ドローンが心停止状態の人を救う日は近いかもしれない。心停止した人のそばに居合わせた人(バイスタンダー)が体外式除細動器(AED)を探すよりも、ドローンで輸送した方が早いという研究結果が報告された。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のWayne Rosamond氏らの研究によるもので、詳細は「New England Journal of Medicine」9月17日号に掲載された。米国では年間約35万件の院外心停止が発生し、その救命率は10%ほどにとどまる。バイスタンダーによる心肺蘇生とAEDによる除細動で救命率は平均2倍に上昇するが、バイスタンダーがAEDを使用する頻度は2%に過ぎない。また、救急隊の到着には平均8分を要している。Rosamond氏によると、心停止発生後は分単位で急激に救命率が低下していくため、できるだけ5分以内に除細動を行う必要があるという。.同氏らの研究は、ノースカロライナ大学で行われた。心停止患者(マネキンを使用)が大学構内のどこかで発生し、それに対してバイスタンダーが付近のAEDを探して現場に持ち運ぶケース、もしくは電話で救急要請し、それを受けてGPS技術による自動操縦のドローンがAEDを運ぶという二通りのケースをランダムにシミュレーション。心停止発生からAEDが現場に到着するまでの時間を比較した。大学構内を5つのゾーンに分け、建物や送電線、樹木などの障害物や人混みがある状況などの異なる条件の下、それぞれのゾーンで7回、計35回にわたって行った。.シミュレーションの結果、ドローンは全ての条件で8分以内にAEDを現場に送り届け、71%は5分以内に届けることができた。一方、バイスタンダーがAEDを探す場合、8分以上かかったケースが26%あり、5分以内に届けられたのは51%だった。なお、ドローン設置地点から現場までの距離は238~393mだった。.このシミュレーションでは、ほとんどのケースでバイスタンダーがAEDを探し出す前にドローンが現場に到着した。さらにドローンはマネキンから3m以内に到着し、ドローンからAEDを取り出しマネキンの位置まで22秒で移動できたのに対し、バイスタンダーはAED発見からマネキンの位置に戻るのに1分を要した。.Rosamond氏は今回の研究の背景を、「米国内でのAEDの設置数は増えたが、それらが使われる頻度はそれほど増えていない。ドローン技術は多くの領域でさまざまな活用法が広がっている。院外心停止という医療上の課題に対しても、この技術を導入できるのではないかと考えた」と述べている。.研究の結果について、米国救急医学会(ACEP)のRyan Stanton氏は、「ドローンによるAEDの輸送は、全米にわたって導入するよりも、孤立した地域、あるいはラッシュアワーに混雑するような場所に導入する方が、メリットがより大きい可能性がある」とし、また「AEDの使用頻度を高めるには、通行者が多く、見つけやすい場所に設置することが重要」との見解を示している。.なお、Rosamond氏によると、医療分野におけるドローン技術導入例として米国では、医療機関で採取した検体を検査施設へ運搬するケースなどで進められていて、米国以外ではワクチンや血液製剤を遠隔地に届けるために活用する試みもなされているという。本研究の今後の展開については、農村部でのシミュレーションなどさまざまなシナリオでの検証を経たうえで、将来的に救急医療サービスへの導入が実現することに期待を表している。(HealthDay News 2020年9月16日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/emergencies-and-first-aid-news-227/could-drones-delivering-defibrillators-save-lives-761298.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
ドローンが心停止状態の人を救う日は近いかもしれない。心停止した人のそばに居合わせた人(バイスタンダー)が体外式除細動器(AED)を探すよりも、ドローンで輸送した方が早いという研究結果が報告された。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のWayne Rosamond氏らの研究によるもので、詳細は「New England Journal of Medicine」9月17日号に掲載された。米国では年間約35万件の院外心停止が発生し、その救命率は10%ほどにとどまる。バイスタンダーによる心肺蘇生とAEDによる除細動で救命率は平均2倍に上昇するが、バイスタンダーがAEDを使用する頻度は2%に過ぎない。また、救急隊の到着には平均8分を要している。Rosamond氏によると、心停止発生後は分単位で急激に救命率が低下していくため、できるだけ5分以内に除細動を行う必要があるという。.同氏らの研究は、ノースカロライナ大学で行われた。心停止患者(マネキンを使用)が大学構内のどこかで発生し、それに対してバイスタンダーが付近のAEDを探して現場に持ち運ぶケース、もしくは電話で救急要請し、それを受けてGPS技術による自動操縦のドローンがAEDを運ぶという二通りのケースをランダムにシミュレーション。心停止発生からAEDが現場に到着するまでの時間を比較した。大学構内を5つのゾーンに分け、建物や送電線、樹木などの障害物や人混みがある状況などの異なる条件の下、それぞれのゾーンで7回、計35回にわたって行った。.シミュレーションの結果、ドローンは全ての条件で8分以内にAEDを現場に送り届け、71%は5分以内に届けることができた。一方、バイスタンダーがAEDを探す場合、8分以上かかったケースが26%あり、5分以内に届けられたのは51%だった。なお、ドローン設置地点から現場までの距離は238~393mだった。.このシミュレーションでは、ほとんどのケースでバイスタンダーがAEDを探し出す前にドローンが現場に到着した。さらにドローンはマネキンから3m以内に到着し、ドローンからAEDを取り出しマネキンの位置まで22秒で移動できたのに対し、バイスタンダーはAED発見からマネキンの位置に戻るのに1分を要した。.Rosamond氏は今回の研究の背景を、「米国内でのAEDの設置数は増えたが、それらが使われる頻度はそれほど増えていない。ドローン技術は多くの領域でさまざまな活用法が広がっている。院外心停止という医療上の課題に対しても、この技術を導入できるのではないかと考えた」と述べている。.研究の結果について、米国救急医学会(ACEP)のRyan Stanton氏は、「ドローンによるAEDの輸送は、全米にわたって導入するよりも、孤立した地域、あるいはラッシュアワーに混雑するような場所に導入する方が、メリットがより大きい可能性がある」とし、また「AEDの使用頻度を高めるには、通行者が多く、見つけやすい場所に設置することが重要」との見解を示している。.なお、Rosamond氏によると、医療分野におけるドローン技術導入例として米国では、医療機関で採取した検体を検査施設へ運搬するケースなどで進められていて、米国以外ではワクチンや血液製剤を遠隔地に届けるために活用する試みもなされているという。本研究の今後の展開については、農村部でのシミュレーションなどさまざまなシナリオでの検証を経たうえで、将来的に救急医療サービスへの導入が実現することに期待を表している。(HealthDay News 2020年9月16日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/emergencies-and-first-aid-news-227/could-drones-delivering-defibrillators-save-lives-761298.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.