性は、今よりも大きくなる可能性がある。しかし、われわれがそれを乗り越えられないはずがない」と述べている。(American Heart Association News 2020年9月9日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/misc-stroke-related-heart-news-360/aha-news-in-these-tough-times-focus-on-resilience-761096.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
逆境を乗り越えるのに必要なレジリエンスを発揮する力に、遺伝は関係ない。必要なのは、その力を発揮するための"筋肉"を身に付けるスキルだ――。専門家たちは今、そのように助言している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに加え、経済状況の悪化という二重の厄災に見舞われ始めてから、約6カ月が経過した。このような時こそ、レジリエンスを鍛える良い機会かもしれない。.レジリエンスとは、ストレスや自分に対する要求の変化に直面しても、揺らぐことなくそれを跳ね返し、さらに成長する力のことだ。米国デラウェア州の心理学者、Vanessa Downing氏は「これまで長い間、レジリエンスは人が生まれ持った特性だと考えられてきた。しかし、レジリエンスのスキルは、教えたり、学び取ったりすることのできるものだということが、明らかになってきた」と説明する。.デラウェア州で最大規模のヘルスケアシステムであるChristiana Care Center for WorkLife WellbeingのディレクターであるDowning氏は、長年にわたって心疾患患者やその介護者に対して、レジリエンスを身に付けてもらう取り組みを行ってきた。同氏は「人々が苦労しながらCOVID-19パンデミックに立ち向おうとしている今、レジリエンスの本当の意味や、レジリエンスを持ち続ける方法を理解することの重要性が、これまで以上に高まってきた」と話す。.同様に、米シアトル小児病院の小児がん専門医で米ワシントン大学医学部にも所属するAbby Rosenberg氏も、「レジリエンスが求められるのは、人生において困難に直面した時だ」と指摘する。そして「レジリエンスは、難局を乗り越え、自分の心身の状態を良好に保つために必要な力を発揮するプロセスだと言える。レジリエンスが備わってくれば、『確かに今は厳しい状況だ。しかし、自分はこれを乗り越えられる』と考えられるようになる」と説明する。.レジリエンスには心理的なメリットだけでなく、高血圧やうつ病、心疾患などのリスクを軽減する可能性のあることが近年、複数の研究で示唆されている。例えば昨年、「Journal of the American Heart Association」で、心血管疾患のリスク因子が同等であっても、レジリエンスに優れている人は心血管疾患の罹患率が低いことが報告された。2018年に「Psychological Science」に掲載された論文では、ストレスに対してネガティブな反応をする人は、10年後の慢性疾患罹患リスクが高いことが示された。.では、レジリエンスの力を高めるにはどうしたら良いのだろうか? Downing氏は、「十分な睡眠と栄養が大切であり、また、他者との間に物理的な距離を維持しなくてはならない状況でも、社会的なつながりは保ち続けることが重要だ」と説明する。また現在、仕事を自宅でしている人が少なくないが、過労やバーンアウト(燃え尽き状態)にならないために、生活のスケジュールを決めて、昼食の時間や休憩時間をきちんと確保すべきだと呼び掛けている。.一方、Rosenberg氏は、過去に自分が困難な局面をどのように乗り越えてきたか、その経験を思い出すことで、今の自分に何が必要なのかに気付くことができ、助けを求めることも可能になると話す。.Downing氏によると、ヒトの脳はポジティブなことよりもネガティブなことの方が気になり、それが記憶に残りやすいのだという。これに対して、例えば、1日の終わりにその日に起こった良いことを記録するといった方法を、対策として推奨。「取り越し苦労しているより、現在の瞬間に意識を集中する方法を見つけるべきだ。パンデミックによる不確実性は、今よりも大きくなる可能性がある。しかし、われわれがそれを乗り越えられないはずがない」と述べている。(American Heart Association News 2020年9月9日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/misc-stroke-related-heart-news-360/aha-news-in-these-tough-times-focus-on-resilience-761096.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.